第107話『両手に剣を』


「二刀とは才能だ。
 一刀が振れるとて、二刀を扱える訳ではない。
 思考に迷いが生じ、振り方を誤れば自らを傷つける。

 二人三人と想われれば傷つくのと同じ。
 なぁコウキ」

「なんでそこで俺に振るんだよ」

 千か万か忘れたが、その舞台に刺さる双剣が遠めに見れば剣山か。
 そのど真ん中のコロシアム。
 ここは剣がまぁ少なめ。
 触ろうとすると触れられなくて、それは戦う気が無いからだと忠告された。
 当然、ラジュエラと戦ってる最中は触れられる。
 透き通るとかじゃなくてそこにあるんだけどそこに無い感じ。
 度のあってない眼鏡でモノを掴もうとする感覚。

 いつもどおりの挨拶から始まって雑談。
 良い物を手に入れたな、と言われたので剣の自慢なんかをしていた。
 どんだけ子供なんだよって?
 最新のゲーム機とか携帯とか買っちゃうと自慢したくなるだろ?

「聞いてみただけだ。
 ふむ。しかしその剣は君によく合う。
 炎術志向もそうだがなにより片手剣だ」
「えっ片手剣だといいのか?」
 まぁ確かに今は片手しかもてない現状からまったく違和感はなかったけど。
「はは。君は無対の剣主だと言っただろう?」

 双剣の相性なのに双剣じゃないほうがいい。
 変な話だよな。

「その定義が良くわかんないんだけど……
 何それ……相性問題?」
「そう。君は浮気を許されている」
「その言い方やめようよ!」
 指折りで何かをカウントして4を数えようとしたのを止めて俺を見た。
 なんだよ。その数字。なにその笑み。
「4人目はもう少し押さなければな?」
「何の話!?」
「ふむ、正直な所“乙女を弄ぶ奴は死ね!”と戦乙女ぶってもいいのだが。
 英雄色を好むというだろう。それなりの発散場所として良いのではないか?」
「ムシかよ! つか振りってどういうことだよ! 話がどっかいってるぞ!?」
「気にすることではない。
 というよりは――主は相当な阿呆だな。
 早く乙女の鉄槌を食らって目を覚まして来い」

「だーかーらー!
 俺はいますっげぇ感動してるんだって話してるだけじゃん!」

 コンチクショー! と主張しながらぶんぶん手を振る。
 何だよさっきから人を浮気者扱いして。
 俺何もしてないだろ!?
「ふふ……ああ、お姉さんは悲しい。
 あとは楽しいという動機だけに任せて見て居たかったのだが……」
「あ、お姉さんはもう認めたんだ」
「なに。褒められているとあらば邪険にするのも無意味と気づいた」
「一人でオネエサンを復唱して慣れる練習とかしてたとかだったら面白いのに」
「……」
「……」
「……」
「……えっあたり?」
「さてな」
「あ、こら、感情OFFにするなよぅ! 無駄に凄むなよぅ!」
 感情オフだと俺を直視して表情が変わらなくなる。
 いつもは余裕な笑みを浮かべているんだけど、そのお陰ですぐ見抜ける。
「……しるかっ」
 ふん、と鼻を鳴らすが俺は笑いが堪えきれなくなってきた。
「にっははははっラジュエラ、面白いなぁ」
「さぁ、コウキ剣を抜け。
 でないと1秒後に後悔するぞ」


 ガギィ!!!


 ――戦いの開幕である。
 ミス双剣は導火線が短い。
 こう、ちょっとからかうとすぐに爆発するのだ。
 ちょっと暴力的だが可愛い人だぞ。

「その腐った口と頭を切り離してくれる――! 全力でな!!」
 そこで切り離されるのはマジで勘弁していただきたい。
「やなこった!」

 ガンッ!! ガガガッガガガガガガッシュビッッ!!!
 二刀の乱舞が乱れ咲く――。

 双剣の動きに合わせて赤い軌跡を走らせる。
 攻撃を受けているだけでは不利なので片手も攻撃に入る。
 双剣はその間でも防御してさらに追撃ができる。
 が――わざと隙を見せて誘っておけばこちらにも余裕が出来る。
 ある意味師の居ない俺は型を知ることは無かったが、ついさっき成り行きとはいえいい戦いをさせてもらった。
 本当なら何度か振って体に覚えさせるべきなんだろうけど――。
 俺の本来のカタチじゃないから。

