第94話『導き』




 ――ズザァアアア!!!


『ようこそ神々の祭壇へ。私加護神メービィがもてなさせていただきます。
 大丈夫ですかコウキ?』


 新たに空間に召喚されてもこの威力。
 すげぇんだな裂空虎砲って……。
 ふふ……この壁、なかなか取っ掛かりが無いんですけど。

 ――そう、今先ほどまでまさに死闘を繰り広げていた俺が死んだ。
 そして次の連鎖空間であるここに召喚された瞬間にも何の現象か勢いが残ってて派手にこけた。

「…………メェェェビィィィ〜……」
 眩暈と微妙に残った節々の痛み、それに怒りを感じながらフラフラと起き上がる。
 
『は、はいっなんでしょうっ!?』
「久しぶりっ」
『ご、ごめんなさ――……あ、はい。お久しぶりです……?』
 いま半分以上謝ってた。
 なんだか笑えてきてクツクツと笑う。
「くっはははっごめんごめん。そんなに怖かった?」
『し、仕方ないでしょうっ貴方が、そんな、風な顔もするのですね……?』
 ああ、怖がられてた。
 それは意外と心外だなぁと笑う。
「鬼の如く戦う理由が出来たんだよ」
『戦女神ラジュエラと、でしょうか……?』
 その通りだ。
 戦女神が戦ってるときなんて本当に甘さを全部捨てないとただゴミのように殺される。
 価値があるのはその剣を向けることを厭わない人間のみ――。
「そうっんでねぇ一つ困ったことになっちゃってるんだ」
『困ったこととは?』
「……武器性能で激しく負けてるんだよね……」

 ――そう、今回のデッドエンドの瞬間も俺の地精宿る剣が砕け散る場面。
 どうも追いついていないのはそこかららしい。
 まだ上のあるラジュエラの実力。
 ……まだ課題は多い。

『そうですね……戦女神と同じ位を持つ貴方が引き出せる力で彼女らに劣ることはありません』
「いや、そこもぜんっぜん劣ってるけど。剣が砕けるって無いよなぁ……」
『……では、新しい剣を作ったりはしないのですか?』
「……………………高い…………」
『そう搾り出すように言われなくても……』

「だって……! だってさぁ!
 生活費だって馬鹿になんないんだぞぅ!
 そんな中で家が買える値段の武器何てっ!
 手持ち無しから始まってる奇跡で今何とか……!」

 俺の中で計算される週ごとの生活費。
 野宿した方が確かに宿代は浮く。
 だがファーナが王女様というそこいらにホイホイ寝かせていい子じゃないため俺も泣く泣く宿に止まる。
 俺だけでも野宿をと思ったら危険だなんだと止められて、最後には着いてくるというのだ。
 そうですよね。女の子ですもんね。宿がいいですよね。
 俺シキガミ。従う者。レディーファースト。何を条件にしても負けるし。
 こんな細やかな配慮は知らなくていい。
 ああもう俺の貧乏性はもう病気なんだ。ふふふ。
 空間の隅でウジウジウネウネと悶える俺の近くから声が聞こえた。

『……コウキのその癖は些か修正したほうがいいかと思いますよ。
 必要なくなれば売ればお金は戻ってきます。
 名持ちの武器を持てば尚更です。
 貴方がそれを持って有名になれば買い値より高価になることもあるのです』
「うああん!」
 なんとなく俺の全てを否定された感じで俺の貧乏妄想は壊された。

 手元にお金が無くなる恐怖は――もう、ずっと前から知っている。
 生きるために働いた。
 小さな自由の為に汗を流した。
 その大切さを俺は知ってる。
 だから――無くなることが怖い。

 掘り返してみれば小汚い。
 金の亡者と言い換えていい。
 沢山の嫌なこと。
 その上にあった俺たちの生活。
 理想にたどり着くまでに、どれだけのことをしてきたか。
 その苦労は――他者には理解できない。


