第128話『竜士団伝説』


 王女様に一人にして欲しいと言われ、わたしは部屋の外に立つ事になった。
 コウキさんたちは部屋で会議中。
 混ざりたいけど、今回はあんまり役立てそうもないなぁなんて。

 魔女……かぁ。
 ヴァンさんもそうだって言ってたけど……。
 たぶん、一般的に知られてる魔女って言うのは御伽噺のものだと思う。
 お父さんから一通りの歴史は習ったけど魔女狩りっていうのにはそこまで詳しくはない。
 ……クロスセラス辺りに行けば分かるかなぁ。
 多分、魔女狩りのあったっていう国。
 クロスセラス聖神国といってとても豊かで穏やかな国だという。
 有名なのは教皇様と直下の聖騎士団でなんでも今は15で騎士団入りした天才なんて人も居るらしい。
 ……ここら辺の話はお父さんじゃなてノヴァさんとカフェでお話してた中にあったんだけど。
 わたし達は長く歩いているようでまだ全然世界を知らない。
 もっとみんなで色んなところに行きたいな。


 しばらくしてみんなが部屋から出てきた。
 全員で出てくるなんて何かあったんだろうか。
「アキ、ご苦労様です。王女様は?」
「はい、一人にして欲しいと……。
 でも中にルーちゃんを残してこっそり見てもらってます」

 ヴァンさんは一度扉の方へと視線をやって真剣な目をしてわたしを振り返る。
「すみません。私達は解決に向けてやらねばならぬことが出来ました。
 あまり時間はかけないつもりです。
 貴女には此処を守る事をお願いしたい」
「あ、はい。わかりました」
「申し訳ありません、私の役目だったのですが……」
 ロザリアさんが申し訳無さそうにわたしに小さく頭を下げた。
「いえっロザリアさんは今回何か重大な役があるんでしょう?
 わたしは、その自分で言うのもアレですけど……
 力技要員なのでわたしが役に立つ番じゃなくてよかったです」
「あはは……そう言っていただけると助かります」
 
 そこでコウキさんがポンと手を叩く。
「それもそうだよね」
「あははっコウキさんもですよ?」
 わたしは笑ってその頬っぺたに爪を刺す。
 もちろんその不名誉はわたしだけで持ち歩くものじゃないので逃げようとするコウキさんの足は掴んでおく。
「いてて……知ってるよぅ。
 ファーナ、アキにいじめられるー」
「自業自得です。さぁ行きましょう皆さん。
 留守をお願いしますねアキ」
「うん。ファーナも気をつけて」
 わたしの言葉に微笑んで頷くとファーナとロザリアさんは歩き出す。
「ちぇ〜。んじゃ行って来るよん」
 そう言ってコウキさんも後に続いた。

 ヴァンさんも行くのだろうと思い扉側に寄って道を譲った。
 だけどヴァンさんはわたしの前に立って一度立ち止まる。
「アキ。一つ重要な話があります」
「はい?」
 ヴァンさんは少し声を小さくして神妙な顔でわたしに言う。
「……王女は今激しい混乱の状態にあります。
 精神の面であまり気丈な方ではないようです。
 ですから……早まった行動に走らないようにご注意を」
「早まった……」
 なんとなく、意味は分かった。
 でも余り耳に入れておきたくない言葉。
「ええ。端的に言えば自害の可能性があります。
 こんな時にこんな事を言うのも酷ですが……。
 彼女には残酷な事件ばかりですから……。
 良ければ声をかけて話しをしてみてください。
 恐らくロザリアやリージェ様より貴女の方が適任です。
 申し訳ありませんがよろしくお願いします」
「はい……わかりましたっ」
 
「ヴァンー?」
 コウキさんが手を振ってヴァンさんを呼んでる。
「すみません、今行きます。
 ではお願いしますアキさん」
 それだけ口も早く言うとペコリと小さく頭を下げて全員を追って歩き出す。
 ――それにしても随分と物騒な事態になったなぁ。
 酷くならないうちに早く解決できる事を祈るばかりだ。


