閑話『アキを辿る竜の道2』
初日大会には235人が出場、本戦に進んだのは20人。
前年度優勝者はシードされる。
他にも隊長に勝利した者、一人で全員を倒したもの等優れた人物がシードとなる。
よってアキもシード権を持ち、三回戦からの参戦となる。
実質予選が一回戦までとされにシードを持って三回戦に進んでいる時点で
両手で数えられる範疇に順位があるとされる。
その後の準決勝がその日のうちに行われ体調を万全にし後日決勝となる。
20年続く由緒有る大会で賞金目当てのハンターも参加したりする。
命の保障はされており、直接命に関わる怪我でなければほぼ治癒が約束されている。
キュア班の研究成果の見せ時でもあり、色々な意味で沢山の注目の集まる大会でもあった。
アキはその大会の中で予選を終え、その日の閉会まで大会を見ていた。
一応次に対戦する人達の戦いを見ておき、作戦を立てたかったからだ。
緊張のあまりどうなるかと思ったが……なんとか勝ちを収めることに成功した。
そしてその相手だったロザリアは何故かアキの身辺警護をしてくれていた。
何となく気まずいかなと思っていたがロザリアは全く気になっていなかったらしい。
気軽に段上の兵士の気合が足りないだのキレがないだのと指摘を話してくれていた。
それよりもさり気なく軍に誘ってくるのをかわすのが苦労した。
危うくお姉様方の世界に引き込まれる所だった。
友人も一緒に国王軍で働いていて張り合いがいがあるとか。
女性の戦場での地位向上をめざしているとか。
魅力的な話が一杯あった。それに国の為にも凄く貢献しているようだ。
それでもずっと断り続けた。
わたしには違う理由があってここに居るのだ。
そんな一日の疲れに溜息を付いて借りていた宿のベッドに倒れこむ。
「つかれた〜……」
小さく呟いてちょっとだけ嬉しさににやけた。
――勝った。勝ったのだ。あの強い人に。
(コレで認めてもらえるかな)
そう考えて――いいや、と首を振った。
あの人はその程度じゃ満足しない。
国一番。多分それなら……。それならわたしの言う事を少しぐらいは聞いてくれるはず。
自分の手を眺めながらあの人の半分が流れているのだと戦って感じた。
だったら尚更――……ダメだ……今日は全然ダメだった。
あの人ならあんな怪我をする事はなかった。技も使わなくて良かった。
遠く及ばない。
そもそもあの人に刃が及んだ事は無い。
今日も、唯の一撃もあの人を傷つける事は無かった。
……それで良かったとも思うが……やはり、不安要素だった。
“竜人”は基本的に多種族だ。
エルフでもドワーフでもオークでも神性第4位クラスに相当すれば“竜人”と呼ばれる。
ただ竜人同士が子を成せば必ずヒューマンに近い形で生まれる。
最も美しいとされるヒトの形を取るのだ。
故にアキは恵まれた存在だった。
若者の居ない辺境で育っていなければ誰もが彼女を求めただろう。
「はぁ……。早くお父さんとお仕事したいな……」
それに父親さえ――立ちはだからなければ……。
彼女にとって父親は男性の理想像だった。
包容力に威厳。そしてその優しさも強さも。
そういう人間になりたいとも思っていたし、そういう人に出会って恋をしたいナァ……
というのが漠然とした将来。
今だその人は現れず。
そもそも自分より強い人という定義が難しいし、竜人クラスの人間は少ない。
そんな中で彼女が求める理想は高すぎる気がするが――。
アキの容姿や性格からしても理想がそれぐらいあったとしても慢心ではないだろうとは思われる。
何にせよ思春期。戦ってはいるが世界にちょっとした下心とかもあったりするものだ。
空から男の子が降ってくるようなドラマチックな出会いとか。
それは冗談だけれど。
理想過ぎる父親像を除けば意外に守ってあげる事も好きだったりする。
守られがいのある人か守りがいのある人が良い。
つまり構って欲しいしちょっかいも出したい人恋しい時期なのだ。
そんな出会いをちょっとだけ期待しながら、父親と一緒に世界を回る。
そして竜人の仲間を集めて竜士団の再結成。
それが今のところ彼女の夢で、ただ一つやりたい事。
命がけで旅をするのだ。
その前に命がけで大会の優勝だって狙ってやると心に誓って置手紙を残して家を出たのだ。
明日は本戦。
期待と不安が入り混じるが大会を見ていたという宿のおばさんがエールと紅茶を一杯くれた。
暖かい落ち着くレモンティー。
それにホッとしてぐっすりと眠った。
そして寝すぎた。
「あ、あああっおくれてる! あっでも三回戦からだから……」
それでもわたわたと準備を整えて忘れ物が無いかをチェックする。
ココで装備を忘れるなんてありえない。
と言っても袋一つに纏まる程度の荷物しか持ってないのに忘れるものなど無いのだけれど。
ブレスレットに……ペンダント……?。
「アレ……っアレッ!?」
無い。ペンダントはベッドすぐ横の棚の上に置いておいたはずなのに……!
