Vivid Vox Bowling!

後編









涼二VS拓哉


拓哉「ども、俺は拓哉。……翔の知り合い?」
涼二「よろしく。涼二っていいます。いや、翔って奴の知り合いは俺のツレみたいだ。」
がしっっととりあえず握手を交わす。
会話を聞く限り普通の奴みたいだとお互いに思う。
拓哉「なるほどなっ」
同じ14ポンドのボールを置きながら会話を進めることにする。
涼二「独特な制服だよなーなんていう学校?」
拓哉「あぁ、俺も初め見た時思った。栄百合学園っていうんだけどさ」

こいつは普通みたいだ。
安堵の表情を見せている所に

拓哉「やっぱりか

と言って彼は涼二の両肩を掴む。

拓哉「いーかっ俺をあんな馬鹿野獣(翔)とかと一緒に見ないでくれ!むしろ頼むからっ」
涼二「お、おう。わかった」

何でそんなに凄むんだってぐらい必死で、ちょっとかわいそうだと涼二は思った。

涼二「よっぽど色々あったんだな……」

それだけは容易に想像が付いた。



先攻 水ノ上涼二



涼二「うりゃっ」

ゴーーーー………と音を立ててボールは転がっていく。
がこんッ!!

涼二「あ、ストライク」

そんな感想だった。
画面にはSTRIKE!!と表示されて、青い髪の人がガクガク腰を振って踊っている。
その画面と同じ動きをカウンターの店長が踊っていた。
腰が利いている。

詩姫「おめでとーーっ」

チパチパを拍手をいただく涼二。

拓哉「やべぇ……俺この後投げたくねぇよ」
有栖「ちょっとっ拓哉しっかりしてよねっ」
拓哉「ふ、ふふふ。いってくるぜっ」

ちょっと不適に笑った拓哉はボールを構えて深呼吸をする。
流れるようなスタンスでボールを放った。
ボールは端っこのピンの方に一直線に向かう。

拓哉「とったっ!!」

彼がそう言った瞬間ボールは中心へと方向転換したっ。
カーブボール……これはボーリングに通いつめたものだけが会得できるテクニックのひとつだ。
がこんッ!!
再びディスプレイにはSTRIKE!!の文字が表示される。
―――拓哉は慣れていた。

涼二「うお、やるなっ」
有栖「やったっ! できるんじゃないっ」
拓哉「俺はいざって時はやれば出来る子なのさっ」

―――ガゴンッ!!!
隣のレーンからやばい音が響き渡る。

柊「っはーーーー!! もらったぁ!!」

ガッツポーズをとっているのは柊だ。
あー……こいつのボーリングはボーリングじゃない。
玉が半分ぐらい浮いてるからな。
スピード表示35km/hを見ながらその異常さを再確認した。

翔「ちぇぇぇすとぉぉぉ!!」

オーバースローかよ……!!
―――ゴゴンッ!!!
再び異常な音が響く。
……あのレーン今日壊れるな。



緊張した面持ちで詩姫が立つ。
それも当然だ殆どの奴がストライクスタートを切っている。
7ポンドのボールを持ってフラフラと立つ。
ちなみにアレ以上はもてないそうだ。

涼二「柊〜」
柊「ん?なに〜?」

柊に向かって手招きをする涼二。

柊「なんだよ」
涼二「そっちの拓哉の前に立ってて」
柊「?あ、君がマダムキラーでうわさのナルタクかっ」

拓哉「そんな噂ねぇよ!!」

いろいろあらぬ誤解を振り撒いてるようだ。

柊「ははははっなに、隠すことも無いぞナルタクっ」
拓哉「いや、せめて隠そうよ!! ついでにマダムキラーなんかじゃねぇ!!」
有栖「ついでなんだ……」
柊「は―――どぉぅわ!!!!!?」

背中に直撃するボーリングの玉。
詩姫の手からすっぽ抜けたものだ。

詩姫「わわっご、ゴメン柊君!!」
有栖「うっわー……」
拓哉「……狙った? 涼二」
涼二「モチ」

2人は目を合わせて握った拳をガッとぶつける。

拓哉&涼二『ストライク』

慌てる詩姫に同時にそう言ってやった。




有栖VS詩姫


詩姫先攻

涼二「変に拓哉の真似とかしてボール曲げようとか思うなよ」
詩姫「う。……わかったっ! ……えっっわわわ〜〜〜!?」

ボールと一緒にレーンの中まで飛び出る詩姫。

涼二「まてまてまて!