 ラジュエラは相変わらず強い。
 斬り返しのタイミングなんて神業。
 何とか反応して身を引くが、それでも腕に一センチぐらいの切り傷が出来る。
 もちろんそれは深さ。
 血しぶきを飛ばしながら俺は踏み込んで、喉を狙う。
 戻った双剣の両方で綺麗に止められ、そこから再び片手の型で動く。
 双剣とはいえ同じ片手剣。
 攻撃する速度の差がほぼ無いため先に攻撃を放ってば相手は受けなければいけない。
 手数にすれば双剣のほうが倍以上繰り出せるが――。
 片手でも型をこなせば次の剣に追いつかれる前に連続で攻撃できる。
 俺が脳裏に焼き付けてきたあの動きを――!

 下がる彼女に踏み込んで斜めの袈裟斬り。
 キィ――!
 甲高い音だけが一瞬聞こえて、俺はその剣を振り切る。
 手首は柔らかく使い、衝突を避けた。
 次の瞬間には向こうの剣が俺を斬りに来るがワンステップで回転して彼女の横につく。
 それに合わせて剣もついてきたが、その剣を力を込めて打ち上げる。
 ガギィィンッッ!!

「――ぬ、浮気の剣技かっ」
「まだッひっぱるのかよ!」
「ああ、我は反対派だから、なッ!」

 高速の剣閃の最中で会話。
 まだ余裕がある。

 ザザザッ! シュンッッ!! ガガガガキィィィンッッ!!

 一つ一つに神経をとがらせば音は聞こえるが、実際はそんな感じ。
 剣が風を切る音が常に聞こえる。
 俺の運動量といえばカロリーメイト一箱如きじゃ絶対に足りてない。
 テンプシーロールも真っ青な上半身運動とかそんな感じだと思って欲しい。
「――くっ」
 懐に入って相手を押す。
 態勢を崩すっていうのが有効なことがロザリアさんと戦ってわかった。
「せいっ!」
 逆手に握って振り上げた宝剣が彼女の片手から剣を弾き上げる。

 そこからは――もう、会話の余地が無い。
 ラジュエラが2本目の剣を抜いて迫ってくる。

 先ほどよりリーチのある剣が俺の目の前を通過する。
 間合いが広くなる――。
 広くなればなったで出来ることがある。
 この剣になってからはちょっと勿体無いと感じるが。
 十分な距離、といっても彼女なら二歩圏内だ。
 その距離で詰められる瞬間に俺は剣を投げる。
 それは予測済みだったのだろう。それを弾いて俺に突進してくる。
 俺が稼いだのは剣を弾く一瞬。
 その瞬間にはもう俺も彼女へと詰めだした――
 一番手の近くにあった地面に突き刺さる剣を引き抜いくとさらに投げる。
 そんなの知ってると言わんばかりに笑いながら彼女はそれを弾く――。

 俺もそれと同じように笑う。
 そんなのはわかってる。
 次に何が来るのか。
 それに恐怖と期待を込めて彼女は笑っている。

 彼女が俺に迫るための最後の一歩を踏み切った。
 距離があっても2歩で詰める、彼女は直線の動きでは迷わない。

「術式:裂っっ空――!」
 右腕が腹を回って剣を掴む。
 剣を引き抜くと光りながら斜めの軌跡でその光が放たれる。

「虎砲!!」

 ――ドッッ!!!

 一瞬で目の前が爆風に飲まれる。
 この術の完成度が低いとこうなるらしい。
 湖でやったように風を巻き込む爆風になる。
 ラジュエラも流石にその風を受けきることは無理だったのか風に飛ばされるように大きく後ろに飛んだ。

 風は俺に対しては追い風。
 右手を大きく振り上げて走り出す。
 勢いはほぼラジュエラじみた時間だった。
 宝剣を手にとって空を見上げる――。


「連式!!!」


 逆手に持った宝剣に全神経を集中する。
 体から吸い取られるような感覚を感じたが――それがすべて剣の力に変わっていることを理解した。
 ギリギリと腕の筋肉が軋んで、熱い血みたいな感触でマナが流れる。
 赤い宝石剣がその色をどんどん濃くして、黒に近くなる。

 パキィ――!