ベッドや棚の下や棚を引き出しを捜すが身あたらない。
「ペンダントっ何処〜っ!?」
今度こそ本当に焦ってペンダントを探す。
(……盗まれた!? そんなっ!)
時間も無い。ひとまず宿の小母さんに言って部屋を探してもらっておくことにして試合会場に走った。
(……っ凄く後ろ髪を引かれるけど……!)
そう思いながら何度か宿を振り返る。
(盗まれたとしてわたしが気付けないなんて……。
触れ合った人の中でわたしに気付かれずに部屋を動ける人なんてお父さんぐらいしか知らない……!
どうせならもうココで負けたっていい。早く探さないと……!!)
色々と思考を巡らせながら走る。
不安げな顔は彼女が泣いているようにも見えた。
「遅かったですね。寝坊ですか? 修行が足りないですよ」
走って会場に現れた彼女を迎えたのはロザリアだった。
昨日のように中で警備をする必要は無かったので外回りの警備中だった。
彼女的にアキには会っておきたかったので入り口付近で回っていたのだが。
殆どの選手はもうコロシアムに入って控え室に居る。
もしかして逃げたのかとそわそわしてしまったロザリアは安堵の息を吐いた。
会話の中から何となくのんびりとした人柄なのは分かっていたが、
そんなにも緊張感が無くて大丈夫なんだろうかと思った。
だがどうやらそうでは無いらし居事に気付いてアキに尋ねた。
「何かあったんですか……?」
「――っ、そ、その。ペンダント、失くしてしまって……。
ずっと探してたんですけど……っ無くて……はぁっ」
「――失くした? いつ?」
「昨日の夜、です。寝る前に外して棚の上に置いたんですけど……
一応、宿のおばさんに探してくれるように頼んだので……遅れてすみません」
「そうですか。そういえば大事そうにしていましたね。珍しい回復のアルマでしたか」
「はい。……それに……母の形見なので……」
「……そうだったんですか。この時期は盗難の事件も多いです。
警備隊で処理しきれなくなるぐらいで、騎士隊側にも仕事が回ってきていますし。
一応盗難の方で大会参加者から盗られたと思われるモノは警備隊で預かっています。
無いようなら一応そこへ行ってみてください」
「はい。分かりました……」
「そう気を落とさないで下さい。これから戦いですよ。まさか負けて探しに行こうとか考えてないでしょうね?」
「うっ」
びくっとアキが震える。意外と図星を突かれた。
ジト目で見られ蛇に睨まれたカエルのように縮こまる。
負けたロザリアからすれば迷惑千万な話だった。
「……よし。では私の隊から二人ほど行かせます。
安心してください。一人は優秀な法術使いです。過去見もできる」
「過去見?」
「ああ。過去見は一定空間の時間を遡ってその状況を見ることの出来る奴だ。
二人とも女性ですしね。ひとりは今の所警備が嫌だと言って練習側に回っていますが……。
まぁこんな時の為にいる人ですので。ちょっとは役立ってもらおうと思います。どの宿ですか?」
「いいんですかっありがとうございますっ七番の二本目の月猫亭ですっ」
「わかりまた。ふふ。貴女には期待しています。とりあえずカルナディアには勝って下さい」
「あっと……カルナディア様ですね第六の……」
紫煙のカルナディア。
煙草を吸う姿と薄紫の髪を合わせてそう呼ばれる。
聖銀のロザリアとは幼い頃からの親友仲で一緒に高めあってきた二人と言うのは有名な話だ。
尾ひれ背びれは色々ついているが田舎町育ちのアキも知って居るぐらい有名な話だった。
「そう。ソレだ。負けると酷いですよ?
