第214話『神子の奮闘記』

 鍛えてくれと頼んだは良いが、正直に言うと彼は付け焼刃でどうにかなるほど弱くない。
 コウキが強いのは要は経験値の高さだ。普通の兵士よりも実際に命のやり取りの数は多いし、その中で鍛えた瞬発力がギリギリで彼を生かし続けていた。
 ただ剣聖にたいしてはそれすらギリギリ彼を生かすに至らなかった。
 寄って、死を超えた存在に対して最も強い切り札を持つのが――覇道。
 黄泉への道ではなく、生への道を切り開く力として彼女はそれを使った。
 彼女にとって死は不都合ではない。だから彼女は死んでも構わないと言い捨てる事ができる。

 完全な敗北である。彼女が何故剣聖を連れてこれたのかは分からないが、回避不可能な勝負からの鮮やかなシキガミ奪取。
 見ていることしか出来なかった自分が情けなくて泣けてくる。

 不甲斐無いと思うのだけれど、彼を想わずには居られなくて。
 情けないとは思うのだれど、無意識に彼を求めてしまう。

 情緒不安定な自分の戒めとして、ひたすらに出来る事をやり続ける。

「一先ずは単純な話、取り返せばいいようで良かったですね」
 ヴァンツェの言葉に頷いた。
 まずアキに稽古をつけてもらうとしても、コウキ奪還の手段を多くしておくに越した事はないとヴァンツェの部屋を訪れた。
「でもヴァンさんが魔女を攻撃しなかったのが意外でしたね」
 そのまま戦いにかかるのは割といつもの事だ。外道に対しては容赦の無い彼が
「そうですね。コウキを盾にされると危ないと思ったのですが、一瞬敵なら別に良いかなと思ったのですが踏みとどまりましたね」
 はぁ、っと両手を上げてため息を吐いて見せた。
「ギリギリのラインだったんですね……」
 アキがやっぱりですか、と言わんばかりに苦笑する。
「そうですね。
 そもそも自分より神性低い人にしか効かないと言っていたのに効いているあたりが気になります。
 まぁ、魔女の言う事を言うがままに信じる方が阿呆なのでしょうけれど。
 自分の能力についてペラペラと本当の事を喋るとは思えませんしこちらのミスですか」
「では何故今までコウキを取って行かなかったのですか?」
 ヴァンツェはスッと顎に手を当てて少し唸った。
「寝ている時の無意識、かつキスをすると効力が上がるというのも十分考えられます。
 死亡という条件で神性位に干渉されなくなったのかもしれません。
 いずれにせよずるい隠し事をしているのは間違いないでしょうね。
 本当の事を言いながら大事な事を言わないが一番酷いです。
 今回はリージェ様にも非がありますが、結局は分かっていてやった魔女が悪いです」
 ヴァンツェの言葉にアキが首を傾げた。
「ファーナに、何か駄目なところあったんですか?」
「そうですね。理不尽を言えば貴女が治すべきだった。
 貴女個人の力ではどうにもならなかったとして。
 何の為にそのカードがコウキと繋がっていたのですか。
 幾多の危機を救った運命無視<フォーチュン・キラー>だって存在します。ここはまぎれもなく試練外ではないですか。
 配慮が足りません。
 力があっても使えないなら宝の持ち腐れではありませんか」
 そうきつめの言葉でヴァンツェに言われて、久しぶりに怒られた事で胸の奥にモヤモヤとしたものが溜まっていく。自分が悪い事は分かっていても、「だって」や「でも」といった言い訳が溢れそうになる。