 その黒の塊が割れ、光を帯びる。
 ――今までじゃ、剣に収束できるマナの量が足りなかった。
 俺が未熟な分もあったんだろうけど――。
 コレが本当のこの技。
 この剣のおかげで俺は本当の意味で全力で――彼女の相手が出来る!

「裂 空 虎 砲!!!」

 全身のバネを総動員して空中を目掛けてその光を振り切る――!

「くらええええええええええええええええ!!!」



 ズォ――!!!

 空間を丸ごと飲み込むかのような光。
 刹那の出来事だが――俺は彼女から目を逸らさない。

 宙に居た彼女は目を閉じて新しい剣を引き抜くと両手を開いた状態。
 薄く笑顔をたたえているのはいつものこと――。

 そしてその眼がカッと見開かれた瞬間に、その両手から眩い光が放たれる。
 ――まさに女神といえる神々しい姿だった。
 俺がその光に気をとられた一瞬で俺の裂空虎砲は相殺された。
 それが二対の裂空虎砲だと気づくのにそれ以上の時間は要らなかった。

「――惜しいな。対であれば対等だというのに」

 そう、俺は彼女を超える為に。
 この剣一つで挑んで。
 彼女の謳う最強の技でそれを成そうとした。
 それは――双剣であるから、最強だというのに。

 ダメだ、負ける――!

 二撃目が放たれる。
 今からでは裂空虎砲は振れない。
 一撃目より二撃目は遅くなる。
 負担は軽減できてるけど、これ以上連発はできない。というか間に合わない。
 そう、彼女の言うとおり。
 俺の左手さえあれば。

 こんな馬鹿な戦い方もしなくていいのに。

 ファーナがくれた剣。
 この剣は俺の期待にこたえてくれている。
 でも逆にこの剣を使いこなしてるわけじゃない。
 ただ我武者羅に突き進むだけの俺。
 悔しい。くそ。
 左手があれば持ち替えて振った。
 その後だって色々やった。

 俺には守りたいものがあるのに――!

 ズバァッッ!!!

 体に走った衝撃。
 何度目かの死の感覚。
 飛び散る血。終わる世界。


「ラジュエラ」

 最後の最後。
 俺はいつだって悪あがきをする。
 今回は少し時間を掛けすぎたみたいだけど。

「どーん」

 見えてないけど。分かる。
 たとえ剣を離そうが拾おうが。
 投げてから戦っていようが――。
 最近になって使い出したけど、俺の剣技――。

「は? ――ッ!?」


 ザンッッ!!!


 ラジュエラの肩口に刺さる地精宿る剣。
 それを見届けて――俺の試合は終了した。





 続いて召還される場所は、焔の祭壇――。

 の、ハズでしたが!

「うお!? なんだっ!?」
「……」
 目を覚ましたらまたコロシアムが続行――でお姉さんが俺を睨んでる。
 ジトォっとした嫌な視線だ。
「え、ラジュエラ、どうしたのさ?」
「……痛い」
 肩口は傷がそのままだ。
「えっあ、ごめん」
「初めて……だったんだぞ……こんなに深く……」
「ええっ!? ちょっとまてその言い回しは誤解だらけだ!」
「傷物にされた……すんすん」
 目元を押さえて泣きまねをするラジュエラ。
「なんなんだよ!」
 ばっと両手で頭を抱えてこのお姉さんに対して苦悩する。

 ん!?
 ババッと両手を上下して
 ピースして
 逆立ちして
 転がって起き上がって、左手を見た。

「なんじゃこりゃあああ!?」
「左手じゃないか」
「え、ま、よし、落ち着け俺。
 ラジュエラ、まず言っておく俺は浮気しない」
「なるほど、いい感じに落ち着けてないな」

