第23話『希望決断』

*タケヒト

 一日が楽しかった。それは不思議ではない。だってこれは日常である。
 学校から開放されて、食う為に冒険者っていうまぁフリーターみたいなもんだろコレ。そんな自由な仕事をやって。社会なんてものに興味は無く、ただ夢で生きたいと願うなら誰かには理想の形だろう。
 まぁ、現状オレから言わせて貰えば、ガキだったよなぁと思う言葉である。だって食うに困るって無いと思ってるだろ? ここには親もいねーし、泣きつく事も出来ない。挙句にはこっちの世界の金換算がよくわからないし。シェイルに無駄遣いするなと怒られるし。生活というのは、やはり親に守られているものなのだと実感するものである。
 こういうところで強いのはコウキだろう。無駄遣いはしないだろうし自炊もする。聞いた話でも宿に泊まるたびにバイトさせてもらってるとか。どんだけ世渡り上手なんだよ。それが一番最初に持った感想である。

 この世界で。生きる為に。オレが必要なのはその知識を得る事。残念ながらオレは大して頭は良くない。でも運の良い事にオレの知っている最大の知識人が同じ世界に居た。
 オレたちの基準から客観的にこの世界をみてそいつはどう思ってるだろうか。オレたちは此処で何をしなくちゃいけないか。
 そして役目の話を尋ねた。それをどう飲み込めばいいかは依然迷いがある。進む道は自分で決める。だがそのために理解する必要がある。キツキが同じ宿に泊まっているので少しこっちの世界での話を聞きに行くかとその部屋を訪ねる事にした。
 コウキも考えたがあいつは頭はいいが感覚で動くタイプだ。客観的より感情的。それよりは分析結果をオレにわかるように話してくれるキツキのほうが適任だと思った。


 コンコン
 ノックをしてしばらくするとそいつが扉を開けた。
「よう」
「タケか。何か用か?」
 率直な物言いと共にオレを直視する。
 長めの前髪をうっとおしそうに手で払う。
「ちょっと難しい話を砕いてもらいにな」
「そうか……だが、今はこの部屋には入れることができない」
 一瞬で理解したような言葉を発するのはさすが。
 だがどうやら何か困るようなことがあるらしく訝しげに一瞬中を振り返った。
「あ? どうした?
 もしかしてお前女を連れ込むとかやっちゃってるの? そ、そんな進んでるのお前!」
 ちょっと進み出ようとするオレをキツキが抑えてがたがたと扉前でもめる。
「お、落ち着けっうるさいっ! そんなんじゃねーっての。ほら」
 部屋を覗き込むとすでにベッドに人のふくらみ。
 特に動くような様子も無く静かにしているとスゥスゥと寝息が聞こえた。

「事後かよ……!」

 スパーン!

 見事なタイミングでオレを叩くキツキ。
「違うっていってんだろっ! ティアが寝てるんだよっ」
 このテンポは1年以上つるんでいないと発揮できない。
「ああ、なんだミコさんか」
 とはいえ一応あの子俺らとそこまで歳は変わらなかったはず。
 精神年齢が追いつかないとかなんとか言ってたが。
「そうだよ」
 コイツに限ってそれはありえないと思うが、一応いってみるべきだ。
「お前神子さんと」
「あ?」
 マジで切れちゃう5秒前の顔でオレを睨んでくる。
「いや、マジごめん。わりぃ。すまんかった。
 んじゃオレの部屋行くか」
 全力で謝罪して話を別の方にずらした。
「ああ……」
 はぁ、なんて溜息が聞こえて扉が閉まる。
 キレるとこいつ性質が悪い。
 力技云々でねじ伏せれるならオレが有利で間違いが無いが古流に通じるコイツは、
 いい意味で極めた殺人能力を持っている。……いや良くないか。