慌てて涼二は詩姫を連れ戻す。

詩姫「ボールが離れないっ」
涼二「お前が離してないんだよ……」
拓哉&有栖「コント?」
涼二「こいつは素なんだっ」

ようやく投げてスコアは4。
まぁ、倒しただけましな方だろう。

拓哉「俺がやったんだし、有栖も頑張れよっ」」
有栖「だ、黙って見てないさいよね」

ベチッ!
ボーリング場の段差に躓いてこける。
結構派手に。

拓哉「………」
有栖「な、なんかいいなさいよっ!!!
拓哉「どっちだよ……」
涼二&詩姫「漫才?」
有栖「ちっがーーう〜!!」
拓哉「有栖って結構てんね……ぶっ!?」

いい感じに有栖のボールが顔にめり込む。

有栖「黙ってて!」
涼二「拓哉!? 新しい顔か!?」
詩姫「ピンクのボールが!?」

非常に愛らしいピンクだ。
怒りを込めたボールは9本のピンを倒した。





彩七VS朝陽

彩七先攻

彩七「朝陽とやら。ボールはこうやって持つのか?」
朝陽「そうそう。で、こうやって体を前に持っていって」
彩七「ほう。こう……」
朝陽「で、ボールを後ろに残しておくと勝手に前にくるでしょ? その勢いで―――」
彩七「こうか? あ」

ゴーーーー
ぱこっ
3本倒れた。

拓哉「ていうか、初めてなのな。」

ていうかボールが6ポンドって。
あれに指が入ってる時点で―――

拓哉「ふべらっ!!?
彩七「なめるな小鬼」
拓哉「―――以後……きを、つけっます………」

16ポンドが、水平に飛んできた。
ボーリングの玉と一緒に床に突っ伏す拓哉。
本日二回目の顔交換だ。

朝陽「だ、大丈夫?」

一緒に居た朝陽が拓哉に駆け寄る。

拓哉「お、おー………ビジュアル的にはモザイクとかかかってそうだが」
涼二「鼻血でてるぞ拓哉……」
拓哉「それはしゃがんだ朝陽さんの白いパンッ―――」
朝陽「あーーーーっ」

ゴッ
顔面に真っ黒い16ポンドの玉が激突する。
再び拓哉は床に突っ伏した。
真剣に顔の交換の検討をしないといけないみたいだ。

有栖「もぅばかっ」
涼二「それを軽々振り回す朝陽がすげぇ……」

頬を膨らませ朝陽は自分のレーンに戻ると16ポンドの玉のままで投げた。
玉はど真ん中を25km/hで打ち抜いた。
ゴガンッ!
STRIKE!! の文字とともに青い髪の人がウネウネと踊っていた。
腰の動きに回転が加わっていた。





咲那VS京


咲那「はいっ」

ガッコン!!!
STRIKE!! 青い髪の店長が画面でガクガクと踊る。
京「よっと」
パカン!!
STRIKE!!
「ちょ、疲れた、マジ、きゅう―――」
『STRIKE!!しばらくおまちください』
カウンターの向こうで、ビデオのようなものの前に、
グッと指を突き出した自分の等身大のポスターを映し出す。
………
………
………

京「はい次の人〜」

誰も突っ込まない辺り、その辺はもう掟なんだろう。

涼二「もうちょっとボーリングを楽しもうっていう気にはならないか?」
京「え? 十分楽しいよねぇ? さっちゃん?」
咲那「だよねぇみーちゃん?」
涼二「もうそんなに仲が良いのかよ……」

2人は同じ笑顔で笑っている。
やべぇ、ミスパーフェクトが2人もいる。




彩七「うりゃっ」←結構真剣。

ぱこんっ
さっきより1本多く倒れたような気がした。




夕陽VS翼

翼先攻

翼「よっ」

ボールは音も無くピンへと向かう。
パッカンッ!
STRIKE!!!

翔「ひゅーっいいぞ翼ぁ!!」
柊「やるなぁ影」
涼二「それは失礼だろ」
朝陽「ほら、夕陽の番」
夕陽「うん。いってくるっ」

ボールを持って構える。

夕陽「―――正面ピンサイン4.4693の方向に8km/h以上の速度でストライクの確立97.34%……」
翔&柊「何語!?」
翼「怖いなぁ。計算しつくしてる……」
夕陽「多分この方向に投げると、60%ぐらいの確立でストライクね!」
翼「数学が算数ぐらいまで落ちたよね今」
翔「ゆとり教育ってのが今あるんだからそれでじゅーぶんじゃねーかっ? ははっ」
夕陽「えいっ」

ゴロ〜〜〜………

柊「……まだ?」
翔「まだまだ」
夕陽「いけっ」
柊「カムバック!」
涼二「行けよ! そこは行けよ!」

パコンッッ

カタン、カタンッガタタ!

STRIKE!!!