『――では。導きを』

 彼女の声にハッとした。
 俺の思考が読まれたのかと思って冷や汗をかいた。
 ――でもそうじゃなくて。
 俺たちを導いてくれたヒトのように――優しい声でメービィは言う。

『グラネダにお戻りになってみてください』

「……グラネダに?」
『はい。貴方の望み通りになるかは分かりません。
 ですが貴方に会いたがっている人が居ます』
「俺に……?」
『はい。早くしないと不満で頬っぺた辺りから弾けるかもしれません』
 そりゃあんたの妹だ。と言いかけたがメービィなことに気づいた。
 ――……そっか。
 アイリスにもお土産もって帰らないと。
 そういえばジェレイドと四法さんを確認してない。

「……おっけぃ。分かった。
 ファーナも戻りたいみたいだし、こっちの試練は一時中断って事で」
『はい。構いません』
「ちなみに聞くんだけど、試練数に差って出るの?」
 シキガミたちで交換した情報では同じだった。
 コレは調整されてるってことなんだろうか。
『出るには出ますが、殆ど日数的にさほど変わらないと思います。
 最終的には全員が同じになるまでたどり着けない仕組みになっているので差がでても構わないのです』
「あ、じゃぁ別に調整されてるわけじゃないんだ」
『そうですね……少なくともその意図にわたくしたちは絡めませんから。
 もしかしたらそうなるのが必然なのかもしれません』
「なる〜? で、さ。血の盟友<エムブレム・ブラッド>なんだけど」
『……はい』
 あ、いやーな予感してるはず。
 多分その予感を俺はきっちりはずさない。
「俺が血をのめば誰でもいける?」
『……神子には当然効きません。当然シキガミ同士も……』
「それ以外は、おっけぃ!?」
『……黙秘は駄目でしょうか』
「駄目。ちゃんと話そうぜっ」
『……大丈夫です』
「いよぉっし!」
 それなら血を飲んでおくべき奴がいるじゃないかっ。
『あの、だから使わないで頂きたいのですが』
「大丈夫大丈夫! もしも・だろこういうのはっ」
『そうですが……あまりきっかけを与えると貴方はすぐに無理をする。
 それがわたくしにはとても悲しいです……』
「ぬぐ……。わ、わかったよぅほんと、前みたいなもしもしか使わないし」
『……約束してくださいね……?』
 なんとなくその言葉を卑怯だと思ったが俺はギクシャクと頷いてしまった。

『よかった……。血の盟友<エムブレム・ブラッド>は気をつけて下さい。
 貴方がシキガミとしての力を貸している間、貴方は第100位となります。
 たとえラジュエラの加護があろうとも、ほぼ貴方に力はありません』
 確かにそれは考え物だ。
 大して長い時間じゃないから大丈夫ではあるんだろうけど。
「……俺が信用してる絶対の仲間なのはヴァンとシィル。
 多分その二人以外はそういう無茶は任せないよ」
 過ごした時間が信用に。
 頼った分が信頼に。
 シィルに関しては俺と同じ部類の匂いがする。
 俺の信じてる最強の仲間。これは間違いない。
『そうですか……貴方がそう決めたのならきっと大丈夫でしょう』
 

 世界がゆっくりと消えていく。
 ――本日の謁見の終了。
 そういえば一つ言っておきたいことがある。
「メービィ」
 ゆがむ空間の崩壊は止まらない。
『はい?』
 でも、最後の最後まで俺の相手をしてくれるメービィ。
 ま、終わりになっていつもなんか言ってやろうとする俺も俺なんだけど。
 コレは今言うと、とっても面白い。
 そんな気がして言う。

「ホント、ファーナとそっくりなんだな」

 最後に見た驚いた表情。
 それも見慣れたいつもの顔。
 見えていたけど、驚かなかったのはその安心感からだろうか。
 何か叫んでいたような気がしたけど、俺の体は既に真っ白へと返っていた。


 ついに俺はメービィを視ることが出来た。
 それは――俺の何かが、変わったって事なんだろうか――?