 現代武道は古流とは違い礼儀から始まり礼儀に終わるフェアプレー精神での技の競い合いである。
 古流武術は礼儀作法も存在はするのだが、それ以前に命を刈り取る技の多さがハンパじゃない。
 つまり礼儀から始まりトドメと礼に終わる武術も存在する。
 まぁどんなものかは少しだけ聞いたことがあるがとっさにやられて回避できるかというと無理も多い。

 キツキと歩いて一つ上の階のオレの部屋にやってきた。
 部屋は簡素なもんだ。オレは椅子に座るのが面倒だったのでベッドに座る。
 キツキは椅子をひきだしてそこに座った。
「で、何が聞きたい?」
 一息の間をおいて、オレにそう問いかけた。
 コイツの性格上余計なことから会話を回り道するようなことはしない。
 幸輝と似ているようで似ていないのはこういうクレバーなところだろう。
「この世界について」
 とりあえず根本。この世界のことの質問を適当に投げてみることにする。

「アバウトだな。
 この世界はプラングル。
 神様ってのが確実に存在しててそいつらが管理してる。
 空気も重力も地球となんら変わりは無い。
 モンスターってのが存在してソレを倒す事を仕事にも出来る。
 まるでゲームだ。
 そんな世界だが俺たちが存在してしまってるのは確かだ」

 アバウトなオレの質問にも律儀に答える。
 まぁそういう観念も聞きたかった。言わせて見たのは正解だったか。
「まぁ……そうだよな。
 オレだって勇者まがいの事やる事になるなんて夢にも思わなかったぞ」
「だろうな。
 シキガミについては…聞いたか?」

 シキガミとは、アイツみたいな役目を負った奴を守ること。
「ああ、一応な。
 でもどうすればいいのか全然わかんね」
「どこまできいた?」
「……最後には戦うらしいな?」
「そうだな……。
 どう考えても俺たちにはありえない話だ。
 あっちじゃぁさ、これから大学受験して、そのまま勉強なりスポーツなりして生活してさ?
 それがいきなり死んでここに来て、あの子を守ってくださいって何だよ」
 こいつもこいつなりに不満があるらしい。
 椅子にもたれかかってギシっと軋ませる。
「オレなんかお前は我のモノだ! とかだぞ?」
 ちなみにアイツの一人称はワタシ、で間違いない。
 ただ我の強さから我という文字にぴったりだとオレは思うわけだ。
「熱いな」
「だろ」
 はっはっは、と二人でとりあえず笑ってみる。
 正直、起こっちまったもんはしかたねぇ。
 もしかしたらコイツもオレと同じで流されているだけなのかもしれない。

「ま、そんな感じだが勇者さんよ。どーする?」
「正直、あいつも悪い奴じゃないんだ。冷たいだけでさ。
 だから手助けはしてやりたい。恩人だしな。
 こっちに着てから他にやる事も無いからな」
 それがオレの本音。
 数日ではあるが一緒に過ごして情も移った。
 というか、オレの場合もっと特別な理由がある。
 その起こった出来事云々は後々の話としておいておくが、どうやらオレはアイツのモノらしい。
 それをキツキに言うのはなんか嫌だったので黙っておく。
「そう……だよな。
 実際俺らは、別に今一緒に旅してる神子が悪い奴ってわけじゃなくて。
 心情的には、味方だ。だろ?」
「まぁ」
 アイツを嫌いじゃないオレがなんとなく信じられない気もする。
 今までも女の子ってもっと静かで弱い奴が好きだった。
 あいつも基本静かだし変なところで弱かったりするのだが……。
 いや、今はそれは関係ない。

「そいつと必然的に行動して最終的にそこに辿り着く。
 で、そこで俺たちがどれだけ戦いが嫌だと言っても」
「歌か」
「そうだ。武器である俺たちは戦わざるを得ない」

 強制的な行動を嫌がって一時的に止まっても何れは動き出す。
 それに下手な時に止まれば自分が死んで終わり。
 それは――意味無い事だろうな。
 無言になって、しばらく時間が過ぎる。
 キツキがため息をつきながらひとつ、言葉を落とす。