柊「なんでやねんっ!!!」

思いっきり突っ込みを入れる柊。
あのスピードでストライクが取れるとは誰も思って居なかった。
―――……夕陽理論侮り難し。




柊VS翔

柊「やっぱこのボール軽いって」

16ポンドをブンブン振り回す柊。

柊「あ」

すっぽ抜けた。
ボールは翔のボディーを直撃する。

翔「どぉうふぅ!!……なにすんだコラァ!!」
柊「わりー事故だ」
翔「こっの!」

16ポンドを投げ返す。
ボーリング玉合戦が始まった。※よいこは真似しないでね!

涼二「危ない詩姫!」
拓哉「危ない有栖!」
詩姫「わわっ!?」
有栖「な―――っだ、抱きつかないでっ!」
拓哉「事故事故」

柊「ゴブゥッッ!!?」
翔「ガハァッッ!!?」


彩七「危ないわ小童共!」

その勝利は、彼女のものになったが。







涼二 VS 拓哉

試合展開もまじめになってきた中盤。
詩姫「頑張れ涼二っ」
涼二「まかしとけっ……っ!」

いきなり、涼二がボーリング玉を落とす。
―――右肩を押さえて膝をついた。

拓哉「涼二!? どうした?」
涼二「い、いや。何でも無い」
拓哉「よく言うな。ボーリング玉落とすような非力な奴じゃないだろ……
 ―――そうか、さっきの流れ弾―――……」
涼二「ははは……ま、ちょっとした怪我。たいしたことは無い。
 ……拓哉、これから俺がやることを許して欲しい」
拓哉「あ? なんかやんのか?」
涼二「ま、ちょっとな」

ボールを左手に持ち替えて涼二はボールを投げる。
STRIKE!! の表示に青い髪の人がレジを打っている。
「140円のおつり―――え、あ! 申し訳ありません! 240円ですね!」
おつりを間違えて謝っていた―――

拓哉「おいおい! 何の王子様だよっ……左利き?」
涼二「いや違う。両利きだ……手加減はしないで欲しい。
   そういうことされるのキライなんだ。」
拓哉「―――そうか」

柊「波動○!!」

両手で持った玉を押し出すように投げる。
ゴゴンッ!!
……1本倒れた。

翔「なんのっ!! 片手かめはめ○ーーー!!」

―――背中に誰か見えた気がした。金色の……。
ガゴンッ!!
……ガータだ。

翔「ノーーーー!!」
柊「ふははは! やはり渾身の一撃に限る!!」

拓哉「とりあえず殴ってくる」
涼二「俺も。蹴ってくる」
拓哉&涼二『ストラーーーーイクッ!!!』
柊&翔『ごはっ!?』
有栖「バカばっか……」
詩姫「あははは……、でも面白いよね」



有栖「……ねぇ、シキ……ちゃんだっけ?」
詩姫「うん? あ、織部詩姫って言いますっ」
有栖「う、うん。私は森山有栖……で、ちょっと聞きたいんだけど……」
詩姫「うんっ何?」

子気味良く返事をする詩姫。
初めて話しかけられるので緊張は隠せないが。

有栖「……その、涼二くんと、付き合ってるの?」
詩姫「―――っっう、うんん! うん!」
有栖「どっち……?」
詩姫「……つ、付き合ってますっ」
有栖「へぇ……道理で」

クスクスと小さく笑う。

詩姫「え、な、なんかあったかなっ?」
有栖「仲がいいなぁって」
詩姫「そんなっ有栖ちゃんたちほどじゃないって」

ブンブンと長い髪を振る。

有栖「あ、あたしは違うよ?」

付き合ってないし……と口にする。

詩姫「え!? そうなの? あんなに仲が良いのに」
有栖「違うよっあんなのとそんな……」
詩姫「好きなんじゃないの……?」
有栖「しっ知らないっあ、私の番だからいってくるっ」

彼女は逃げるようにレーンまで歩いて―――段差でこけた。

詩姫「だっ大丈夫?」
有栖「大丈夫っ気にしないでっ」

駆け寄った詩姫に笑顔を見せて、自分で立ち上がる。
ボールを持つとすばやく構えてレーンに向かった。
きわめて冷静を装って、ボールを投げた。

有栖「あれ?」

 後ろに。

詩姫「み゛ゃ゛!!」
有栖「わ、ああっご、ごめんなさいっっ」
涼二「詩姫っ!? なんか猫が無理矢理つぶされたような声が聞こえたぞ!?」
有栖「ごめんなさいっ大丈夫?」
涼二「詩姫っ……ってなにニヤニヤしてんだよ」
詩姫「っばれた?」
有栖「え……?」
詩姫「大丈夫だよっこのぐらい」
涼二「はぁ、気をつけろよ。て言うか、避けるぐらいのことはしろよ」
詩姫「できたらやってるよっ」