ああ、あと私達は呼び捨ててくれて構わないです。竜人様に畏まられる程私達は偉くは無いですから」
「ロザリア様を!? 無茶ですよ! 私なんかそんな」
「竜人様に恐縮されると私も困るのですがね?」
「いいえっでもっその、色々私唯の一般人ですからっ」
「唯の一般人か。よく言いますね……まぁ。早く行った方がいいと思いますよ?」
彼女がそういったタイミングで試合が終わる歓声が聞こえた。
「ああっはいっすみませんっ失礼致しますっ」
「ああ。頑張ってきてください」
そう言って走り去るアキをロザリアは見送った。
どうも小動物だ。話せばしっかりとはしているものの保護欲が沸く。
それはそれで面白いか。そう彼女は括って自分の部下を呼びに行くことにした。
――ちなみに二人と言うのは自分とその法術使いの事。
その場は警備隊の方に任せてひとまず訓練所に向かった。
「三回戦第一試合! アキ・リーテライヌ!!」
声を張って審判が選手を紹介する。
そしてコロシアムが全員で叫ぶように沸いてアキは背中に冷や汗が流れるのを感じた。
だが応援してくれたロザリアの為にも負けるわけには行かないと自分を奮って彼女は段上に立った。
「対するは――ログ・バルスト!!!」
同じく歓声を浴びながら対峙したのは男性だった。
予選からトーナメントまで来られた女性はたったの二人。
分かるとおりアキとカルナディアだ。
組み合わせさえ良ければ三人は来れただろうか。
それに女性の出場者は圧倒的に少なかった。
ソレを考えればここに二人出場しているだけでも奇跡的だったのだが。
(ああ、早くしないと……)
彼女は焦っていた。
何と言っても大事な形見の一つだ。
何故身につけて眠らなかったのか。後悔が巡る。
売られてたらどうしようとか。買い戻せるかとか。あ、勝ったら買い戻せる額はあるよね。とか。
どんどん真剣に負けれなくなって来た。
修行不足なのは分かっているが盗まれるとは思ってなかったらしく真剣に落ち込んだ。
「それでは双方準備はよろしいですか!?」
審判の言葉にはっとして頷くアキ。
(余計な事は考えないようにロザリア様が手配してくれたんだから……大丈夫っ)
勝つことを念頭に頑張ればいいのだ。今はそれだけだと再び言い聞かせる。
「では! 試合始め!!!」
戦いの火蓋が斬って落とされる。
一刻も早く。その念が彼女を先手必勝と動かした。
しかも――最初から本当に手加減をする気は無かった。
「十字架剣<アウフェロクロス>!!!」
もう一つの母の形見――アウフェロクロス。
その名のとおり十字架をモチーフに作られた剣。
しかしその剣には鎖がついておりジャラジャラと金属的な音を立てた。
髪の毛が青く変色し、一気に空中へと跳躍する。
相手は何事かとアキを見上げた。
戦法的に飛び上がるなど不利以外の何でもない。
だが彼女にとっては違う。
その場所こそが彼女の一番有利な場所。
かつての――戦舞姫がそうだったように。
彼女は空中で舞い踊る。
アキは体を弓なりにしならせて剣を長く握った。
華奢さと大剣がアンバランス。それでもその美しさは目を引くものがあった。
「幾多の罪を赦し給え<ジャド・ジュレーヴ>!!!」
スガンッッ!! ゴッ!! ズドンッッ!! ガッッ!!