「はい……反省しています……わたくしは、誰かに頼り過ぎていました。コウキが出来ないならわたくしが運命無視の判断はできました。
 いつも、コウキや、アキや、ヴァンツェが傍に居てくれて、助けようとしてくれて。
 ……皆にやってもらった事に比べて、わたくしが返した物が小さすぎる……。
 身体能力も技術も力も知識も何もかもが足りません。
 守られて泣くしか出来ないこの身を、後悔する事しかわたくしにはできません……」
 こうやって反省をするだけで心が折れそうである。
 でも、と言葉を折り返して顔を上げる。言い訳をするためではない。
「進まなくてはいけません。
 コウキを取り返したいです。
 わたくしに出来る事があるなら、なんでもやります。
 お願いです、ヴァンツェ、アキ。
 わたくしに力を貸して下さい。
 今わたくしの何を賭しても、コウキだけは取り返さなくてはいけません」
 自分の元に戻って貰わねば困る。今此処に居ないだけで本当に物足りないと感じる。出来る事に制限ができた。コウキという存在の大きさを感じる。
 散々自分のものだと豪語しておいて易々と取られるなんて悔しいことこの上ないに決まっている。例え他のシキガミを取れると知ってもわたくしのシキガミは彼だけであるし、彼以外に頼るつもりは無い。

 ヴァンツェがそんな此方を見てフッと微笑んで、言う。
「では、僭越ながら私に作戦があります」
「聞かせて下さい」
 どんな事でもやってやろうという気概はあった。
「はい。最もショック療法ですけれど」
 そういって指を二つ立てて大真面目な表情で一度頷いた。

「二人で目覚めのキスなど如何でしょう」

『はい!?』
 思わずアキと目を合わせたり、ヴァンツェの真面目な顔を見たりと忙しい事になった。アキも同じで少し耳を赤く染めて、ヴァンツェに抗議した。
「それ真面目に言ってるんですか!?」
 彼女が少し大声で言ってもヴァンツェは真面目に頷くだけだった。
「ええ。元々、キスは魅了の効果の高い行為です。
 顔が近付き吐息が掛る距離にで、唇が触れ合う事は好感のある人間にしか出来ません。
 刺激を与えて思い出させるなら、魔女がやったようなキスが効果的です」
 分析するように言うけれど、思い出せるのは不快なまでに生々しい蘇生のキスのシーンである。
「え、でぃーぷな方ですか?」
 思わず聞き返したが已然大真面目に彼は頷く。
「だ、だって会う機会って、舞台の上しかないんですよ?」
 街中の何処にいるか見当もつかない。今日剣聖に勝った赤服の男はすぐに見つかりそうだけれど、見つけたとして魔女と一緒でないわけがない。彼女が一緒だとどうにも言い負かすことは出来ない。それにコウキの気質上、近くに守るべき人が居る場合は気を張って警戒されてしまう。
「そうですね。魔女も舞台の上でしたよ」
「魔女が、じゃないんですよ! わたし達が!?」
「はい」
 満面の笑みに、何故か面白そうですからという意図を汲み取ってしまったのは何故だろうか。しかし真面目に言っているというのは変わらないようだ。恥ずかしいという言い分はどうやら彼には通らないようである。

「わ、わたくしがやりますっ!」

 普段ならば、気質上そういうのは受け付けない。
 自分がそう言ったことに自分で驚いて少し恥ずかしくなった。頬が熱いのは気のせいにしたい。

「こ、コウキの為に、仕方なくっですよっ!
 今更何を言われても引く訳に行きませんっ」

 言い切ってしまった。本当に引くわけに行かなくなった所で恥ずかしさに現界が訪れる。
「リージェ様ならばそう言ってくれると思っていました」
 ヴァンツェがそう言ってポンポンと頭を撫でた。俯いてその行為に甘んじて羞恥を紛らわせるけれど、結果的にやる事は変わっていない。