もっともだった。

有栖「ホント、大丈夫? ゴメンね…私―――」
詩姫「ううんっ大丈夫だよーっほら、拓哉くん見てるよ? 投げないと」
有栖「た、拓哉は関係ないよっ」
詩姫「へぇぇぇ〜えへへへ」
有栖「なななによっ変な笑いかたなんかしてっ」
詩姫「あ、拓哉くんに女の子引っ付いてる」
有栖「っ!!」

拓哉「こんな感じの姿勢で……あと最初は指を無理に曲げないように……こうだっ!」

パカーーン!!
STRIKE!!

彩七「ぬ。やりおるな小鬼め……」
咲那「意外な特技だねぇ〜?」
夕陽「ね、ね! もう一回! もう一回見せてっ」
朝陽「め、迷惑だよっ夕陽」

拓哉「ふっふっふ…あーーっはっはっは、苦しゅうない。苦しゅうないぞ!
 何度でも俺のテクニックをみ゛っ

本日―――何度目だろうボーリングの弾が頭を貫く。

女性陣『!!?』
拓哉「も、もっと……俺に優しく……なろうよ……」
翔「もっとしてくれってさ
涼二「……そういう奴だったのか」

拓哉は答えることが出来ない。

詩姫「あ、有栖ちゃん!?」
有栖「ほんっっっと知らない! あんなやつっ! バカーーーっ!」

スッパアアアンッ!
ボールがピンの中心を射抜く。
STRIKE!!!

有栖「ふんっ」
詩姫「〜〜……あは、はは」
翔「ははは! ついにそれが新しい顔だなナルタクっ」



有栖「ねぇ……」
詩姫「何っ?」
有栖「―――ど、どうやって告白した?」

少しだけ視線を泳がせて赤面するが頭を振って有栖に向き直る。

詩姫「……うん。体育館で、マイク使って、好きだーって叫んでた」

有栖「!?」
詩姫「お、おかしいかな……でも、それが一番あたしらしいかなって。
   あの場所で言おうって、ずっと思ってた」
有栖「詩姫ちゃんらしい……?」
詩姫「うん。あたしねっシンガー目指してるんだっ。
 あたしの居場所は音の中。そのステージの中心」
有栖「そう、なんだ……」
詩姫「―――思いを伝えるのって、言葉なんだよ?
 声でも、文字でもいいから言葉にしないとっ」
有栖「……すごいね……思ってたより勇気あるんだ」
詩姫「あはは……よく言われちゃうなぁ」
有栖「ううん。カッコいいと思うよ」

素直にそう思うと有栖はつけて視線をチョットだけ拓哉に向ける。

拓哉「ん? どーした?」
有栖「……なんでもないっ。ね?」
詩姫「ね〜? あははっ」

涼二「……お、なんか仲良くなってると思わないか拓哉」
拓哉「みたいだな。まぁ気難しい奴だからさ、
 仲良くしてくれる子が増えるのは嬉しいね」

二人はさっきよりギクシャクした感じがなくなり笑いあっている。
―――こういう出会いもたまにはいいよな。と拓哉も笑った。


柊「ファイナルゥゥゥ!! ス・ト・ラーーーーーーーイックゥ!!」

ガガンッッッ!!!! ビービービー!
レーンの向こうで機械が悲鳴を上げる。

翔「店長ー! レーン壊れたー! コイツコワシタネ!」
何故カタコト。
柊「おおおい! オレ一人に擦り付けるなクソリーゼント!!」





局面は―――終局へ。








10レーン目。
スコアは接戦。拓哉と涼二のスコアは219対218。
有栖と詩姫は98対79。

涼二「……それじゃ、ちょっとプレッシャーかけさせてもらう」

ゴーーーッ! ガシャンッ!!

STRIKE!!
最後と言うこともあって青髪の店長も気合を入れて躍る。
涼二「ウザいな」
拓哉「ついに突っ込んだーーー!!」

戻ってきたボールを手に再び構える。
表情は真剣そのもの。
涼二「―――よっと!」

ゴォーーーッ! ガシャァンッ!!

STRIKE!!
店長が画面端でいじけている。


拓哉「―――な、もしかして……!」
涼二「……悪いな、勝負に負けるわけには……! いかないんだよ!」

ゴーーー……ッ! ゴガシャァンッ……!!
一本残って―――グルグルと回る。

カタンッ……!

