第56話『表現』

「ようこそ、戦女神ラジュエラの祭壇へ――久しいなコウキ」


清々しい声がした。
その声はいつも自信と威厳に満ちていて、己を曲げない。
双剣の戦乙女、ラジュエラの空間に俺は立っていた。

「久しいなって一昨日も会ったじゃん」
「何。あのような弱いコウキはコウキではないだろう」
「うっわー。ひどいなっ」

――砂塵に目を瞑り風がおさまったのを感じて目を開く。
双剣のコロシアム――その中心に彼女は立っている。
でも、確かに俺も久しぶりだなと思った。
あの時は気が気じゃなかったし、浮ついてていつもより短い時間しか闘うことが出来なかった。
あの時の詰まらなさそうな彼女の顔にはショックを覚えた。

「ラジュエラ」
「――なんだ」
「ごめん。この前は全く集中できなくて」
「あぁ。全く酷いものだ。
 せっかくこんないい女とやっているのに他の女のことを考えるとは」
「やめろよ! その言い方は俺が最低過ぎる!」
「最低だったな。終わるのが早すぎる」
「いろんな意味でショックだチクショウ!」
「今回は気合を入れて振るんだな」
「剣をだろっ!!」
「分かってるじゃないか」

割と本気で怒っているのだろうか、無表情のまま俺をからかうラジュエラがなんとなく恐い。

「割と怒ってるだろ」
「割と?」

ギラッとあまり開かれない眼が光る。
こ、こわっ。
俺はちょっと身を引いて問いなおした。

「……お、怒ったらっしゃるんですか」
「――コウキ、我等の存在理由は、忘れたか」
「いや……」

――ただ、戦いのために。
その感情を揺らしその剣を抜く。

「解れ。
 コウキ。君は運がいい。
 我が居ることで君はここで何度も本気で闘って死ぬ。
 ――そして、生きていられる。
 それが出来ない戦場で逝くもの達は君の考えの及ばないほど無念であろう。
 戦いの上で、君が只の一度でも“勝つ”希望を見失った姿は見たことがない。
 この私に対しても、だ。
 君ならオルドヴァイユとやってもどう勝つか考えるのだろう。
 だがそれでいい。その前向きすぎる考えこそが君の強さだ」
「はぁ……」

褒められているのだろうか。
その、オルドなんとかって人が誰か知らないが。
申し訳ない気持ちと褒められて微妙に恥ずかしい気持ちで頭を掻く。

「だが。戦女神と闘う者が戦女神以外のことを考えるな。
 気を散らすな。
 守りたいものがあるなら、闘うべき敵を見ろ」
「……ごめん。
 悪い昔から虫の知らせだけは外れなくて。
 ずっとあの二人が心配だったんだ」
「なんだ。二人も手篭めにしているのか。もっと誠実な奴だと思っていたのに」
「そういうんじゃないっつにっ」
「わかっている。問題はそこじゃない」
「どこさ」
「お前が二人のどちらを娶る気なのかという点だ」
「めとる!?」
「なんだ? 年頃の娘二人と旅してコウキはなんとも思わんのか。
 男甲斐のないやつめ。いっそその顔のまま女になったらどうだ」
「……ラジュエラ。割と俺を怒らせる気だろ」
「割と?」

平然と言ってのける彼女には善意も悪意も感じない。
ただ、その言葉にはやっぱり少し――ムカついた。

「――怒りは、盲目にすると言うだろう?
 コウキ、君は人が良すぎるな。
 愛を語って愚かに死ぬな、剣を振るって考えろ――生きることを。
 君の得意なことのはずだろう」