「ねぇ、聞きたいんだけど、コレって喜んでいいところ?」
「ああ、大いに喜べ」


「いやっほーーーーーーーーーーーーぅ!!!
 よっしゃ! よしっ!! うっし!!! うあああああ!!!」


「さぁ、我を超えればそれは君のものだ」




「チッックショーーーー!!」
 超ぬか喜びさせられた。
 ダンダンと石の床を叩く。
 理不尽だちくしょう!
「はははは」
「いいもん! リトライだ!
 よし……っ」

 左手を握る。開く。動く。

 そこに、有る。

 この世界だからこそ許される優遇。
 望めば手に入ると――神が言うのだ。
 言わばコレはハンデをなくす為の義手。道路に出るための仮免許。
 負ける気はこれっぽっちも無くなって――


 『地精宿る剣』と『純真なる紅蓮宝剣』を引き抜いた。


「うむ。いい顔だ」
 ラジュエラも俺と同じように笑って剣を抜く。
 剣は――4対目。
 俺は今までここにたどり着いたことは無かった。

「君にその腕があれば。
 あの一撃は防げただろう。
 あの剣は間違いなく我に刺さった。認めよう――コウキ!」

 呼ばれて構えを少しだけ緩くする。
 戦女神ラジュエラは、聖母のように微笑む。


「ようこそ、神の領域へ」


 ピン――!
 遠くで彼女の剣が甲高い音で閃いた。

 俺はその言葉で思い出す。
 戦王と剣聖の戦いを。
 あの戦いは本気ではなかったはずだけど、俺はその領域へ踏み込むことになる。

 バシュ――ッッ!!

 彼女の剣が伸びたみたいな錯覚。
 それは本気の突撃。
 知覚ではなく感覚を優先して回避。
 すべてがスレスレであたらなくても掠り傷がたくさん出来ている。
 本当に、
  考えてる、 暇が、
 無い。

 斬り付けて距離をとって、剣を投げて、詰めて。
 袈裟斬りから突きなんて無茶苦茶な繋ぎ。
 命を駆る最短距離を走る剣――。

 百ぐらいの打ち合いになって最後の一撃で決める為に二人とも力を込めた。

 ――ボォォンッッ!!

 足元で衝撃干渉が働いた。
 青白い光が跳ね上がって、俺たちを照らす。
 初めてこの剣で戦う。
 初めてこの領域で戦う。

 本気という本気はいい武器を持って初めて発揮される。
 俺が本気で対応しているのは、ラジュエラが本気だから。
 一瞬でも気を抜いたら殺される。

 でも、負けない。
 その理由は右手が持っている。
 この左手があるから救えるすべて。
 左手が無かったから出来なかった事を悔いて。

 負けない。
 守るんだ……。
 大切なことを教えてくれる彼女を――!

 俺は支えられてる。
 そんな仲間たちを守りたいから。

 強くなるって、一緒に誓ったから

「――勝つ……ッ!!」

 俺が押し勝ったのはすぐ後。
 彼女の肩の傷は何故そのままなのか分からないが苦痛に顔を歪めていた。
 敵意満タンでそれを哀れむことは出来ない。

 むしろチャンスとみて一気に攻める。
 左手に持った地精宿る剣でラジュエラに切りかかる。
 両手の剣でそれをガードされたが、そのまま振り抜く。
 右手の宝剣で隙間を縫って突きを放つが彼女の剣に弾かれる。
 本来ならここで神業の斬り返しが来たのだろうが、右肩が手負いになった彼女には振れず、彼女の2歩で大きく下がった。
「術式:紅蓮月!!」
 術式を叫んで俺は再び剣を投げる。
 剣は焔を纏って、まるでファーナの放った法術みたいにラジュエラを追う――!