拓哉「ち……!!」
涼二「もらったっ!!」

STRIKE!!
店長がすごく勝ち誇った顔で画面に顔を寄せた。
拓哉「うぜぇ!!」

スコアが表示される。
涼二は―――278。

詩姫「す、すごいストライクとスペアしかないよ?」
有栖「……拓哉、ピンチじゃない?」
拓哉「わ、分かってらぁっ……俺も男だ。受けて立つぜ涼二!」
翔「どんと来い」
拓哉「おまえじゃねぇよ!」

拓哉「―――く……」

はじめてだボーリングで緊張するのは。
―――ちなみに、事の勝敗にはこのゲーム代がかかっている。
つまり敗者は失うものがある。

有栖「拓哉……?」

俺は目の前のレーンに全神経を注ぐ。
―――そして、一投目……!

シャァーーーーッッ!! ガガガンッッッ!!!

STRIKE!!!






拓哉「おっしっっ!」
有栖「やったっ……!」
詩姫「すご……ボールが溝のギリギリで曲がってるよ」
涼二「本番はここからだっ拓哉!」
拓哉「―――おう」


―――心静かだ。
こんなにも集中できるなんて久しぶりだ。
俺は返ってきたボールを手に取り構える。
この調子なら……!

シュァーーーーッ!! ガガガンッッッ!!!

STRIKE!!!


拓哉「っっっしゃあ!! 2本目!!」
有栖「あ、あんた実は凄いんだ?」
拓哉「実はって言うなよ。俺はいつだって凄いぜ?」
ふふんっと胸を張って答える。
詩姫「涼二やばいよ!?」
涼二「でもどうしようもないし。幸運でも祈るか」
拓哉「はははっ戴くぜっっ!」

俺は更なる集中力を注いでレーンを見る。
何か異常だ。俺の中で種っぽいのが割れてるかもしれない。
―――ボールを構える。

最後の……! 

いっとぉぉ―――!!?


わき腹に走る激痛。ボールが回転をかけられることなく手を離れる。


ソレがボーリング玉と気付くのにコンマ数秒。
―――倒れる直前に彩七が歪に笑っているのが見えた―――。

な、―――んで、……







彩七「あちきに出来ないことが小鬼に出来てたまるか!」

柊「ひがんでたーーー!」
翔「あっはっはっは! 最後の最後に運がなかったなナルタクぅ!」


涼二「……拓哉……泣いてるのか……?」
拓哉「バカヤロォ……オイル漏れだ……」
有栖「どんな強がりよ……まったく……バカ。みっともないからとっとと起きなさいよ」






―――6本。
拓哉撃沈。





















詩姫「逆転……? できるの?」
涼二「まぁな。便宜上は3連ストライクか……スペアとストライクか」
詩姫「む、難しい事言わないでよ〜っあたし全然だよ? みてよあのスコア」
拓哉「まぁ……でも熱いよな3連ストライクとか出したら」
有栖「ちょっと。拓哉どっちの味方!?」
拓哉「だーいじょうぶだって。だってありえないジャン?」


涼二「まぁそんな気負わなくていいよ。詩姫の悪いとこちょっと直してみようか」
詩姫「う、うん……」



詩姫は何度か涼二にフォームを習う。
有栖「―――詩姫ちゃんって躍ると映えるね」
拓哉「……まぁ。そうだな。絵になる」
 ベシャ!
有栖「派手にこけたね……大丈夫?」
詩姫「う、うん……なんとか……」
涼二「……まぁ……力は入れなくていいよ。ボールの重さだけで十分スピード出るし。さっきの型どおりやってみて」
詩姫「わかったっ! やってみる!」

頼りない感じでボールを構える。

詩姫「ふにゃぁ!」
拓哉「頼りない掛け声だな……だがいい! いだだ!」
有栖「……バカっ!」


ゴゴン! ゴロゴロゴロ〜〜〜…… パカンッッ!


STRIKE!!
青髪の店長が画面端でハッとストライクが入ったことに気付き走り寄る姿。
しかし、間に合わなかった。


有栖「嘘!?」
拓哉「マジか!?」
涼二「はははっ!! よくやったっ!」
詩姫「ぇ? す、すとらいく……」







ゴゴン! ゴロゴロゴロ〜〜〜…… スパコンッッ!

STRIKE!!!
何の腹いせか画面いっぱいにセクシーポーズが写される。

ゴゴン! ゴロゴロゴロ〜〜〜…… パッカンッッ!
STRIKE!!!
ネタが尽きたのか遣る瀬無い表情で画面を眺めていた。
有栖「ウザいよ!」
詩姫「やめてよ! せっかくおめでたいのに!」


詩姫のスコアが表示され―――138。


詩姫「やった! 涼二! 凄いよ! 人生初! 百超えたよ!!」
涼二「おめでとうっ勝ったかもな?」

よしよしと詩姫を撫でる。
そんな二人をよそに有栖がボールを持ってレーンに立った。

拓哉「俺も指南しようか?」
有栖「……いらない! ―――負けないからっ」



ガタンッッ!!