――カシャン……
俺はただそこにある意志を汲み――剣を抜いた。
ヒュンッと音を立てて右手を前に突き出す。

「……行くぞっ覚悟しろ」

彼女はその言葉に少しだけ微笑んだ。

「そんなもの……この世界が始まった時からずっとしている」

数え切れない戦場を駆けてきた戦女神は当然だ、とその言葉を吐き捨てた。
――そしていつもと同じように、俺と同じ剣を戦場から引き抜いた。






幾千の時を駆け、幾戦もを闘う戦女神たちに、
幾億の勇者たちが送る魂の歌。戦争。
血を散らし無念を叫び、守る為に生きる為に。
戦士たちが武器を取る理由は何時だって守る為に欲するが為に。
何時だってその武器は、何かを手に入れる為に有った。
勝つことが正義ではない。
滅びるべきは悪ではない。

彼女たちを喜ばせたければ、攻めればいい。
剣を振るえ。血を流せ。
叫べ、強くなりたいのだと。
想え、手に入れたいものがあるのだと。
地位でも名誉でも金でも女でも――ただ、純粋にでも。
求めるものに、与えるのだ。

その神は、ただ、戦いのためだけに在る故に。








彼女は一歩で俺の前まで跳んでくる。
あれはもう鎧を纏った弾丸だ。
タチの悪いことに鎧なんていくら切りつけても傷一つ付かない。
隙間を縫って剣を突き立てる?
自分と同じ速さで動いている相手にそこまで正確な攻撃は無理だ。
――というか、鎧にすら殆ど触れられないのだ。

剣を交えてどれぐらいの時間が立っただろうか。
今まではラジュエラの見よう見まねで動いてきた。
ラジュエラの動きはホントに参考になるし無駄が少ない。
実践の中攻撃の繋ぎ方をいくつも覚えさせてくれる。
だが、それを応用して別の動きに変えなければ全部ラジュエラに読まれる。

――ヒュッと低い姿勢から剣の鈍い光の軌跡が横なぎに払われる。
俺は迷わず跳躍し、その剣を蹴り落とす。
そのまま顔面に向かって逆の足を繰り出すが顔をそらされ簡単にかわされる。
空中で転地逆転した状態でラジュエラに背を向けることになるが、
剣を振ることによって回転、彼女は避ける為1歩後ろに下がった。
そしてしなる竹のように勢い良く戻ってきて両手を交差させるように切り付けてくる。
俺もその攻撃に合わせて天地の逆転した状態で剣を振る。
踏ん張りが利かないので思いっきり吹き飛ばされるがそれにラジュエラが付いてくる。
身体を回転させて早めの着地をし、左手を大振りにラジュエラに合わせる。
それを右の剣で防いだラジュエラが左で俺の喉を狙う――!
軽く身を引いて俺は左の剣を逆手に変えると彼女の左手を上に弾く。
髪の毛を掠って頭の上を剣が通過したが俺はそのまま懐に潜り込むと体当たりをして体勢を崩させる。
が、その反動を生かして後ろに飛んで彼女は距離をとった。

割と酷いことをしたように聞こえるが、全部俺がやられたことがあることだからな。

距離をとったといっても彼女にとっては無いも同然。
地べたを滑る様に低い姿勢で走り、下から上に斬り上げてくる。
だがその切り上げは囮で逆手に持たれた逆の手が同時に逆風に迫ってくる。
両方に刃を合わせて止め、順手に持った剣で首を狙う。
それを弾かれ、そのまま斬り合いが続く――!

フォンッッィンッギギギギギギッ!!

円を陣地とし、その領域を相手まで広げて攻撃に移る。
剣が触れ合うのは一瞬でその音の余韻を許さない。
肩が多少切られたりするが肉が切れることなんて気にしていられない。

――ザンッッ!!
脇腹に彼女の振った剣が刺さる。
ッヒュッ!!
構わず突きを放ち、腕を切りつける。
初めてかもしれない。
彼女に一撃を傷として与えたのは。

「――っは!」

――見るも壮絶な笑顔。
戦いの狂気を飲み込み戦女神は笑う。
辛辣な剣閃の中で、子供が玩具で遊んでいるかのように無邪気に。

――最近になって何でそんなに楽しそうに笑えるのか分かってきた。
危険な思考かもしれないけど、この命のやり取りは他では味わえない興奮と危機感に包まれる。
俺の場合は死なないと分かっているからかもしれない。
それでも、痛いのは嫌だし、勝ちたいに決まっている。
だから、生きる為に剣を振るう。