 扉を出て走る。
 行き先は心の方角。
 俺が感じ取れるのは唯一人。
 焔の神子ファーネリア。

 教会を出ると暖かな日差し。
 空は水色雲は白。
 大地と空と雲。そんな基本色に緑や人々の色が合わさってこの町並み。
 少し空気が乾燥してて洗濯物が良く乾きそうだ、と思った。


 さって、ファーナはどこかなーっと。
 陽気に跳ねるように俺は人の間をすり抜けながら小走りに探す。
 やっぱ天気がいいと動きやすい。
 洗濯物とか布団とか干したくなるな。
 太陽を見かけてすぐに視線を下げる。
 光の跡に軽く目を細めて、人の多い街を見る。
 なんとなく積み上げてある籠売りのモノが多い気がする。
 そう、特に果物なんか目を引く。
 うお、なんだあの果物っ。

 ……
 ……

 食わせてもらって美味かった果物をいくつか買って紙袋で抱える。
 めちゃくちゃマケてもらった。
 おやつ代わりに一つをかじりながら街を歩くきたいところだけど生憎手があいてない。
 ――人の多い場所っていいよな。楽しい。
 誰かに支えてもらって生きてきた。
 だから回りに誰かが居てくれるのは俺にとってとても重要なこと。
 支えるために頑張るのもそれがあったからこそ。
 俺が生きてきた意味――。

 にしても、この酸味が堪らない。
 もう一個食べてしまおうかとちょっと悪徳顔になって道端で紙袋をあさった。

「――ん?」
 歌が聞こえた。
 俺はキョロキョロと辺りを見回して、妙に人だかりのある建物の影を見た。
 丁度、この辺りにファーナがいる。と、思う。
 もしかしたら、と思って俺はその人だかりの方へ向かった。


 意外だった。というのが初見の感想。
 でも、よくよく考えると、そう言えばファーナも上手いし、ティアとかも良く歌う。
 神子ってさ、歌うのが上手い。
 祝福歌とかそういうのを練習するんだって。
 ファーナはホント綺麗な声してる。
 それに併せるテノールの声も、男性的なホント真逆の綺麗さで人々の耳を奪っていた。
 金と白。焔と氷。女性と男性。
 ファーナとジェレイドがどうやら祭り上げられているようだ。
 何の歌だったか、何度かファーナが口ずさんで居るのを聞いた。
 それは――ああ、確か焔の祝福歌だったか。
 対して同じリズムと曲調ではあるが音階と歌詞の違うあの歌は、少し涼しげでこの場所では心地よい気がする。
 多分氷の神子の祝福歌。
 全ての相反する二人に何が起きたのかは知らないが――
 ああ、皆の手拍子と歓声がこんなにも心地よいと思ったのは初めてだ。
 手拍子に混じれないもどかしさを抱えつつあんまり邪魔にならない位置で二人を見る。
 丁度台のようになった場所でそこに立っているので見えやすいのだ。
 多分ファーナとジェレイドがこっちに気づいたのでプルプルと手を振って見る。
 すると同時に手を振ったりグッと指を握ったりの反応が返ってきた。
 うん。仲がいいならいいんだけど。

 とりあえず事の発端を知るべく他の仲間達を探してみる。
 ファーナには必ずシィルかヴァンか俺がついている。
 その理由は言わずもがな。
 まぁシィルが多分一緒に居るはずだ。
 俺はちょっとだけ人ごみを掻き分けて前へと進む。
「壱神くんっ」
「ん? あ、四法さん」
「よかったっホント元気になったんだっ!」
「おうっお陰様で。で、コレ何事?」
「うん、なんか……ごめんねジェレイドが馬鹿で」
「なんていうか、その過程が知りたいよ……」
「えっと、実は神子の歌は歌詞と諧調が違うだけで歌うと同じなんだって」
「おおっ」
「で、歌ってもらったらこうなったの」
「……おおー?」
 もっとその中間の出来事も知りたい気がするんだがいいか別に……。
 というか、コレこの後どうなるんだろう。