 ……とはいえ忠告されたばかりで凄く中が気になってきた。
 こっそり扉を開けてみるが王女はベッドで蹲って泣いているようだった。
 気づかれないように扉を閉めて寄りかかる。






 ――少し、長いなぁと感じる時間を廊下で独り佇んで。
 先ほど見たときには部屋では相変わらず王女は泣き止んでベッドに座っていた。
 そうやって覗き見ないといけないって言うのもよくないんだけど……。
 早くコウキさんたち帰って来ないかなぁと溜息を吐いた。

 丁度その時だ。
 内側から扉が開かれ、王女が姿を現した。

「――大丈夫ですか?」
「ええ……ご迷惑をおかけします。
 他の皆さんは……?」
「何か解決の糸口を見つけたみたいでみんなで城を出ました。
 すぐに戻ると言っていましたけど」
「そうですか……。
 皆さんが頑張ってくれているのに私だけ臥せってしまって申し訳ありませんね……」
「いえ……わたしたちができる事はこれぐらいですから」
 わたしの言葉に少しだけ辛そうに笑って、視線を窓の外へとやった。
「……少し外の空気が吸いたいですわ」
 そう言って歩き出した彼女の後について自分も歩き出す。


 彼女について歩くと、広いテラスに辿り着いた。
 テラスは広くて舞踏会なんかも開けそうだ。
 そのテラスを先まで進むと、王女は一度わたしを振り返る。

「ここからは国が一望できます。
 台地ですが平原ですからここで全体が見渡せますわ」

 曇天が残念ではあるけれど、吹き抜ける風も心地良く、
 きっと動く世界に戻ったのなら華やかに賑わう街の姿も見れたのだろう。

 呪われた城から見下ろす世界は酷く寂しくて、
 そこに佇む王女も今にも消えてしまいそうな儚い存在に思える。

「――……わからないのです」
「はい……?」

 不意に、王女が景色を見たまま喋った。
 それはわたしに対する問いかけなのか良くわからなかったけれど。
「わたしは、今……。
 王として、国の為に平和を祈る事でしょうか。
 女として、愛しい人の死を悼むべきでしょうか。
 私とて、できる事なら貴方達のように国の為に何かやりたいのです。
 私とて、人ですから愛しい人の死は辛いのです。
 ……ですが、私は力も無く、知識も無く……この大事な時に無力……
 涙は出ますが……そういう時ではないと、心が言うのです」

 王女は迷う。
 選択肢は少ないがきっと何かを探すその心もある。
 どういう形であるべきなのかを見失って――。

 急に一人になった。
 民衆も使用人も家族も恋人もいっぺんに消えて。
 不安で仕方が無いんだろう。


「泣いちゃえばいいと思います」


「……でも……」


「今は王女じゃないですから。
 この国は動いてませんし、この城に人は居ませんし。
 わたしは従者じゃないですし。皆は外に出てますし」

 わたしより少し小さいぐらいのその人を少し顔が見えないように抱き寄せる。

「女の子なんですから。泣いちゃえばいいです。
 こうすればわたしにも見えませんから」

 気位の高い人は涙を見せる事を嫌う。彼女もそうだと思う。
 だからわたしもそれを無理やり見ようとは思わない。

 友達と一緒に泣きながら此処まで来た。
 支えてくれる人の大切さは良くわかっているつもりだ。

「胸を貸す代わりといっては何ですが
 少し、わたしの自慢話聞いててください」
 それを提案したのはきっと王女は泣かないだろうと思ったから。
 わたしは一方的に喋っていればわたしを気にしなくてもよくなる。
 そう思って。
 わたしの言葉に王女が小さく頷く。
「わたしには、仲のいい友人が居ます」
 空を見上げて息を吐く。
「とても元気のいい子と、とても優しい子です。
 わたしは自分の育った村の片隅でただ変わる事のない日々に流されてるだけでした。
 勇気が無くてそこから出る事が出来なかったんです……」
 お父さんに置いて行かれて。
 その世界には必要ないのだと言われたみたいで。
 空を見上げた格好のままわたしは眼を閉じてその日々を振り返る。
「ある日その友達が旅に出るといいました。
 その友達のお陰で勇気が出たわたしも旅に出ようと思いました。
 でも――恐かったんです。その人たちについて行くときっと足を引っ張ってしまうから」
 だから拒んで、わたしは一人で旅に出ようと思った。
「でも、その人たちはわたしを待ってくれていました。
 私の力が必要だって、手を伸ばしてくれました」
 その時から。
 わたしの世界は、光を帯びた――。