――いつか、俺もあんな風に楽しそうに笑うのだろうか。

「……ラジュエラは、楽しいのか」

距離をとって対峙しているついでに聞いてみた。

「――楽しいな。コウキ、久しぶりだこの身に傷を負ったのは。
 常人の刃は我らには届かない。
 たとえ竜人であっても我らに見ることは出来ぬ。
 人であるが故に。
 コウキ、我らは嬉しいのだよ。シキガミが存在することが。
 我らと同じ存在でありながら人である君達が。
 ――同時に、妬ましくもある」
「……それも多少の心の動きって奴?」
「その通りだ。
 我らは戦女神であることに誇りを持っている。
 戦いを糧に在る事それ自体に後悔など無いのだ」


苦笑する。
言い切る彼女の眼には何ら嘘も見られず、ただ威厳に満ちていた。
正直血が流れすぎて頭朦朧としてきたけど。

 我慢して“戦い”の為に構えた。

その数十秒後の後に、俺は自分の心臓に突き刺さっている剣を見る羽目になる。


「――……一つ、君にスキルを与えよう」



それが彼女等の全ての表現。

















落ちるのには慣れている。
新しい始まりはいつもそこからだし。

気付いたら立っていた。
身体に重さが戻って、上下がハッキリする。
目を開ければ――世界を彩る赤の空間。
白いレンガを重ねて作ってある部屋に飾ってあるもの全てが赤。
赤い絨毯の道を歩いてその祭壇の元に立った。


『――ようこそ神々の祭壇へ。私加護神メービィがもてなさせていただきます』
「よ、メービィ。ちゃんと野菜食べてる?
 一人暮らしってばすぐ偏っちゃうからね気をつけなよ」

相変わらずですね、と祭壇の上から笑い声が聞こえる。

『――お疲れ様でした』
「メービィっっ今日はちょっと言いたいこといっぱいあるぞっっ」
『えぇ。貴方の疑問にお答えします』
「何でカーバンクルの言葉がきこえるんだ!?」

グッと拳を握ってその玉座を見上げる。

『……え……?』

戸惑うような沈黙。
ふ、絶対今カードのこと聞くと思ってたよ。
あえて後回しだ。

『い、今まで気付かなかったのですか?
 貴方は生き物全てに対して言葉を聞くことができます。
 シキガミの体とはいえ、神性では神ですから』
「え!? じゃぁ犬とか猫とかアリとかにも!?
 キリンさんよりゾウさんの方がもっと好きです!?」
『後半は意味が分かりませんが。貴方が聞こうとすれば聞こえますよ。
 貴方に言語の壁はありませんから……』
「と、いうことは! 犬とか猫とかの躾が楽になるのか!」

俺はもしかしてトップブリーダーになっていたのか!?

『言語の壁がないことをそう発想する貴方に感動しますよ……。
 ですが、楽にはならないと思います』
「え、なんでっ」
『動物たちは本能に従って意表語として鳴き声を使っています。
 貴方はそれを聞き取れますが動物たちには出来ません。
 ですがカーバンクルはとても賢い動物で人の言葉を解するだけの知能をもっています。
 ですから貴方との会話も成り立つのでしょう』
「リードオンリー!?」
『そうですね。肉体で喋る以上、人の言葉でしか喋れませんから』