「き、気合いが凄いね。うーん、わたしもですか?」
 アキが自分を指差して首を傾げる。
「はい。一番思い入れの深いお二方ですし」
 彼は平然と頷いた。
 自分で戻らなかったら惨めだなぁ……と思うと少し心苦しい。
 少しもにょもにょと口ごもったがアキが何かを思いついたようにヴァンツェを見る。
「ヴァンさんだってそうじゃないですか」
 確かにそれもそうだけれど、それを求めるのは……。いや、むしろ全員がやる方が確立は高くなるのか、と脳内で結論が出る。
「それはそうかもしれませんが、私は友人というよりは先生的な扱いですからね。
 それに男同士は酷です。どうしてもと言うならその時は私の責任で平和的解決を行います」
 平和的解決、と言う言葉がやたらと強調されたが表情からは全く平和的な解決をする気はなさそうである。
「そもそもそんなので治るんですかね?」
 口元を押さえてアキがヴァンツェに聞く。
「勿論です。治らなければ平和的解決です」
「意外と作戦薄かったですね!?」
 アキの驚きに困ったように笑うとヴァンツェは魅了についてを説明する。
「まぁ、魅了の基本は魅了返しですからね。その術を放置しておくと、いずれ本物の意志になると言いますし。
 人の順応能力“まぁいいか”という呪文は時間が経てば経つほど強いものです。
 より早い段階でその誤解を解くことが必須です。
 記憶を消す、と言うのは難しいと思います。ただ必ず記憶の元はあるはずです。
 貴方達が駄目だった場合、城で少しウィンドでも攫って来ようかと思います」
 ヴァンツェが顎に手を当てて片目を閉じる。最終策とはそういうものだ。
「それ討伐依頼ですよね……」
 アキがため息をつく。どう考えてもいい方向に流れる話ではない。それをさせる事は全力で阻止しなくてはいけない。
「もう良い事なのか悪い事なのかただの桃色事項なのか良く分からなくなってきました……」
「おや? これは人口呼吸に相当するものだと思うのですが」
 ニヤニヤと意味ありげに見られて、また顔が沸騰してくる。
「さっきキスって言ったじゃないですかっ!」
「ははは。まぁどう見ても、コウキが一番好んでるのはお二人です。
 嫌でなければ眠り王子を目覚めさせるのに協力して下さい。
 私としてもコウキに此処で居なくなられるのは寂しいですから」
 そうヴァンツェは言って、そうだと手を打った。
 そして私達二人を見るとにっこり笑う。
「あ、別に刺激を与える事に制限は無いので何処までやるかはお好きに」
 お好きにとは、どういうことなのだろうか。
 段上で出来ること、しかしそれは刺激的でなくてはならない。
 キス以上……? キス以上!? 段上で!?
 しかしコウキの為に耐えるべき羞恥も考慮しなくては……というかそれ以上って何になるんですか?
 向こうが仕掛けてこない以上此方がやるしかないという事も考えると――わたくしが――!?
「ああっファーナが真っ赤になってる!? あつっ!?」
「これは“恥じらい熱”ですね」
「知恵熱みたいな感じですね! というか熱い! ファーナ熱いよ!? 押さえて〜っ!」
 アキに言われてハッとすると此方を見ながら氷の壁を張ってニヤニヤとするヴァンツェと部屋の端まで寄って熱がるアキが居た。
「はぁ……はぁ……危ない所でした」
「わたしがね!?」

 ヴァンツェからは以上と言うことで、今日は寝なさいと言われ部屋に戻ることになった。部屋の前で自分達が戻るのを見送ってくれる辺りがとてもヴァンツェらしくて紳士的だと思う。
「それじゃあお休みなさい二人とも」
「はい、お休みなさいアキ」
「お休みなさい」
 今日は此処に部屋を借りたアキがわたくしの部屋の隣へと入る。コウキが使っていた部屋で休む事になった。明日からは中庭で
 彼はどんな宿に泊まってもわたくしを部屋に送るまでああやって見送ってくれていた。
 むしろ彼のままである今を惜しんでの事なのだろうか。
「ヴァンツェ」
「はい?」
「いえ……あの、ヴァンツェは……」
「私が何か?」
「……なんでもありません」
「……何を気に病んでいるかは分かりませんが、これが終わったら聞きます。
 私の事は後回しで構わないのです。急いでいませんから。
 今はコウキのことに集中してください」
「……わかりました。お休みなさいヴァンツェ」
「はい。お休みなさいませ、リージェ様」
 結局聞く事はできずに暗い部屋へと戻っていく。
 ベッドに潜り込んで深いため息をついた。