ボールは溝に落ちて転がり落ちる。
有栖「―――……」
拓哉「……はぁ。力みすぎ」
有栖「うっうるさいわねっ拓哉には関係ないでしょ!」
拓哉「う、でもなぁ……」
詩姫「……有栖ちゃん、だめだよっ」
有栖「……詩姫ちゃん……」

咲那「そーだよ有栖ちゃん」
彩七「小鬼なぞに教わるのが癪なのはよく分かるが」
拓哉「わるかったな!」
有栖「……うん、わかった……拓哉、教えて?」

拓哉が悶絶する。
「萌ェー」といいながら転がりまわる姿は如何せんキモイ。

拓哉「おおおっしゃ! 有栖! 勝とうぜっ!!」

立ち上がったときには鼻血が溢れたくっていた。

涼二「とりあえず拭いとけよ?」





有栖「―――えいっ!」

ガタンッ! ゴーーーーーーーーーー!  ガコンッッ!!!

SPARE!!




拓哉「よっし! 良くやった!」
有栖「当たり前でしょっ!」

パンッ! と二人でハイタッチを交わす。
逆転の兆しが見えてきた。


詩姫「ま、負けちゃうかも〜」
京「ふふっ応援しちゃってたくせに」

有栖「―――負けないからっ」

ガタンッ! ゴーーーーーーーーーー!

そのボールの行方に視線が集まる。
―――そして、真ん中に吸い込まれるようにピンクのボールは向かい―――!


ガゴンッッ!!!

拓哉「―――っし!!」

拓哉が高々と拳を上げて―――!

STRIKE!!

と、画面に表示され、店長が眼鏡を外しニヒルに微笑んだ。





咲那「おっめでとーーーっ!」
彩七「……よくやった」
詩姫「あー……負けちゃった」
有栖「ううん―――ありがとう。詩姫ちゃんっ」
詩姫「わっ!」

ギュッと詩姫に抱きつく有栖。

拓哉「俺には?」
有栖「アンタはいいの〜」
拓哉「ちぇ」
有栖&詩姫『あははははははっ』










京「はいっ!!!」

ガガンッッ!!!
STRIKE!!!
店長が画面から俺とプロボーラー目指さないか! と叫ぶ。

咲那「はいなっ!!」

スパァァァン!!
STRIKE!!!
筋肉ポーズの店長の背中に俺とプロボーラー目指さないか! と書いてある。

京&咲那『絶対嫌!』


みやこ……300
さくな……300












有栖「あれ…?」
詩姫「……え?」
拓哉「アレは見ちゃダメだ」
涼二「気のせいだ。気のせい。飲み物買いに行こうぜ」










朝陽「あ、出番」
夕陽「そういうの言っちゃダメだよあーちゃん!」
翼「後ろの機材とか見えちゃうよ」
彩七「ぬぅ……」

彩七が構えて投げる。
どうもコツがつかめないらしくボールは溝を滑った。
―――最後のレーンはGで埋まっていた。

朝陽「あ……だめだった?」
彩七「……残念だがここまでのようじゃの」

ぷぅっと頬を膨らませる。
潔いのだが諦めは付かないらしい。
朝陽「―――じゃぁ、私の番も投げていいよ?」
彩七「ほんとうかっ……しかし……」
朝陽「うん。ちゃんと教えてあげる。ボールはね―――」


翼「へぇ……彩七が珍しく大人しいや」
夕陽「だってあーちゃんだよ? あーちゃん凄い教えるの上手だしっ!」



彩七「―――っ!」


ごーーーーーーーっ! パコンッ!!!

7本がレーンから消える。
今までの成果を見るとその本数はいい方だ。

朝陽「うんっそうの調子。今のでコントロールの仕方は大体分かったかな?」
彩七「あぁ。なるほどな……よっ!」

ゴゴーーーーーーーーーーー! スパンッッ!!


SPARE!!


朝陽「やった!」
彩七「うむ。これでもう一度できるのだな?」
朝陽「そうそうっ最後は―――」
彩七「―――ふふ、期待に添えて見せよう」


ゴゴンッッ ゴーーーーーーー!!!


ガゴォォンッ!!!



STRIKE!!!


朝陽「―――あははっやった! 凄いよ彩七ちゃん!」
彩七「だ、抱きつくな朝陽……何、全ては主のお陰じゃふぅ―――コレで思い残すことも無いっ」
二人は屈託無い笑顔で笑う―――。






拓哉「―――あれ、何でだろ……涙が出てきた……」
涼二「……気にしちゃだめだ。理不尽って言うのは、忘れられていくもんだ」







翼「さて、僕らも終わらせようか」
夕陽「ま、まけないよっ!」



ヒュッッ……!!