意外にもちゃんと答えてくれた。
そうか。そういう理由があったのか。
ちぇ。まぁ言葉か聞けるんだし、お得だよな。

「でさっなんでカードのこと教えてくれなかったのさっ」

早々と話題を切り替える。
言葉の件についてはもう満足だ。
あのカードの秘密を問い質さなければ。

『教えても使えないからですよ』
「――え?」
運命無視フォーチュン・キラー……確かにその名の通り運命を殺してしまえる言わば反則です。
 そして、この成立には条件が2つあるのです』
「2つ……?」
『まず一つは結果意思の一致です。
 貴方が使ったように貴方とカードを繋ぐ能力です。
 その力はシキガミと神子が同時に使う事を望んで、カードが実行するのです。
 解りますか? そのカード、神子、それに貴方達シキガミの三位一体、
 共鳴しあってこそ初めて実行に移るのです。
 今回で言えば<貴方が彼女の元へ行くこと><彼女が貴方を招く>と言う、
 “結果の同じ”明確な願いがあったからこそ、カードが貴方の道になり、
 彼女のもとへたどり着くという“道程の無視”を行ったのです。
 貴方が歩むハズだった道程を飛ばす…反則なのです。
 その代償は大きいのです……』
「何でさっ俺今回なんもなってないぞ!」

ご都合主義万歳な俺だから気にはしないけど、代償無しであれだけのことをやった。
おかしいだろう。ノーリスクならあれを使って神性の箱を集めればいい。

『それは四度目の不幸で貴方がすでに代償として払っていたからです。
 何せ貴方はあそこで一度死に掛けていますし……貴方の命の変わりに無くなったものもあります」

それはアキのペンダントのことだろう。
確かにあれは貴重な物だと言っていたし、それに彼女にとって数少ない母親の形見だった。

「ファーネリアが理不尽だといってカードを破りかけていましたがやめるように言って下さいね。
 破れないでしょうけど、四度目の不幸は決して無意味ではありません』

よし。あとで宿で暇してるファーナをからかおう。

「……なるほどね。でもさ、知ってたらもっと早く助けれたかもしれないじゃん」
『そうかもしれないですね……ですが、もう一つが重要なのです』
「もう一つ?」
『それはカードに課された宿命なのですが――
 事実カードは神性試練への介入は不可能なのです』
「どういうことさ? カードはいつも俺達を試練の場所まで連れて行ってくれてるじゃん」
『試練の案内役として――貴方達に遣わせているのですから当然なのですが、カードはそれ以上の介入をしません。
 ですが試練以外での貴方達の手助けをする強力な〈アルマ〉でもあります。
 カードが条件を満たした上で認めなければ、運命無視フォーチュン・キラー無翼移動リージョン・バッシュも使用できないのです』
無翼移動リージョン・バッシュって?」
『リージョン・バッシュは貴方たちを試練へと移動させているものですよ』
「そっか……要するに試練以外ならなんだって無視しちゃうぜって話か……」
『そう言われるとと些か心外ですがそうですね……
 ですが覚えておいてください。

 事と次第に因っては貴方の生死を左右します。

 ……お願いです。もう無茶はしないでください』
「わかった。でもちゃんと助けれたんだ。ありがとなメービィ」
『コウキが即答する時が一番怪しいのですが。
 ちゃんと分かっていますか?』

「もちろんさ! “気をつけて”使えばいいんだろ!?」

『使わないで下さいと言っているのです。せめて四度目の不幸を終えるまで』
「はははっ……」
『っコウキっ貴方が居ないと、困るのですっ。
 わた――いえ、ファーネリアが悲しむ……』
「分かってるよ。どうせ、俺だけが望んだって使えないんだし」
『……でも貴方は何かしら無茶をするのですね?』
「それはひみちゅっ! ていうか、ファーナがさせてくれないって」
『……そうですね。警戒を強めてもらうよう言っておきましょう』
「も〜信用無いなぁ〜」
『自分の身に起こる不幸に頓着が無さ過ぎるのですよ貴方はっ』

心配してもらえるのは嬉しいのだが、少々俺の考えも分かってもらわないといけない。

「――不幸は、その人が不幸だって思って初めて不幸なんだよ」

多分面食らって言葉を失っているメービィに全力で笑顔を投げる。
そもそも人の言う不幸を不幸と思ってしまったら、俺なんか不幸の固まりじゃん。
そんな不幸いらないんだ。
分かってる。誰かを悲しませることは俺にとって不幸だ。
言うなら、姉ちゃんに不満を言わせてしまうことが俺の不幸だった。
不幸な二人と指差されて泣きそうになる姉ちゃんを見ることが不幸だった。