 ダメだ頭を切り替えなくては。
 私は明日の朝から訓練を受けなくてはいけない。しかも取って置きの付け焼刃をつけるためだ。自分で考えてやら無いといけないことだ。今は寝て、コウキの為に。終わったら皆でまたヴァンツェの為に旅をする。それが最善なのだ。そう言い聞かせてふぅっと深呼吸をして寝る姿勢を整えた。
 カーテンの向こうに月明かりが見える。雨戸を閉めてしまえば真っ暗にも出来ただろうけれど、ぼぅっとその月を眺める。
 一緒に強くなろうと誓った。
 同じ月を見上げて、そう言った。それを実行して強くなっていく彼に守られるばかりのわたくしは実は少し悔しいと思っていた。それでも彼がやってきた事は実は死ぬほど辛いことばかりだと知ると、わたしがやっていた事はなんだったのかと問いたくなる程簡単な事ばかりだ。
 明日から出来る事を考えて悶々としていると、いつの間にか自分は眠っていた。いつかコウキ達と巡ってきた記憶が溢れて涙が溢れて居たけれど――それに、気づく事はなかった。



 清々しい朝だった。日が昇る少し前に目が覚め、起き抜けが良くとても気分はすっきりとしている。憂いもモヤモヤも無く、純粋な気持ちで今日から頑張るのだと何かが満ちていた。起き上がって間もなくしてスゥが部屋に現れた。どうやってわたくしが起きたのを察知したのか分からないが、長年の勘というのは侮れない。
 一先ず彼女に支度を手伝ってもらい朝食の前にひと運動する事にする。

「ポニーテール! かーわーいー!」
 わたくしを見たアキの今日一番の台詞はそれである。朝の挨拶を抜いてその言葉が飛び出してきた。
「お早う御座いますっ気合いを入れたのです!」
 髪を高くして括っているのは単に気分である。
「おはようかーわーいー!」
 わたくしの周りを回って目を輝かせる彼女。同じ反応をされると対応に困った。
「だから気合をっ! 気合いを入れたのです……」
 何故かしょんぼりとした感じになってしまったが、その反応もアキを更に興奮させるだけだった。
「かわいいいいい! よし! じゃあわたしも括っちゃおっかなっ!」
 そう言って彼女も自分用のリボンを取り出して髪を括る。髪の毛が邪魔になる森などに入るときはよく括る姿を見る。アキの長い髪は元々そういった髪型を作りやすいし、その姿はとても似合っている。いつもと違う雰囲気に驚くのはきっとわたくしだけではないはずだ。
 今回二人で括って向き合うとなんだか空気が変わったような気がした。

「と言うわけでお願いしますねアキ! いえ、先生!」
 わたくしは深く一礼してからアキをみた。
「う、うん……でも先生はなんかむずかゆいかな」
 彼女は頬を掻きながら言う。
「じゃあ一先ずどの剣使うか決めようか……っていうか宝石剣だよね?」
 わたくしが持ってきた剣は二つである。宝石剣と黒鉄剣。コウキが残していった二つの剣だ。
「いえ、どちらもです」
 そう言って宝石剣と黒鉄剣を抜き放った。どちらも甲高く音を上げて、気持ちよく風を斬る。
「双剣!? 危ないよ」
「それでもやります。あなた達が剣で居てくれたおかげで、わたくしは安全にここまで来られた。
 危険を行ってでもという覚悟はあるのです」
 此方の言葉にアキがたじろぐ。
「う、うん。いいけど、剣振れる?」
 まるで初めて包丁を持った時のスゥのような反応をする。猫の手、猫の手と連呼していたのを思い出す。
「はい! さっき十回振れました!」
 アキが来るまでに少し時間があったので剣を抜いて振ってみる所まで少しやってみた。十回も振ると、手がプルプルと震える上に振り切ったあと腕ごと剣に振られてしまうようになった。