「私の自慢の友達は、どんな人にも優しい手を差し出します。
 時々それで痛い目を見ることもあるんですけど。
 それでも、止めないんです。
 強くは無かったんです。
 強くなっていったんです。
 段々と今の自分じゃ足りないから、剣を振って走って笑って――」

 腕を失くしても、その強さが変わる事はなかった。
 敵を見てもいつも談笑を始める。
 そんな人、滅多に居ないと思う。

「結局、その積み重ねの連鎖で、全部なんとかしちゃうんです。
 ふふっ凄い変な人ですよね」


 わたしは王女を放してその目を見た。
 案外わたしの自慢話は無視をされていないようで彼女もゆっくりとわたしを見た。
「泣いてる人を放っておけないとかそういう英雄っぽい人じゃないんです。
 手の届く範囲、走って届く範囲、聞いて間に合う範囲。
 それだけではあるんです。
 ただ見えてるよりずっと根が真面目で理想主義者なんです。
 でも、絶対に何とかしようと走ってくれます。
 そんなあの人だからわたしは信じる事ができます。

 王女様は今、一番して欲しい事って何ですか?」

 わたしが問う。
 彼女が一番して欲しい事。
 その為にわたしの友達は走っている。
 

「……そんなことは決まっています」
「それは?」


「――この国の呪いを解除することです。
 もし最後に私の命を投じる事になっても。
 この国だけは私が失うわけには行かないものです――!」


 彼女は――王女だった。
 目の端に涙の跡は見えるけど、その意志はわたしの友人が湛える光に似ていた。

 願いがあるのなら。
 そこに強い意志があるのなら。
 それを叶えてくれる人だって居る。

 わたしはその友人に代わって、悪戯っぽい満面の笑みを返す。

 そして、その大きな街を見下ろせる空を指差した。



 直後に、パシィッっと大きな音が鳴って、空に亀裂が走った。
 それは国全体を覆うように亀裂を増やして行く。
「光――?」
 王女は目を見開いてその光を見上げる。
「きっと、コウキさん達ですね」
 確証は無いけれど。
 自分ですら意味不明な自信はある。

「――この国は、救われるのですか……?」
「ええ、そうみたいですよ」
「……ああ、今、素直に泣いておけばよかった……」
「もう少しぐらいは時間がありそうですよ?」
 視線を落として、涙を拭く。

「いいえ……私は、王女ですから」



 パキィィィ――!!

 雲が割れ、光が漏れる。
 暗雲はきり割られたように散って、青空が広がった。
 魔法のようなキラキラとした光は空にとけて――穏やかな風が吹いた。
 空に手を伸ばしてキラキラとした光に触れる。


 澱んだ空気だったそこに、きついほどの日差しが降る。
 日を浴びた王女は深く呼吸をして混乱だろうと思われる賑わいを見せ始めた街を見下ろした。
 その目は、迷った女性ではなく、王女としてのものだった。



「私は城下へ降ります。
 アキさん、申し訳ありませんが兵が居ない状態です。
 付き添いを御願いします」
「はいっ」
 決して走らず足早に歩く王女を追いかける。

 暖かい日差しを背にまた歩き出せる。
 わたしの友達は、誰かに幸せや光を与える事ができる――わたしの誇れる友達。





















「我らの英雄、アキ竜士団に盛大な拍手を!」
『ワアアアアアアアアアーーーーーーー!!!』

 聞こえますかお父さんお母さん。
 この惨状。
 いや、惨状ではないんですが、わたしは嵌められたようです。

 賛美を受けているのがわたしだったり、
 胴上げされているのがわたしだったり、
 握手を求められ続けるのがわたしだったり、
 お酒を掛けられてるのがわたしだったり、