「後腐れなんかを考えるなら、先に割り切った方がいい。
 この世界の常識を飲み込んで、俺たちの役目を理解して。
 俺たちは殺し合いの為にここにいる」

 その浮ついた言葉が信じられない。喋っている中で浮いている。自分達が殺し合い?
 映画かなんかでそんな話があったなぁ。ハハ。――そういう、リアルなところが何かかけている。死んだら夢だった、見たいな終わりじゃないのか? ならそれでいいんだが。
 でも身を斬る痛みは本物で、オレが剣を振っていて、寝て起きたらまたこの世界で。どれだけ夢であることを願っても、オレ達はここで目覚める。

「……なんとかならないのか?
 ほら、逃げるとか」
 カミサマがいる世界で逃げるってのも無理な話だろうが。
「別に逃げてもいいみたいだぞ?」
 ――意外。そんな言葉を聞くとは思わなかった。
「そうなのか? ならみんなで逃げようぜ」
 それはとても自分にしては名案だと思った。オレ達が喧嘩なんかせずにどっか遠くに逃げて。冒険者稼業でもみんなでやってりゃ食うに困ることはないだろう。
 平和に楽しい時間が過ごせて。
 こんなバカな話よりはずっと魅力的だと思った。

 キツキは一瞬だけ目をランプにやって、ゆっくりと閉じる。
 そして息を吸ったと思ったら溜息のように言葉を吐き出す。
「……俺はできない」
「なんでだっ!?」
 キツキなら。
 逃げる方法だって逃げ切る事だって考えれるはず。
「それはいえない。だが逃げられない。
 だから先に言うが、

 俺はこのまま試練を続けて、戦う」

 決意のある瞳は、揺ぎ無いものだった。
 ――敵意はない。今は、の話かもしれない。
「なんでだよ! 納得できねーよそんなの!
 逃げれば良いじゃねぇか!
 転生とか、今関係ねーじゃん!」

 神子の責任を取れって言うなら。
 オレたちはそうするべきだ。
 オレはソレでいい。
 このアホみたいな殺し合いするぐらいなら、一生を彼女に捧げてでも平和に生きるべきだ。

「……お前は、ラグナロクを理解しているか」
「知るわけねーだろ」
「いや、別にラグナロクなんかは理解しなくていい。その後だ」
「だから知らねー」
「……」
「なんだよ。教えてくれよ」
「いや……教えるが……後悔しないか。
 別に知らなくていいんだ。
 タケがあの人を本当に大事に思ってて、逃げるというなら止めない。
 聞いたらもう、タケは絶対ひかなくなる」
「教えてくれ。必要なんだよ。
 進むにしても、引くにしても足りないんだ色々」

 オレは。あの神子に対してまだ戸惑いがある。助けてやろうとは思う。でも、圧倒的に理由が足りない。
 納得が出来ないだろう?
 助けるために召喚されたらしい。でも自由意志だという。それじゃ何もオレがここの世界に存在していようが居まいが関係ないじゃないか。
 最初に問いかけたオレじゃなくてもスポーツの選手でも何でも。そう、オレじゃなくて良い。それが覆らない限り納得なんて出来ないだろ。

「じゃあ――教える」

 一度息をすって、オレを見るキツキ。
 ピリッと空気が変わったことでオレにも真剣だと伝わってきた。

「ラグナロク。その時期は決まってる。
 あと2週期。2年ぐらいだ。
 実際俺たちには関係無いカミサマの喧嘩みたいなもんだ」

 関係ないのなら。
 ソレこそ逃げれば良いじゃねーか。
 だがこいつの話はまだ続く。

「だけど。
 神子ってのはそのラグナロクから逃げようとしてる神様の器なんだ。
 今は仮初の神性が体を動かしてる。
 彼女らはね。神様が居ないと、存在できないんだ」

 ちょっとまて。それじゃぁ――。
 長く一緒のそいつは、辛そうに表情をゆがめて言葉を纏める。


「――端的に言えば、皆あと2年の命だ」

 皆。それは神子全員を指しているのだろう。
 嘘だろ……なんであんな平気な顔してんだよ。
 なんでオレ達に選ばせるんだよ。
 大事じゃねーか……!
 命が掛かってるのにあいつらときたら……!
 オレたちと笑ってられんのかよ……!


