第75話『集結!』

「次あったら殺すって言ったよなぁ!?」
「上等だチクショー!」


パァンッ!




「……お二人とも、台詞と行動が全く一致しないのですが」
二人は剣を収めて、手をハイタッチしてその状態のままスキップでグルグルと回っている。
つまりビックリするぐらい仲のいい光景だ。
オークの彼女も唖然とその光景を見ている。

「うおおお! じゃぁ此処で決着をつけるぅっ!」
「上等だ!」
二人は何を思ったのだろう、拳を握った。
――まさか。

『ジャンケンホイ!!!』
「あっちむいてほい!!」

「……だから遊ぶなら後にしていただけませんか?」
敵と仲がいいというのは本当は困るのだが……
あまりの自然さにまぁいいか、とも思ってしまった。
「タケヒト離れろ」
そして冷たい声がする。
「シェイル……」
表情は読めないが場が一気に警戒しているとわかるほど沈黙した。
自分も身構えるが正直モンスターより厄介な物に会ってしまったようだ。

「ねぇ」

そんな中、コウキが笑顔で場違いな声を上げる。
一瞬顔を顰めてオークの神子がコウキに視線をやった。
「今回はやっぱこのシン鉱に潜れって言われたのか?」
「……応える義理は無い」
普通に旅をしていてここに居るなんて事は無いだろう。
それにわたくし達が神子とシキガミである以上、此処に小箱があるから潜るのだ。
「俺達はそうなんだ。もし一緒なら協力しない?」
「マジかっ!?」
タケヒトという大剣の剣士が乗り気な声を出す。
「タケヒト」
すぐに彼の名前だけで神子は彼を制す。
だが彼は引かなかった。
「シェイル。どうせ今は戦わなくていいんだろ? じゃぁいいじゃねぇか。
 つーかぁ、今迷子なんだよ。助けろよ!」
「……」
何も言わずシェイルと言われた彼女はわたくし達に目をやった。
品定めされているのだろうか。
モチロンそれならこちらから断りたいのだが。
コウキの友人の方はまだ印象が良い。
――あの時と同じくコウキと仲の良いままだからだ。
「コウキっ探索ならわたくしたちだけで十分です」
「でもなんか広いじゃんここ」
……確かにそう思って黙ってしまった。
此処に来るまでに十字の分岐は10回ぐらいあった。
ほんの数十分潜っていただけなのにこれなのだ。
広くないので沢山モンスターが出る事もないので二人一組での行動が最適。
ヴァンツェとシルヴィアを合わせて出発しても結構な日数が掛かってしまうかもしれない。
「……広いな。此処から更に一時間は潜ったがまだ掘り進んでいるようだった」
――……一時間も潜ってまだ最深部ではなかったのか。
何処まで降りれば……。
「……」
「……うおっ! 今すげぇ珍しい現象が起きたっ!」
タケヒトが凄く驚いている。
何が珍しい現象なのかはよく分からなかった。

「……うるさい……。聞きたいことがある」

「何?」
「お前等はすでに他のシキガミと組んだ事があるのか?」
高圧的な口調にムッと来る。
何故そうなるかと言うと敵意の篭った発言だからだ。
「あるよ。二回ぐらい」
そんな言葉を気にせずにコウキは表情を変えずに言う。
二回はアスカのことだろう。
――まぁあの二人ならこの二人よりは協力できるのだが。
「ならいい。協力しよう……そっちが良ければな」
そういってわたくしを見た――。

正直不安だ。
最初に、真っ向勝負を仕掛けてきた相手だ。
何時何が起こるかわからない。
コウキをみた。
笑顔で大丈夫だって。と言いながらわたくしを撫でる。
無責任な言葉だ――とは、思わなかった。
彼は有言実行を基底に生きている。
大丈夫だということは、わたくしを守ってくれるということだ。

「――そうですね。地図の交換だけなら協力します」

最大の譲渡。
それ以上は何が起こるかわからない……だからそれを条件にする。
コウキは微妙な顔だった。
「ああ……それでいい」
シェイルが無表情で頷く。
……なんだかスカーレットに似てると思った。
――そうか、彼女もオークの血を半分持っているのだ。
しかし目の前のシェイルと言う神子は純血のオーク。
――油断は出来ない。