 ……散々です。

 民衆に今回の騒動とその解決者を説明しなくてはいけなくて、
 帰ってきたコウキさんを、と思ったんですが従者として立っていたわたしを引っ張り挙げて――

「俺達、アキ竜士団がすべてを解決した!!
 ついでに敵との激戦で城もちょっと壊した!! ごめんなさい!!
 そして彼女が団長であるアキ・リーテライヌだっっ!」

 竜士団。
 その言葉を使ったせいだろうか。
 そのうえ派手に壊れた城まで見せられたあの人たちは信じざるを得なかったのだろう。
 いや、わたしが城を壊したことに間違いはないんですけど……。
 そして王女が肯定する事によって、大きく民衆が湧いた。
 王女様には、今後この英雄伝はずっと語り継がれるだろうと。

 ――わたしの予期しない始まり方だった。
 笑顔でわたしを見るコウキさん。
 申し訳無さそうに苦笑いするファーナ。
 満足げに微笑むヴァンさん。
 ……たぶん全員同意の上であることは明らかである。

 一躍わたし達はサシャータの英雄である。
 呪われて失われた3日。
 その間に遅れたものを取り戻すために人々は忙しなく動き出した。





*コウキ


 祝杯を開いてくれた人たちからもみくしゃにされて、俺達は任務を終える事になった。
 今日はここに泊めてもらえる事になったので城の客間を借りている。
 一人一部屋ずつと大きな割り当て。
 まぁ人も居なくなったから大丈夫だと王女様は苦笑いしていたけど。

 お城の人は街の警備担当だった騎士や兵士が緊急に戻ってきて配置された。
 キュア班からも何人か術士として借り出されている。
 兵士は元々街の警備が殆どだったため人数的にはあまり減った訳ではないらしい。
 ただ使用人と家臣は殆ど居なくなってしまったため城内はてんてこ舞いだ。
 それでももう俺達の介入できるところじゃないので王女には挨拶だけしてある。

 会議部屋に皆が集まって寝る前に明日の予定の確認を始めた。
 といっても俺らは明日は帰って報告だけの予定ではある。
「明日の朝に例のアレでグラネダに帰還します。
 私とロザリアは報告書を作らねばなりませんが、それも明日の午後の作業です」
 ヴァンがなんとなくアバウトなのは酔いが残ってるからだろうか。
 例のアレはビッグネーム、ジャンピングスターのことだ。
 衝撃緩衝剤の俺の唯一の活躍場所である。
「しかし、まさか一日足らずで任務達成とは……恐れ入ります」
 ロザリアさんが感嘆の息を漏らす。
 さっき祝杯で物凄い勢いでお酒飲んでたんだけど……大丈夫なんだ……凄いな。
「ホントだよ。流石アキっ」
「勝手に祭り上げたくせに〜っ」
 ぱこぱこと叩かれるが悪い気はしないので笑い飛ばす。

「ははっ!
 俺思うんだっ。
 ヴァンが居なきゃ俺は町ごとぶっ飛ばしてた。
 ロザリアさんが居なきゃやっぱりぶっ飛ばしてた。
 ファーナが居なきゃ俺はシキガミじゃなかった。
 アキが居なきゃ王女様が持たなかった。
 ルーが居なきゃロザリアさんが守れなかった!」

 誰か一人欠けたら。
 この結末は無かった。

「ありがとう!
 王女様じゃないけどさっ!
 やっぱ全部やってのけると爽快だっ」

 一番最高の結果じゃないか。
 暗い思案しかできなかったあのときから。

「ええ、イチガミ隊の功績です」
 ヴァンが頷く。
「え、俺リーダーっぽいこと全然やってないぞ?
 まぁいいか! イチガミ隊さいこうだったっ!」
 テンションの高さで俺の嬉しさって言うのを悟って欲しい。
 祝杯の祭りテンションも結構引きずってるけど。