『おおおっ!』
 群集が声を揃えて感嘆する。
 俺も思わず同じようになったけど。
 良く聞こえなかったがジェレイドが何かを叫んで大きく飛び上がった。
 それこそティアみたいに飛ぶって感じじゃないけど浮いてる。
「なっはっは! アスカー! 行こうや!」

 キィィィィ――
 見覚えのある青い魔方陣。
 無翼移動<リージョン・バッシュ>。

 あ……行っちゃうのか――。
 発動したカードを止めることは出来ない。
 だから制止の言葉も意味を成さない。

「あーもー! 何でそんな勝手な事するの!」
 ジェレイドはこちらに向かって飛んできて、四法さんに手を差し出した。
 そうやってると、ホント本の中に出てくるような魔術師って感じだ。
「なんや。コウキが元気になったら出発ちゃうの?」
「そうだけど……! もー! ごめん、壱神くん! 無事でよかった!」
 その手を取って、ジェレイドにしがみつく。
 俺たちを中心に大きく空間が開いた。
「ちょっとぐらい一緒してくれても良かったのにー」
「悪いなぁ。ワイもゆっくりしたかってんけど、ちょい急がなあかんのや」
 ちょんと、目元に触れてすまなさそうに笑った。
 何があるのかは聞いてもはぐらかされるだろうなぁ。
「俺のお土産大作戦失敗かぁ……」
 はぁっとため息をついて二人に手を振る。
「お土産?」
 四法さんが俺に問いかける。
 言っている間にも見る見るうちに術陣は完成し、青白く光り始めた。
「うん。じゃ、グラネダで会おうぜ」
「えっ!? な、何で? 何かあるの?」
「あるある。すっげぇ楽しいからさ」
「ホント?」
「おう」
 俺は小さく手を振って二人を見る。
 ジェレイドが俺を見て何か分かったような顔をした。
「まぁ――時期が良かったら行ったるわ」
 そしてにんまりとわらう。
 何でだろうか。
 たぶん、会える気がした。
 俺は頷くと、ジェレイドは飛翔するように空へと上った。
 そして、一瞬眩く光を放ち――次の試練へと消えた。





 ファーナが舞台に残る。
 視線が集まっても動じず、一礼する。
 ああ、すげえなやっぱ。
 終わりを感じて、まばらに拍手をしたり、歩いて行ったりする人たち。
 俺はそんな人たちを掻き分けてファーナの元へとたどり着く。
 が――なんだろう、人だかりが出来ている。
 中でファーナの声がする。
 というか、なんか人と人との間から手が生えてる。
「……せいっ」
 もちその意味は瞬時に理解して救出を試みる。
 すぽんってとファーナが民衆から勢い良く出て俺に抱き付く形でバランスを整えた。
「あぁっ!? はぁ……助かりましたコウキ」
「いや。なんの。それより、大丈夫?」
「はいっなんとかっ」
 ぱあっと笑ってちょっとだけ咳払いをして、人々を振り返る。
 主に俺が睨まれて、ファーナには羨望のまなざしが向けられている。
 怖いから早くどっか行きたいんだけど……。
「こほん、お騒がせしました皆様っ。
 わたくしは一端の冒険者で御座います。
 吟遊詩人でもなく歌人でもありません。
 サインなど書けはしませんし、専属で歌うようなことも出来ません。
 どうかお引取りください」

 深々とまた礼をして顔を上げると俺の手を引く。
 ――唖然と俺たちを見送る人たちをかわいそうだなぁとか、思ったら駄目なんだろうか。
「やっぱ上手いんだなぁファーナ」
 今のはどうやら酒場などで契約して歌わないかというお誘いだったそうだ。
 全然吟遊詩人職でも食っていけるんじゃね?
「いえ。わたくしなど……。
 只余りにもあの方が挑発的に言うものですからつい……」
 あー……なんとなく予想できた。
 やる気があるのか無いのかよく分からないがジェレイドは煽るのは上手い。
 まぁ災難だったなとしか言えない。