「――……なるほど。そういうことですか」
一緒に出てきたわたくしたちにヴァンツェが驚いていた。
事情を話すとすぐに理解してくれた。
「そうですね。それなら大丈夫でしょう」
その見解にはわたくしも少し驚いた。
ヴァンツェなら危ないからと言って避けてくれると思っていた。
「別に俺は寝泊りも一緒で構わないけど」
コウキはそっぽを向いてそんなことを言っている。
「コウキっ」
「はいはい」
諭すと仕方が無い様に両手を挙げて溜息を吐いた。
本当に残念がっているらしい。
過去に自分を殺しかけた人物が目の前にいるというのに。
「ま、しゃーねーわな。こっちは信用ないし」
言ってタケヒトが彼女に目をやった。
「我を見るな」
悪びれる風も無く無表情でそういう。
まぁ他愛もないことなんだろう彼女にとってはっ。
そう納得しようとして、出来なくてモヤモヤする。


「――そんなに深くに入ってしまったのですか……?」
ヴァンツェが本当に驚いたような顔になる。
「どうしたんだよ?」
そして、悩むような顔をして真剣にわたくし達を見た。
「……いえ……。それでは、これから坑道について説明したいと思います」
ヴァンが気を取り直して指を立てる。
シートを敷いてコウキとタケヒト、わたくしとシィルが近くに座っている。
そして少し離れた木陰にシェイルが居る。
「先ほど行って頂いた坑道ですが、本来もっと浅い所で引き返していただくつもりでした。
 あまり深く潜らないように言うのを失念していたようです……申し訳ありません。

 廃鉱はとても危険です。
 まず、天然のガスや空気が正常で無い場合、恐らく数秒も持たないうちに意識を失い、
 適切な処置が出来なければ死に至ります。
 爆発系を厳禁だと申し上げましたが、ガスが湧いていた場合にどうなるかは分かると思います」
…………
もしかしてわたくしはものすごく危険なものを頭の上に灯して歩いていたのだろうか……。
コウキとタケヒトは微妙に引きつった顔でヴァンツェを見ている。
「モチロン道を覚えずに下るなんて持っての外です。
 それにこのような緑の多い場所に存在する坑道は水没していたりする可能性もあります。
 準備も無しに降りるのは……死にに行くようなものです」
「……シェイル、すまん……」
その引きつった笑顔のまま彼は自分の神子に顔を向けた。
「…………はぁ…………分かればいい」
木陰で聞いている彼女が眼を閉じたまま小さく溜息を吐いて返事する。
無謀と言われる殆どに割り当たったようだ。
「まぁ、今日お二人が居た事で大分深くまで潜っても大丈夫な事が分かりました」
「ふぅ……まだある。坑道の要所要所に風を流動させる術式が書き込んであった。
 基礎的なものだったので我が作動させておいた。
 コレで恐らく殆ど空気の心配はしなくてもいいだろう」
ほう、とヴァンツェが感心している。
「他には何か気になる点はありましたか?」
「我等が潜ったのはそこの二人が居た場所からさらに深い場所だ。
 我等が引き返してきたのには理由がある」
そこで彼女は言葉を切った。
そしてそれを続けたのは彼女のシキガミ。
「ああ。俺達はここの地下でヤバイの見てきたぜ」
「ヤバイって?」
コウキがタケヒトに聞く。

「滅茶苦茶広い空間だ」
「それの何が?」
「いや、こう――崖みたいにいきなり縦にすげぇ広いんだ。底が見えねぇぐらい」
「――なるほど……」
「上にも光は見えなかった。気味が悪いほど綺麗に縦に割られていた。
 恐らく故意に法術か何かでやったんだろう。
 対面の崖にも同じように道が続いていた。
 ――横に穴を開けたリンゴに後から縦にナイフを刺したような形状だ。綺麗なものだ」
そうすれば縦の空間が横の道を切断する。
奥はそんな風になっていたのですね……。
正直そこまで行っても出来る事が限られている。
下りるのは構わないだろうが、上る手段が無い。
いや、ルーメンも居るから大丈夫だろうか……?
しかし6人を包む空間を動かすのも深さによるだろう。
ルーメンはまだ小さいからだろうかあまり大きな空間を長時間もたせることは出来ない。
回復量が本当は異常にあるのだが、それも空間圧縮されている道具の為に使われている。
となるとルーメンには本当に緊急時にしか頼れない。