「術式:炎陣――!! 旋斬っっ!!!」

 ラジュエラが同じく焔を放つ――!
 爆炎の渦のような火力が一気に舞い上がった。
「うお――!?」
 すげ――! コレも、こんな技だったのか!?
 その炎の間から急に飛び出てきたラジュエラ。
 それを何とか拾った剣と地精宿る剣で凌ぐ。
 横薙ぎを転がってかわして、俺とラジュエラの位置が変わる。
 凌ぎながら宝剣まで後退して、再び武器を戻す。

 攻撃に移って、斬り付ける方向と同じほうへと剣を叩かれ、勢いに体が流れる。
 やばい、と思ったが彼女の右手は思った以上に切り込んでこなかった。

 俺の目に焼きついた彼女の剣の軌跡が半分に縮まった。
 それを――チャンスとみてさらに踏み込む!
 それと同時に、彼女も俺の懐目掛けて踏み込んできた。

『術式:紅蓮月!!!』

 叫ぶのも剣を振るのも同時。
 互いの剣が真っ赤に染まり、同じ軌跡を描いて衝突する。
 半円はまるで不吉な赤い三日月のよう。
 その軌跡の衝突放つ火花は星のよう。

 ガシャアアアッッ!!! 

 お互いラストの一撃を振って両足をつけたまま地面を滑る。
 ビリビリと痺れた腕に鞭打ってさらに剣を振る。
 なんで走る前に剣を振るかって?
 目の前で二歩目を踏み出したあの人に走り寄るなんて――無意味!

 鬼神が如く剣を振り続けるラジュエラ。
 俺自身も同じ。

 ラジュエラは自分の知っている武術で戦っている。
 俺はなんとか体に染み込んでる生きるための武術でそれを凌いで、抜群の生命力で生きてる。
 ――足りてないよ。全然。
 俺はラジュエラの何百分の一も武術を教わってないけど。
 カミサマってやつがどれだけ存在してるのかも知らないけど。
 他の何でそれを補えばいい。

 ザンッ!

 鋭い痛みと横の腹に入る剣。
 後ろに飛んで致命傷だけを避けて間合いを計る。

 痛い――……けど、気にしたら負けって結構あるだろ……?

 スゥッと深呼吸だけをして左手を前に構える。

「負けねぇ……!」
「――いいぞ……! あはははっ!」

 振り下ろして突き上げる。
 避けながら同時に切り払って飛び上がる。
 額を切られて、血が舞うのを見た。
 頬を切って、血が流れ出してくるのを見た。

 剣で弾かれて宙をに浮く。
 宙返りと同時に地精宿る剣を鞘に収めた。

「術式:紅蓮月!!」
 パリパリとマナが音を立てて剣に奔る。
 剣に吸われると感じるのはこの剣が初めてかもしれない。
 体に回転をかけながらさらに続ける。

「連式:炎陣旋斬ッ――!!!」

 目の前に要るのは――神である。
 戦を愛するものを愛し、戦に生きるものを祝い、戦に死ぬものを謳う。
 牙を剥けば竜にも劣らぬその武術――。
 剣を合わせて理解した。
 ヒトなんて、同じレベルと考えちゃいけない――!

 そう――竜のように相手をすればいい――!

 裂空虎砲は正直他のと消耗量が桁違いだ。
 後2回ぐらいでマナが空っぽって言う状態で倒れることになるはず。
 宝石が輝き、赤から黒へと変色――そして、マックスの状態で真っ白の光を放つ――!

 ィィィ――!!

「術式:裂空――!!」

 傷口が開いたのでついでに叫んでその技が発動する――!
 痛てええっ!

 痛いけど……!!

 この一撃だけは外さない――!!!

 歯を食いしばって右腕に力を込めて――振りぬく!

「虎砲!!!


 痛てええええええええ!!!」


「馬鹿者が!!! まだ双剣を解らないのか!!

 術式:裂空虎砲――!!!」



 ――ザァァ――!
 ぶつかり合う一瞬だけ、静かになる。
 ガァアアアアアンッッ!!!
 空中でその衝撃がぶつかって、爆風だけが吹き抜けた。
 


「終わりだ――!!」

 二撃目の裂空虎砲右手がもう使えない。
 左手で同じ技を打てば――相殺されて、俺が負ける。
 いや、神業の斬り返しがあった――。
 すでに、剣は振られている。
 追いつけない。


 負けたくない――……。

  宝剣を強く握って――願う。




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