パゴォンッ!!!
STRIKE!!!
店長はストライクに気付いていない。レジでコーヒーを飲んでいる。


夕陽「な、投げて音がしないってどうやってやるの……?」
翼「それは―――秘密?」

暗殺者の極意は―――語られ無い。

翼は無音の極意で3つのストライクをもぎ取るとそのスコアを180とした。
夕陽に回ってきた時点で121。
同じくトリプルで勝利をもぎ取ることが出来る。


ゴゴンッ ゴロゴロ〜〜〜〜!

パコンッ

STRIKE!!!

夕陽「よし……!」
翼「やるね……ダブルってことはあと一回かぁ」
夕陽「うんっ! 負けないからっ―――!」

そして、最後の一投を―――

夕陽「―――っ! あっ!」

力みすぎたのか、微妙な角度でガータへの道を突き進むボール。

翼「―――……」
夕陽「あっあ―――!」

―――翼の手が動いた。

キィンッ!!


夕陽「え!?」

見間違えたかと思うほどボールが急に方向転換をする。
オレンジのボールは真っ直ぐピンの真ん中へと進み―――!


ガコンッッ!!!



STRIKE!!!
店長もビックリだ。



夕陽「や―――ったぁ!!!」
翼「おめでとう。完敗だよー」
彩七「お主……何かやったな?」
翼「さぁ? 演出って大事だと思うよ?」

不敵に目を更に細めて翼は笑った。














翔「ふはははははは!! ついにこの日がきたみてぇだな!!」
柊「ははははははは!! 今こそ積年の恨み……! 晴らしてくれるわ!!」






ヴォンッッッ!!
腕が風斬り音を出す。

パキャァァァンッッ!!!!

ピンがヤバイ音を立てる。

翔「ふ……ストライクだ」
柊「いや、ボールだ」
翔「バカ言え。今のは完全にインをついてた」
柊「いや、外れてたって」

拓哉「問題はそこじゃねぇんだよ!! 気付けよ!!」
涼二「やめとけってもう、あの二人に突っ込んじゃだめだ。身がもたねぇ」
拓哉「でも隊長ォ! 俺はまだ行けます!」
涼二「バカヤロォ!」

有栖「……もう。ホントバカばっか」
詩姫「あははっ」




















店長「はーいそれじゃ、結果発表な」
翔「アンタがすんのか!」
拓哉「適切な奴が不甲斐ない事にこいつしか居なかったんだよ。悟れよ」
店長「おい、失礼な! 俺とプロボーラー目指さないか!?」
拓哉「死ねよ」
店長「酷い!」
柊「いいから結果言えよ」

店長「あ、はい!
 えっと……まず個人戦っす。
 赤コーナー! 筆を握れば天才画家! 見た目は大人! 頭脳は子供! アレは並!
 なあああるぅぅぅぅぅわぁぁぁあ!!
 たぁぁぁぁくやぁぁぁぁぁぁああ!!!


拓哉「やめろよ!! 不名誉だろ!!!
店長「じゃぁ青コーナー水ノ上涼二の勝利」
涼二「落差が酷いな……まぁいいや。勝ったし」

店長「続いて―――赤コーナー!!
 人形のようなその姿! 誰もを魅了する小悪魔! 小草町の女神!!
 もぉぉぉりやまぁぁぁぁぁぁぁんっ!!
 あああああありぃぃぃぃいぃぃすぅぅぅぅっぅーーーんっ


有栖「キモイ
店長「対して青コーナー!
拓哉「めげないなこいつ」

店長「長い髪は男を掴んで離さない! 天賦の才を持つ女! 現代の歌姫!!
 おぉぉりべぇぇぇぇぇぇぇ!!!
 しぃぃぃぃぃぃいきぃぃぃぃぃぃぃいいいい!!!


詩姫「いえーーーい!
店長「キミの負けね
詩姫「ぷあっ!?」Σ(;TДT)
涼二「……ドンマイ」


店長「疲れたからそろそろ素でいい?」

全員『じゃぁ初めからやんなよ!!!!!!!』

店長「はい、これ一覧表ね」
全員『うぜぇ!!!』







結果発表


○涼二 − ×拓哉
×詩姫 − ○有栖
×柊  − ○翔
△京  − △咲那(MAX)
○朝陽 − ×彩七(ぴったり賞)
○夕陽 − ×翼(粋)


