「よし。それ下りてみようぜ」
コウキが軽くそんなことを言う。
「……コウキ、上る算段を考えていますか?」
「じゃぁ俺が斜めにぶち抜く」
「危ないから止めなさ〜い?」
ぐりぐりぐりぐりとシルヴィアがグーでコウキの頭を潰している。
「いでででですんませんすんません! つぶれルーーーーゥ!」
「カゥーー!?」
ルーメンを巻き込んで一緒につぶれている。
もうその光景には突っ込まない事にした。
タケヒトが溜息を付いてしゃーねぇな、と立ち上がる。
「よしっじゃぁオレが斜めにぶち抜く!」
メゴッ! と彼の後頭部に神子の拳がお見舞いされた。
「人の話を聞け貴様」
「おおおお…………」








「――その算段、俺がつけるよ」

――強い風が吹いた。
金色の羽根が舞う。
「――ただ、その計画に俺達も乗せてくれたらな」

「――キツキ……!」

コウキが言う。
その表情は――本当に嬉しそうに見えた。
黄金の翼をバタつかせ、無邪気に笑う黄金の神子ラエティア。
法術衣を翻す――黄金がシキガミ、キツキ。
彼のほうは少し複雑なようだが、コウキに釣られて笑っている。

「――なんだ、結局オレ等はこうなんのな。ハハっ」

タケヒトとコウキは二人でキツキに歩み寄る。
「ま、こうしてられんのは制限時間付きだけどな」
「んなもん俺がぶっ壊す!」
「根本のルールをか? 無茶言うな」
「やってみなきゃわかんないじゃん!」

――なんでこんな場所で3人もシキガミが揃ってしまうのだろう……。
しかも揃いも揃ってコウキの友人達が。
空気を読めば彼女が


「きゃぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!」




――ズドォォォォォ!!!

……彼女が来る、と思っただけなのですが。
思えば実現してしまうのでしょうか……。
「なんや、今日は大所帯やなぁ?」
――白髪のヴァンパイア、氷の神子ジェレイド。
「あーー! 壱神君! 八重君! にゃー君!」
そしてそのシキガミ、アスカ。
いつも通りの騒がしさで何となく微笑ましい。
「にゃーって言うな! でも許す!」
「うははは! なんだなんだ!? なんかテンション上がってきたぞっ」
コウキが嬉しそうに手を振っている。
「ははは! 確かにこりゃ祭りだな」
タケヒトも笑って同意する。
「さて……俺にはこの面子での祭りは体育祭しか思い出せないがな」
キツキ――彼も、自然な笑みになっている。
「あはは! 今度は一緒のチームみたいだね!」
アスカも楽しそうにその中に混じる。
とても自然な光景だった。
同じ髪色の同じ瞳の4人が楽しそうに語らうその場は
――いつかのわたくしの知らない世界を映しているのだろうか。

「――はぁ、これは流石に予想外ですね……」
ヴァンツェが頭を掻く。
「予想できたら神ではありませんか」
わたくしはそう漏らして話がどう纏まるのか見守る事にした。
コウキに任せようと思う。
このメンバーなら――もし戦いが起きようものならきっと山の一つや二つ吹き飛ぶだろう。
……無茶はしないで欲しい。
まぁ……無邪気に笑うコウキを見ていて思う。
それは絶対に無いだろう。
だから――紅茶でも飲んで、待っていようと思った。





「でもすげぇなキツキ。聞こえてたのか?」
タケが一番にそこを問う。
「ああ。俺は耳が良いからな」
「地獄耳ってやつか……ヤな耳だな」
姑みたいな特技だな……と思って言ってやった。
キツキの答えにタケも笑う。
「違う。ちょっとしたハンデと一緒についてきた副産物だ」
「ハンデって?」
四法さんが首を傾げた。
「ああ。俺は召喚されたとき、ティアはお城で監禁されてたからな」
「ええっ!?」
「そんでそこから連れ出すのが俺の初仕事だったわけ」
「勇者様だったの!?」
「うはははっ勇者様だってキツキ〜!!」

――なんだ、変わって無いじゃん。
安心する。
別れ際のような――蟠りは無い。


「別にいいだろ……勇者って程堂々と助けに行った訳じゃないしな。
 それより、この後はどうする?」
「……お昼だろ?」
俺は空を見上げる。
2つの太陽はいい感じに南中していた。
「ああ……そうか。そんな時間か」
「よし! 期待してるぜコウキ」
「え?」
ご馳走になる気満々ですが。
俺はヴァンとファーナを振り返る。
「……お好きなように」