「その間。逃げて、幸せだったといわせる方がいいのか。
 それとも勝ち抜いて、長く生きてもらう事が幸せなのか。
 それは、お前が図ってくれ……」


 ――言葉が出ない。
 なんだよそれ。
 ずるくねーか。
 だって、オレ等が逃げると、必然的に神子が死ぬ。後味悪すぎるだろ。
 どう転んだってオレ等は人殺しだ。どうにかそれだけは避けたい。
 でも、頼みの綱のこいつが――この馬鹿な戦いに乗る事を決意している。
 それで居て今冷静なのは流石だ。
 オレはどうすればいいか。考えるまでも無いがキツキの言う通り今更引けない。
 関わってしまった。英雄的な心からじゃない。道徳心や良心の量なんて育ってきた環境が普通ならさ。助ける為に動くに足る。
 少なくともオレはそういう国で育ってきた。
 ただ、友人に剣を向けることの無い国で――ここに来ても命は同じ重さだ。
 オレを助けてくれた恩人。コウキやキツキという友人。
 生き物であり意志がある。
 同じ時間をすごし、同じ飯を食う。
 同じ命じゃないか。
 だから正直――どうすればいいのかわかんねぇ。
 
「シキガミ戦争。
 神様ってのはコレの事をそう呼ぶらしいぜ。俺たちは関係無い。
 でも赤紙で出兵する兵士みたいに。俺たちは逆らう権利が無い。これは戦争だ。生存競争。生きる為だ。
 一応言っておくが戦わずに済むならそうしたい。解決法は探す。だがどうにもならなかった場合。
 俺はお前らを殺しにかかる。

 ……俺はこの話を、戦争として割り切る事にする」

 オレ達の関わった物語は、囚われたお姫様を魔王から取り戻して逆玉のハッピーエンドって訳じゃないらしい。
 割り切らなきゃ、神子が死ぬ。
 割り切ったら、友達が死ぬ。
 こりゃ悩んだら禿げるな。

「……。そっか……じゃぁオレもそうするわ」
「おまえなぁ……もうちょっと考えろよ」

 呆れた様に言う。
 そこにさっきの敵意は無く、宿題を考えることを諦めたオレに対してと同じ台詞と態度である。
 何度も言うようにオレは考えるという行動に向いてない。
 だから考える前に動くし、理論より心情を優先することが多い。
「いいや、どう考えても最初に理解してそこに至ってるお前が正しいだろ。
 じゃぁオレもそうする。
 それで良い。
 戦争っていう強制なら、誰だって戦うもんだろ?」

 男の子だしな?
 そう言ってキツキを見ると、少しだけ口端をゆがめて首を振った。

「いや、絶対やらないやつが一人いる」

 ――誰もが認める大馬鹿野郎。
 出来ないってわかってるのに、信じるだけで突破する事もある。

「……コウキか」
「アイツ、バーカだからさ、絶対諦めない」
 羨ましいよな、と笑う。
 情けない、と自分の思考を罵っているように見える。
 アイツは――普通の人間じゃない。見た目とか行動云々じゃなくて。
 空気とか運命とかもっとオレ達になんかどうしようもないところで神掛かった何かを発揮することがある。
「まぁオレも諦めたかねーけどよ……」
「心情は、な。
 だが、賭けて良い。俺は絶対に避けて通れない道だと思ってる。
 運命無視しようが何しようが俺たちの通る道だけは曲がらない。
 最善は尽くす。
 だが結果がついてこないなんてよくある話だ。
 だからさ、タケ。提案がある。

 俺たちは先に諦めようぜ」



 なかなか。絶望的な案じゃないか。
 あとは全部アイツに賭け様という甘い考え。
 でもこいつが言ってるのは自分にできる最大の考慮である。
 それを、最善を尽くすというのなら。