技の発動はすぐだった。
滞空時間を延ばすようにグルグルと回転しながら剣が戻るたびにその反動でまた空中へと上がる。
剣が打ち出され、相手へと向かう。
しかも空中から投げられる全ての剣が彼へと狙いを定めて真っ直ぐ飛んだ。
「は――?」
彼はその一言を発して――この大会を終えることとなった。
そして、アキ・リーテライヌの存在がこの大会で最高潮の存在となった。
本来ならば余興として楽しませるべきで、即決着は無い。
それほどアキは焦っていた。
技としては全部見せてしまった。やはり即決したのは最強の手札を最初から行使したことだ。
だがやはりソレよりも気になっていたのはペンダントだった。
試合を終えて怪我もなく体力も消費して無い彼女は落ち着かない様子で控え室に戻る。
当然、微妙な空気で気まずくなって外の空気を吸いに出ることにした。
朝失くしたのに気付いて今はもう昼前。
アキの試合を応援しにきてくれると言っていた宿の女将は
もうペンダントを見つけてくれただろうかと漠然と思っていた。
ロザリアも人を出していたが杞憂なら嬉しいと考えていた。
一応確認の為に入り口で警備していたロザリアに会いに行ってみたが彼女は居なかった。
きっと別の場所の警備に移ったのだろうとちょっと……いや、
かなり鬱になって戻ろうと控え室の方に振り返った所にロザリアが声をかけた。
「アキさん。来ていたんですね」
目立つ銀一色の身なりが優雅にこちらに歩いてくる。
男性にもみえる中性的な凛々しい顔立ちをしているロザリアは道行く人の目を引いてとても目立っていた。
特に女性には憧れるような目で見られている。
そこに駆け寄るアキ。
「ロザリア様っ! あの」
「ああ。今行って来た所です。相方は眠いからと言って帰ってしまいましたが」
「えっあの……もしかしてロザリア様が……?」
「ああ。私の隊は祭りの間警備隊と仕事が同じですからね」
「わ……ああっのっすみませんっほんとうに何と言えばいいか……っ」
「いえ。それより報告を。行って聞いてみた所、貴女の部屋には無かった。
それでスケルア……過去見の術士に見てもらったんですが」
「ど、どうでしたか?」
「どうやら夜の間に持っていかれたらしいです」
「やっぱり……っど、どうしましょうっどんな人でしたか」
「ああ………………いや、言えません」
「ええっ何故ですか!?」
「しかし、もう解決しました。貴女のペンダントの在り処は分かったんです」
「えっ!? どこですか!?」
「――この大会の優勝商品の一つです」
「――な、なんで……?」
――負けなくて良かった。
心底彼女はそう思った。それと同時に絶望感が襲ってくる。
「なんで…………そんなことに……?」
「…………信頼の置ける人物からの言伝です。優勝すればそれが手に入ると情報がありました。
スケルアとの行動証言とも一致します。要人に関しては言えないんです」
「そんな! じゃぁっわたしが勝たなきゃ……」
「他の人の手に渡ると思われます。
あのアルマは珍しく治癒の物ですよね? 欲しがる人は多いでしょうし。
昨日も医療班が興味があると貴女を見ていました」
「――っ」
「勝てば手元に戻ってきます……そう伝言を預かりました。アキへ、と」
申し訳無さそうに語るロザリア。
彼女には罪は無い。
そうたった今探してくれた彼女には感謝の労いの言葉も駆けられないのか。
失くした、盗られた自身が悪いのだと自らを叱責する。
「……すみません。わたし、一杯一杯で……っありがとう御座いましたっ」
「いいや。構いません。それよりも負けられることのほうが私には堪える」
「はうっや、やっぱり勝たないと……ああ、勝たないとペンダントもっ」
「そうですね……頑張って欲しい。私も応援しています」
「はい。あ。今の所は負けていませんよ?」
「瞬殺だったそうですね。相手も重症で虫の息だったとか。ある意味さすがです」
「そ、そうだったんですか!? 謝ってきます! 何処にいるんでしょうかその人!?」
「……それは必要ない。傷に塩を塗りこんでも誰も喜びませんよ?」
「えっ……」
「仮にも大会出場者ですからね。
では私はこれで失礼いたします。御武運を」
そう言うとロザリアはアキの肩を叩いて自分の仕事に戻っていった。
アキは暫くそこに立って考え込んだがすぐに思い至って行くのを止めた。
大会参加者。野望や腕試しで何百人もの頂点を行く人間。
本戦に進めばそれだけで褒め称えられる。
そんな人間に各の違いを見せつけ――プライドを打ち砕いた。
謝りに行けば尚更傷つく。
“そんな事をするつもりはなかった”その言葉は“お前が弱いのだ”と同じ意味。
そんな事にするつもりはなかったのなら、どうするつもりだったのか。
手加減して戦うつもりだったと言うだろうか?