――よし。俺はパンッと手を叩く。
「ティアとキツキこの辺に川とか無いか見て水汲んで。
 ファーナ、火頼める? それと、俺の手伝いな。
 ヴァンー作業台つくってー
 後の人薪になる木探して来てなっ
 はい散った散った!」
「うわぁ壱神君生き生きしてるよ」
「コック長健在やな」
四法さんとジェレイドはそう言いながら木を探しに行く。
「ルー! こんな時の為の鉄板だ!」
「カゥ!」
勢い良くルーから圧縮解除される鉄板。
80cmぐらいは有るかな。
「……コウキ、こんなものを持たせていたのですか?」
流石にヴァンが呆れ顔で俺を見た。
「こ、コレ一枚だけなんだからねっ! 寸銅鍋は持たせなかったんだから!」
「コレでも十分余分ですけどね」
冷笑されながら言い切られた。
うぅ……安かったんだ。
調理器具セットを買うときにオマケしてくれたんだぞ。
にーちゃん良い奴だって異様にデカイ鍋と鉄板を……。
……使う場所無かったけどな。

「それは要らない物持たされただけでしょう……」
ファーナが腕まくりをしながら言う。
「まぁ……実にコウキらしいです。ええ。
 ――多面氷光の壁ランプリドジュール

――目の前に作業台が出来上がる。
良く滑るが冷たさと台としての性能はバッチリだと思う。
「あ、タケ、その辺の石とかでこの鉄板置ける台作ってよ。
 石と石の間で火起こせるやつ」
力仕事はあいつに任せておこう。
「はいよー。シェイル行くぞ」
「……わかった」
岩の欠片はその辺にゴロゴロと転がっている。
ここが穴の近くだからな。
なんかでっかい岩持ってきて切り出したりしてるけど気にしない方向で行こう。

「コウキー! 川があった見たいだから水汲んでくる。
 必要な容器があったら渡してくれ」
「あー。ルー! 水汲み手伝ってくれ。キツキ、ルー連れて行ってくれ」
「カ、カゥ! クゥッ」
「うお! 何だ喋るのか。よろしくな?」
シキガミって便利だ……。
横で首を傾げるティア。
「キツキ、喋ってないよ?」
「え? ほら喋ってるだろ」
「カゥ! クゥクゥキュゥクゥ」
「えっそうなのか? ティア、シキガミにしか聞こえないんだって」
「えーーっ! ずるいー! キツキズルイ! ずるずるー!」
そんな会話が遠ざかっていく。

「――ほんと、貴方達はズルイですね」
最後にファーナにそう言われた。
まぁ……生まれ持ったものをズルイと言われてもどうも出来ないがな。






ホントはカレーにしたかったのだが。
人数も多いし鉄板もあるし。
カレー風味焼きソバになった。
ソバもチョット太い麺になってしまうが。まぁきにすんなって。
「ちなみに、箸がつかえる人口はどのぐらいだ? 箸使える人挙手!」
当然シキガミの4人がすぐに手を上げる。
それとファーナ。
……知ってたけどな。
ヴァンとシィルも手を上げた。
「えっ? 二人も使えたのかっ」
「ええ。分かるとは思いますが国王様に叩き込まれてますからね」
「オレのラーメンがくえねぇのか! ってアイツ叫ぶんだよ?
 フォークで食べたらなんかキレだすし」
ヴァンとシィルが口々に言う。
……。
頑固親父の魂の叫びって感じだなホント。
ファーナは小さい時から箸の存在を知っていて習ったんだそうだ。
いいことだ。日本に来てもそのまま暮らせる。
日本には汁に入れたままの麺が多い。
ラーメンにしてもソバにしてもうどんにしてもだ。
それに麺も長い。
スパゲティみたいに食おうと思えば全部フォークに巻きつくかもしれない。
まぁそれは冗談だがうどんなんかまきつけると太すぎるし、つるつると滑るのだ。
んなめんどくさい事せずに口に入れて啜れ。
話は大いに逸れまくっているが
この野菜炒めの中に麺生地をワイルドに切ったものが入ってる似非カレー焼きソバはフォークじゃ食べづらいだろう。
そう思って聞いたのだ。
「ま、挙手してもらってなんだけど、食器は自分で持ってる奴をつかってくれよな」
結局フォークで何とか自分で食うしかないんだよな。
「お箸はこっちに来てからずっと使って無いなぁ」
四法さんは顎に指をあてて言う。
実は俺もだ。
何で聞いたのかって? 聞くなよ。
「オレもだな」
「ま、市場に無いからな」
「そういえば竹でつくるんでしたか箸は」
タケとキツキが話しているところにヴァンが聞く。
「ああ。木でもいいんだが、竹が軽いし使いやすいんじゃないか?」
「ちゃんと洗って乾かせば長く使えそうだしな」