「不幸だって思われることが俺にとって最悪の不幸だよ。
 何の為に幸輝って言う名前が付いてると思ってるのさ」
『〜〜…貴方と話しているとどうも調子を狂わされてしまいます……
 貴方が歩むハズだった道に貴方に助けられるハズだった人がいたかもしれないことを理解しておいて下さい』
「分かってる……でも大切な人が守れて良かった……」

『そうですか……なら良かったです』
「おうっ」
『…ちなみに、その言葉は、どちらを指しているのでしょう?』
「ん? 何が? ファーナのこと?」
『……何でもありません……』
「そう? そんで、カードって他になんか能力あるの?」
『あります』
「どんなのっ?」

俺は期待に胸を膨らませて聞く。
一度深呼吸をするような間をおいて、
返ってきたのは、思いもよらない一言。



『っ貴方には絶対っっっ教えませんっっ!』


あまりにも唐突だったため後ろにしりもちを付いていたりする。
び、びっくりしたっっ!

「なんですと!? 神様!? 贔屓ですか!?」
『貴方に教えると、きっと不幸を物ともせず
 乱用して、無理して、笑って……死ぬのです。
 そんなの、許しません。
 仮にも私の作った貴方がそんな勝手に居なくなるのは絶対許しません』
「か、神様に言われたんじゃ俺もうダメっすかね!?」
『ダメなのです。ダメダメなのです』
「そんなダメダメ言うなよぅ! ちょっと凹むだろっ」
『……せっかく、ファーナの名前が先に出たのですから少しぐらい意識してください……』
「何さ! 主張はハッキリ言おうよ!」
『あまりにも鈍いと、ファーナが泣きますよ?』
「ホワイ!?」
『それを考えるのが貴方の重大な使命です』
「むぅっ」
『さて、そろそろファーナが寂しがる頃です。行って差し上げてください』
「む、むううう。メービィ。投げてるんじゃないよな?」
『決してそのようなことはありません。
 貴方に、欠けているものです』
「欠けてる……?」

『――では。貴方の旅の幸運を祈っております。
 またお会いしましょう――』

メービィの空間が揺らぐ。
宿題を投げかけて終わる気らしい。

「――ちぇ〜。メービィ、またなっ」


俺は祭壇から黒い空間へ飛ぶと――また、いつものように扉の前に立っていた。


扉を押し開けると暖かい聖堂の空間。
外に出れば雪か。
そういえばコートを買ったのだがやっぱり高かった。
なんというか、色々葛藤しながら買った。
ルーメンことカーバンクルのルーが居なければ買わなかっただろう。
なんせ気候が変わる度合いが激しすぎる。
ここから7日南に行けばいつもの服で丁度なのにここの気候は殆ど冬。
やってられない。
ルーが居れば大体の荷物は持ってくれるらしいし。
うん。いい弟子だ。

過ぎたことを考えても仕方ない。
俺は宿に戻ろうと歩き始めると妙な人影に気付いた。
聖堂のベンチに座っていて、頭を垂れている。
朝は信仰の集会みたいなのがあるみたいだか、昼からは扉を訪れる人たちに開放している。
外も雪だし、ここは確かに外よりは暖かいかもしれないが自分の家に居た方が何倍もいいだろうに……。
と、その髪が金色で羽根飾りのついたヘアバンドをつけていることを確認するまではそう思っていた。
要するに、ファーナがそこで寝てるのだ。
近づいて見るとやっぱりファーナでその膝の上にはルーが寝ている。
カイロ係だな。気の利く奴だ。
コートを着ているとは言えファーナも寒いだろう。
それにしてもなんとも無防備な……平和な光景だ。
何でこんな所に居るんだ……迎えに……?
まぁいい……けど。
何故かやたらにやけてしまう顔を押さえて暫く眺める。
さて起こそうか。
とりあえず、ルーに雪でもかけてみたら色々面白いことになるだろうな。

俺は脚を忍ばせて外に雪だまを作りに行くことにした。

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