 オレも覚悟を決めるべきなのか……。









 翌日は景気の良い雨模様。まさに土砂降り。絶好のお別れ日和じゃないか。
 傘なんざ持ち合わせてない。雨避けのマントなんてここいらで買う予定だったしな。
 濡れる準備は万端。あとは台詞を捨てて走るだけ。

 一晩寝ずに考えた。
 当然、あいつの考えた最善といえど、すぐには納得できない。
 コウキは確かに優れた人間だ。最も人間らしい。
 ただ生きるために必死で、のんきに学生やってるオレ達がどれだけ幸せなのかを思い知らせてくれる。
 それでもアイツの方が幸せそうで――輝いて見える。そういう人間だった。
 ただそいつが不幸だったこともちゃんと分かっている。
 罪悪感なんて抜けることが無い。
 ――でも。
 だからこそ――そいつにはソレを打破する力があること見抜いた上でキツキはそこにそいつを配置する。
 最も優れた、最も残酷な案である。
 アイツと同じ状況でオレが同じ事をできただろうか。
 きっと、流されて生かされた。痛いことに目をつぶって生かされた。
 苦労を引き換えて二人が生きた道にはどうしても……!!
 たどり着ける気がしない……!!

 だから。オレのとる選択は。






「迷わず殺せ、オレもそうする」


 その宣言をすることである。


「……タケ!! 俺は――!!」
 アイツが前に出てくるのを声で牽制する。
「何度も言わすな!
 次にあったら――シェイルが居なくてもオレがお前等・・・を殺す!!」





 悪いなコウキ。
 オレじゃどうしようもない。

 なさけねぇ……!

「くそっくそっっっっ!!!」


 クソ情けネェ……!!
 馬鹿かオレは……!

 友達と殺しあうことが平気で出来ると思ってんのかよ!
 この世界は――!
 何だってできるんだろ!?
 オレ達は優遇されてるんだろ!?
 じゃぁ全員が救われる道だってあってもいいじゃねーか!
 逃げたってアイツらが不幸、戦ったってオレ達が不幸。
 そのどっちかで完全にどちらも満足であるという事を満たすことができる道があるのか!?

 どうせ――お前だって諦めて無いんだろうキツキ!
 こうして全員で喧嘩しておけば最悪戦うことになっても楽だって魂胆だろう。
 諦めるな。
 オレだけじゃない。全員で探すんだ。見つからない訳がない。
 出来ないことは無い、オレは考えることには弱いが、強くあればいい。
 在り方を変えるな、オレの役割は力仕事。
 何でも力で突貫する強引さだけを磨く。

 コレで劣ったオレは、何であいつ等に勝れば良い……!!

 ああ、オレの考えれる最善はこのぐらい。
 思考はオレの仕事じゃない。


「シェイル!」

「何だ」

 隣町にシェイルを見つけた。
 探すと言うことは無く、門に立っていた。
 オレが今、此処に着くことが分かっていたかのように。
 そういえば心が通じ合うらしい。
 今回ばかりは流石に平静ではいられなかった。
「強くなるぞ。オレは」
 決意は言葉にするとより一層強いものになる。
 誰かに聞かせることもそうだ。
「ああ、そうしてくれると助かる」
 オレの決意を表した一言。
 滅多に表情なんか動かさないくせに、そいつはオレをみて笑う。
「お前だけが我の頼りだ」
 それだけ言い捨ててそいつは歩き出す。
 宿に行くのだろう。
 着いて来いって事だ。

 日はまだ高い。一旦風呂でも入って練習に出よう。
 オルドは相手をしてくれるか――。
 ああ喜んで、という状態だろうな。
 まずはアイツに勝つことからか。

 目標を胸にオレは歩き出す。
 強くあることだけ。
 見失わない。
 そう誓って。


前へ 次へ


Powered by NINJA TOOLS

/ メール