「ほー。あたしを無視してくれた割にはコウキにべったりじゃないファーナ?」
 手を繋いでいる俺たちの間に入ってグッと腰を掴まれた。
 つか、捕まった。
 なんだかすごいガッツリきてる。
 身動きが取れない。
「シルヴィアっどこに居たのですっ」
「せーっかくワッフル食べ終わったからあたしが追い払おうとしたのにーファーナに無視されたー」
 ぷぅっと頬を丸くするシィル。
「気づけなかったのですっ。
 というか、もっと早く助けてくださいっ」
 確かにワッフル食ってたってのは……。
 カラカラとそれに笑って自分から振っておいて気にするなと豪語する。
 あー。なんかホント豪気な人だなぁ。
 シィルがん? と何かに気づいて俺の後ろに回る。
 するとゴソゴソと俺のバッグが漁られた。
「あっちょっ! なにすんだよっ! ああっだめっ変なとこ触らないでぇ〜」
「あはは。よいではないか〜。何この果物〜? ちょうだいっ」
 うおっ何のセンサーなのか知らないが俺のさっき買った果物が見つかった。
 片手で人ごみに入るからスカスカだったバッグに入れたんだ。
 二種類のものを買ったんだが一つはまだ食べてない。
「ああっ俺の初めてがっ!」
 ガジッ
「アァー!」
 容赦なく果実にかじりつく。
 さすがですお姉さん。
 そしてポコッと顔を赤くしたファーナに叩かれた――。
 
 もしゃもしゃと咀嚼して飲み込むと俺に向かってグッと親指を突き出す。
「おいしいっさっすがコウキ。分かってる〜」
「ちなみにそっちはまだ食べたこと無いんだよね。ファーナも食べる? 昼だし」
「そうですね。どこかで昼食を摂りましょう。それはデザートと言うことで」
「おっけー」


「それよりコウキっメービィは何か申しておりましたか?」
「あ、そうそう。グラネダに戻ってみろって」
「そうなのですか?」
「うん。お導き。
 剣の話をしたらグラネダに帰るよう言われたんだ」
 俺が言うとシィルと目を合わせて頷いた。
「――そうでしたか。ならばそうしましょう」
 真剣な顔でうんうん頷くファーナ。
「なんかあんの?」
「それは帰って見なければ判りませんが……貴方はほぼ直接聞いている気分なのでしょうが、メービィは神性ですよ?」
 俺の問いに訝しげにファーナが俺を見上げた。
 確かにこっちの世界の常識に慣れ切れない所が多い。
 というか、勘違いして慣れてる。
「ぶっちゃけ有り難〜い天啓なのよ?
 コウキスンゴイ恵まれてるのよ?
 こんな美人はべらしてるなんてホントイケメン」
「そういう意味わかんないイケメンの使い方やめようよ……」
 そしてポンと手を打って指先を俺に向ける。

「八方イケメン!」

「俺を指差すなぁ!

 何そのすっごい名案みたいな顔!?」
 確かに境遇に恵まれすぎている感が無かったわけでもない。
 今回で一気に俺だけどん底だけど。
 なんかわき腹辺りを突付かれたのでビクッと体が反応する。
 ファーナがジトーッとした目で俺を見ていて、何故か俺が睨まれている。
「……すんませんでした」
 なんか怖かったので謝っておく。
「何故あやまるのです」
「なんとなく?」
「確かに貴方は八方美人過ぎます。というか、アイリスはっ……」
「アイリスが?」
「何でもありませんっあ、あそこで昼食にしましょう」
 ファーナが見た目線の先にあったカフェ。
 そこで俺たちは昼食をとることになった。

 まだ大量に食べるシィルに驚愕していた出発前日の午後――。


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