俺は目の前の鉄板の上の具合を見る。
「ファーナ、もう火弱くていいよ」
「はい。わかりました」
自分のフライ返しを置いて自分の皿を取る。
――そして。
「よし出来た! 各自で取れ!」


開戦の合図をだした。
雑談していたものこちらを凝視していた者全てが一斉に動き出す。

「うおおおおお肉! 肉を寄越せ!!」
「ティア! 早くしないとアイツに全部食われる!」
いの一番はタケとキツキの二人。
ヴァンと元々火の前に居た俺、シェイルと四法さんとジェレイドが囲むともう一杯一杯だった。
「わっ! わっ! キツキっ入れない〜っ」
「ふっ……頂いた……」
タケの皿に自分の皿を重ねておいたらしい、上の皿をヒョイッと奪うシェイル。
「てめっそれオレの皿……じゃない!?」
まだだっと取りづらいフォークでまた取り始める。
「アタシもーっ! ああもう取れないじゃんっ死ねばいいのに!」
「さっきからええ匂いさせ続けてこの騒ぎ起こす気やったんやろ!?」
四法さんは自ら参加している。
ジェレイドは俺に文句言ってきてるがその間に取った方が懸命だぞ?
「はっはっは! ファーナ! はい」
「ありがとうございます」
ファーナには流石にきついだろうと思って先に取っておいた物を渡す。
「何気に手際よくいいとこ取ってるねヴァン」
「当然です」
「じゃ、これは頂きっ!」
シィルがその皿の上のものを自分の更に移す。
「……! 貴女はどうしてそう……!」
「ほら、早く自分の分取らないと無くなるわよ〜?」
「く……!!」
どうやら本当に要領がいいのは後ろに構えている奴等らしい。
「コウキは取らないのですか?」
「ああ」
「何故ですか。何か食べないと力がでませんよ?」

「いや……まだ材料あるから、そんなに躍起にならなくていいんだよ」

『先に言えよ!』
ビシッとタケとキツキに突っ込まれた。
「ははははっ! だって言ったら楽しく無いじゃん」
「くそ! まんまと頑張ってしまったじゃないか!」
タケにガクガクと揺さぶられるが笑い続ける。
「そのお陰で我はいい物が食えている。感謝するぞ」
「そして必要以上に悔しい!!」
シェイルが追い討ちをかけて薄く笑っている。
ああ、あの人も笑うんだな。タケが居れば。
「キツキーなんでそんなにガッカリしてるのキツキー?」
「ああ。こんなのに乗せられた己を悔いているんだ……」
あっちもあっちで面白いし。
「うぅ。アタシ野菜しか取れなかったよ」
「まぁ次回に期待しときや」
「っていうかアンタだけなんでそんなバランスよく取れてるの!? 死ねばいいのにっ」
「ケケケ。世の中そう甘くないんやぞ?」
策略は重要なんやぞと美味そうにパクつくジェレイド。
四法さんが悔しそうだ。
「あれー? 野菜ばっかりで足りるのヴァンツェくん〜?」
ニヤニヤと笑うシィルの横にヴァンが座る。
「ふ。貴女のような非道なマネをしてまで食べたいものではありませんよ……」
「大人ぶっちゃってーんぐ。ん〜おいし〜」
「……テメェ……」
うわぁ……一瞬素が見えた。
笑顔のまま血管浮いてるよヴァン。

なんて面白い奴等なんだ。
そう思いながら丁度2回目の食材をジュゥジュゥ焼いていく。

コレが終われば、本格的に危ない道を降りるのだ。
皆には力をつけてもらわなきゃな。
腹が減っては戦はできんってな。
俺は自然に笑顔になる。

――2回目は、肉が多めなんだ。


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