柊「……納得いかん!」
翔「なんだぁ? 負け惜しみか?」
柊「ふふ……俺達の決着は、コレでつけるもんだろ……?」

ぐっと拳を握る。

翔「―――うはは! だよなぁ! 道場流と喧嘩流……! 白黒つけようぜ!!」

2人は意気揚々とボーリング場を出た。


京「い、行っちゃった……大丈夫かなぁ……」
咲那「この辺りね、チョット外れたところに行くと人が通らないし、助けも来ないの」
京「そ、それってあんまり良くないと思うんだけど……」
咲那「まぁ、大丈夫でしょ!」
翼「希望的観測だけどね」
朝陽「もしかしてケンカ? ダメだよ止めないと」
彩七「朝陽、もしかしてお主天然か?」
夕陽「あーちゃんはお姉ちゃんだもんねぇ……」
朝陽「え? でも、ケンカ……」
彩七「あー分かった分かった。あちきも行こう。付いて来い。とめるぞ」


続いて6人もそこから出て行く。













涼二「なぁ拓哉」
拓哉「ん? なんだ?」
涼二「拓哉って、絵上手いのか」
拓哉「いや全然」
有栖「入賞とかするくせに」
詩姫「そうなんだっ!?」
涼二「簡単でいいから、コツ教えてくれないか? 実は―――」

学校での事情を話すと拓哉と有栖はお互いをみやって笑った。

拓哉「ははは! あぁ! そういうのね!」
有栖「うんっあるある!」
涼二「あるのか? うちの学校だけだと思ってた。
 まぁなんでもアドバイスかなんかくれると有り難い」


拓哉「あぁ……そうだな。絵で大事なのはモチベーションだ。
 短期で仕上げるならなおさらだ。だから―――そうだ。
 自分の好きなものを描け。ソレが一番」
有栖「うっわーえらそう」
拓哉「いーのっ! たまには見得張らせろよ」
詩姫「有栖ちゃんもそう思う?」
有栖「……うん。拓哉の言うとおり。絵って集中力だから。
 景色とかもいいけど、頭に入ってるものを集中して描くのが一番……かな?」
詩姫「好きなもの……?」
有栖「うーん……あ、そだ。例えばねっ」

二人でヒソヒソと話をする。

拓哉「おいおい。仲いいぞあいつ等」
涼二「拓哉はなんか良い案無いのか?」
拓哉「ん―――……あ、そうだないいことがあるぞっ」




詩姫「―――っで、でもっアタシそんなに絵上手く無いしっ!」
有栖「いいよ。絵って、上手く無くても上手く見えることがあるんだよ?
 ソレが”芸術”って呼ばれてきたものなんだからっ」


拓哉「―――……な?」
涼二「……それ、本気でいってんのか?」
拓哉「俺なら間違いなくそうする」
涼二「そうか……」














































―――そして、作品を書き上げた俺達がソレを忘れかけた頃―――。





校長「それでは―――先月行われた絵の考査の結果を発表したいと思います。
 審査委員には画家である森山香織様をお招きしております」
香織「どうも〜こんにちは〜」
校長「早速、発表をお願いしてもよろしいでしょうか」
香織「はいっ私と先生方の審査の結果〜一番評価の高かった絵を紹介しますね」

体育館の空気がどよめく。
森山という画家の女性はマイペースに壇上へとのぼり、中心に立った。

香織「改めて初めまして〜っ
 今日は審査委員として呼ばれたのですが……面白い作品が沢山見れて良い刺激にもなりましたっ。
 高校生らしい作品も沢山あって、良かったのですが―――
 思い入れのある作品を見つけて、思わずこれを押し通しちゃいましたっ」

その人は舞台の端に飾ってある布のかかったボードをみんなの見やすい位置へと持ってくる。

香織「今回……最優秀賞を飾ったのは―――コレ!」



バサァ!!!





詩姫「あーーーーーーっっ」
涼二「うわ……っっ」








香織「ふふっ、この二人です……!

 見て! こんなにも愛し合っています! 愛って素晴らし〜!!





構図はほぼ同じ。向きが違うだけ。


涼二が描いた青い空を背景に歌う詩姫。

詩姫が描いた夜の海を背景に歌う涼二。


白を基調に描かれた爽やかな詩姫。

黒を基調に描かれた力強い涼二。


同じ題名、同じ想いが向き合う2枚の絵。

二つを並べるとお互いが向き合って歌いあう―――。























拓哉「まさか香織さんが審査委員でよばれてるとはね〜……」
有栖「まぁある意味運命よね。どうだった? 涼二君は」
拓哉「ま、ばっちりだ。そっちは?」
有栖「もちろんっ詩姫ちゃん、センスあるよっ!」



楽しかったひと時へ私達からのプレゼント。

―――音の中で生きる二人を―――










Vivid / VoX / Bowling!

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