「でも、なんで竜士団で広めたんですか?」
「ん? ああ、アキ竜士団は絶賛団員募集中って宣伝しまくっといたよ」
「変な宣伝しないでくださいっ!?」
「イチガミ隊はまぁ一時的だし。
 アキ竜士団で残しておけば後で役に立つじゃん?」
 救国の英雄なら、どこでだって通用するようになるかなぁなんて。
 俺やファーナにひっついても仕方ないものだという話でアキを祭り上げる事にしたのだ。
「でも、ロザリアさんだって居ますしグラネダの騎士団っていう話でも……」
「私は今イチガミ隊の軍門ですから」
 上機嫌にニヤニヤとアキを見るロザリアさん。
 やっぱりちょっとは酔ってるんだな。安心した。
 ロザリアさんにも了解は得ている。貴方の手柄を貴方がどう使おうと構わないのだと。
「じゃぁ……やっぱりいつか皆にお返しできるぐらい頑張らないとっですね〜」
「期待してるっ
 て、ファーナ大丈夫か?」
「大丈夫です、よ?」
 ファーナも笑ってはいるが眠そうにたまに船を漕いでる。
 うん。超眠そうだ。
 かくいう俺も結構眠いといえば眠いんだけど。

「今日は遅くまでご苦労様でした。
 明日の朝の出発だけ覚えていただければ構いません。
 では解散です」

 ヴァンがそういうと皆が席を立つ。
 その中で一人だけ、立ち上がらずに俯くファーナに寄った。
「ファーナ、大丈夫?」
「あ、はい……朝……」
 目が虚ろだ……。
 おーい、と目前で手を振ってみる。
 足の上にルーが乗っかって爆睡してる。
 あー。これのせいで暖かいから眠いんだな。
「うん。朝出発だから。今日はもう寝ないとな。歩ける?」
「だいじょ、ぶ……です…………」
 そう言って完全に目を閉じてしまった。
「……大丈夫じゃないじゃん」
 強がりさんだよなーファーナは。
 だから無理させないように俺がもっと頑張らないと、ってことなんだけど。
 ルーも居るしどうしようかな。
 お姫様だけにお姫様抱っこ?
 はは。俺今までされる側だったからなぁ上手くできるかどうか……って自分で自虐しても悲しいだけだよね。
 ルーはこの際落ちたらゴメンってことで。
 椅子を少し引いて素早くファーナを持ち上げる。
 意外に、すんなりだった。
 てかファーナは軽い。軽すぎる。ちゃんと食べてんの?
 いや、まぁ食べさせているから大丈夫だと思うけど……。


 初めて、会った日に。
 初めてカードを使ったとき。
 そういえば同じ格好で。

 何も出来なかったけど。
 俺は今何を成せる様になったんだろう。


 ファーナを抱えて歩く道中、

「あ、ファーナ寝ちゃってたんですね。
 コウキさん襲っちゃダメですよ?」
「襲いませんー」

「リージェ様はお疲れだったようですね。
 シキガミ様、くれぐれも襲わないように」
「襲わないよぅ!」

「リージェ様は酷くお疲れのようですね。
 コウキ、襲っても起こさないように」
「襲わないよっ! てかヴァン!?」
「しっ……起きてしまいますよ?」

 もう……なんなんだ皆して。
 女性陣は目が恐かったし。




 ファーナをベッドに寝かしつけて、ルーを横に避けてから布団をかぶせる。
 お酒が入ってるせいだろうか少し寝苦しそうだ。
 だから絶妙なベッドセッティングをしてファーナの部屋を出る。
 俺も寝るかぁっと大きく伸びをした。
 流石に今日の密度を話そうとしたら口から蟠り的な熱い何かがモロっと出てくる。

 でも妙に懐かしい気分になるのは――あの人に似た人に合ってしまったせいだろうか。
 ――姉ちゃん。に、似たオリバーさん。
 ……今のところあまり会いたい人ではないけど。
 あったら会ったでまた話してみたい事があるし。
 ん〜と唸りながらストレッチでパキポキと背中を鳴らす。
 色々在りすぎた。濃い。
 ぶっちゃけ今の俺に出来る最善はさ。
 ――今日はおやすみなさいだなっ。

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