相手の全力に及ばない自分の無力を悔やむ最中は何を言っても侮辱。
ならば敗者に勝者は言葉を向けるべきではない。
良くやったなど、慰めの言葉は意味を成さない。
最後にはあんな人間離れをした奴と戦った自分の運が悪いと諦めて飲み込む。
それまでは悔しさを噛締めて――負けたく無かったと呟くのだ。
それをバネに進める人間も居れば落ちる人間も居る。
どちらでも構いはしない。
ただ、強くなれるのはその前者だけ。
たったそれだけの真実を分かっていれば。
その負けだって価値あるものに変わる。
アキは進む。
今のアキには必要無い勝負と言う価値は――誰かの手によってその方向を変えられた。
そして理不尽にも勝たなくてはいけなくなった彼女は控え室の端で考えていた。
誰がこんな風にしたのか。
確かにいける所までは頑張るつもりだったが優勝までは考えては居なかった。
それが今は必ず優勝しなくてはいけない理由が出来てしまった。
本格的に負けられない。
(そもそも誰なんだろう……ホント……)
アキは溜息を付いて眼を閉じた。
試合は目の前で行われているがあまり見る気にはならなかった。
だから眼を閉じて黙考する。
自分を知る人物。
自分から奪う事が出来る人物。
彼女が要人と言い自らを謙る人物。
(アキへ、と……?)
ロザリアの伝言の最後。
(あ。)
(ああああああああああ!!)
思い当たった瞬間全身に雷が走ったみたいに震えた。
なんでそんな簡単な事に気づかなかったのか。
そう椅子の上に座って悶えた。
あの人は何で自分を遠ざけるのだと叫んでしまいたい。
それに形見のペンダントを一番大事にしてたの知っててやったに違いない。
(もぅ――……お父さんっ! なんて事を……!!)
戦王<トラヴクラハ>という通り名がある。
過去の名となって久しいこの名は今でもどの国にでもある英雄物語になっていた。
竜人の戦争屋一団を率いて戦場の英雄、もしくは死神とされた一団。
戦争に関わり戦を終焉させる為の一団で神がかった強さで有名だった。
トラヴクラハ自らが戦争を行っている国の王に話を聞き、自らの判断で国に味方する。
賄賂等は一切受け取らず、戦争が終わり次第の報酬を受け取り消える集団だった。
20人程度の人数ではあったが、その全員が“竜人”だった。
竜士団を名乗り世界の戦争を渡り歩いた奇跡の集団。
人々の憧れであり、この世界の象徴でもあった。
その集団が突然消えたのにはいろいろな説がある。
ただその殆どが人々の妄想であり真実ではない。
アキは事実を知り、消えたことを嘆く者である。
彼女はその身に確かに竜士団の誇りと意思を受け継ぎ育ってきた竜人。
彼女が望んでいる事は竜士団の再建だった。
父親と旅をし、世界中の竜人を集めて竜士団を作る事。
いつまでもあそこで守られているわけにも行かない。
だからここで――強さを証明しなくてはいけないのだ。
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