「笑顔が眩しい!
 でもファーナ、十回じゃだめ! もっと素振り頑張って!」
 やはり言われてしまった。しかし素振りばかりをして居ても数日中に数回振れる回数が増えるだけなのが目に見えている。
「何回ですか?」
「百回」
 しれっとアキ先生が言う。当然ですよね、でも百回ならなんとかなる。
「は、はいっ頑張ります!」
 そう返事をして剣を構える。そんなわたくしを見てから、あっと彼女は指を立てて言葉を続ける。
「三セットね」
「三百回!?」
 キツイ……!?
 三百回なんて振ったらもう今日はフォークも握れるかどうか怪しい。
 そんな事を考え居ているわたくしに彼女は追い討ちのように言葉を繋いだ。
「腕立て、腹筋、走りこみ。体力づくりの基本と、素振り、打ちこみ、実践練習で剣術基礎。
 グラネダでやってた騎士隊訓練だけど結構きついし身に着かせないといけない基礎だから。がんばろうね」
 彼女は至って本気の笑みである。
 出来て当然だよね、という到達者の笑みだ。確かに兵士は五百だの千だのの素振りをこなしていると聞いた。それなら自分はその半分で済んでいる。男子メニューをこなす彼女にとっては精一杯譲歩していると言っても過言ではない。
「は、はい……。はいっ! 気合いを入れます!」
 持つかどうかは別として、今日と言う日の間にそれを全て終わらせる事ができるだろうか。

「よし! 腕立て! まずは……百回とかできる?」
「無理だと思います」
「十回は?」
「やってみます!」
「じゃあ十回! 十セットね!」
 結局回数は変わらないようだ。少しうな垂れながらも、一度深呼吸をしてぺちっっと頬を叩いて気を入れてから地面に手をついた。


「はぁ、ふぅ、ひぃ……」
 色々とやっているうちに日はすっかりと昇っていた。太陽に終われるようにして坂道の往復を終え、入り口に寄りかかる。
「走るのは意外と大丈夫でしたね。お疲れ様ですリージェ様」
 スゥが来て、ふわふわのタオルをわたくしに差し出してくれる。それを息絶え絶えに受け取ってから汗を拭った。
「アキはこんなに、辛いもの、を、こなして、いたのですね……」
 本当は十分の一もこなせていないなんてわたしの口からは言えない。
 アキは本日の試合の為に会場へと赴いた。今日、コウキは現れない。明日の試合からだろうとヴァンは言っていた。シード権を得た彼に今日あそこに赴く意味は偵察以外の意味は無い。偵察ならば魔女のお手の物だ。故に見つからないだろうというのがヴァンの言う所だ。
「筋肉痛にならないようにすぐにストレッチを行っておきましょう。
 夜はお風呂に入ってマッサージが必要ですね。
 食事も吸収の良い物にしておきますね。あ、お水です。ゆっくりと飲んでください」
 甲斐甲斐しく世話をしてくれるスゥ。確かに汗だくになって喉はからからである。血の味もするし辛いものである。この程度なんでも無いような体力をつけないと、剣を長時間は振れないだろう。
「あ、有難う御座います」
 スゥの持ってきたグラスを持って少し水を飲むとなんでも無いものがとても美味しく感じられた。
 朝も自分にしては異様な量の食事を食べこんなに食事がおいしいのは初めてだと少し感動した。運動すると美味しいのは分かっていたけれどこんなに疲れたのは久しぶりだ。
 夕方にはアキも戻り、本格的に剣の修行を始めた。十分休んで十分攻撃を続けるという焼き付け刃も付け始めた。それが本当に数日で仕上がるかどうか。
 月が出て真上へと差し掛かろうと言う時に、自分の限界が訪れて前のめりに倒れた。何で倒れたのか最初理解できず、徐々に意識が薄れかけるのを感じた。それが自分の限界であると知った。
 それでその日の修行は終わりだった。スゥに連れられてお風呂へと入りそれからマッサージの途中で深い眠りについてしまって次の日の朝までぐっすりと眠っていた。
 そうそう都合よく身につかない刃にあせりを感じてはいたが――私達は一体どうなってしまうのだろう。

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