50.epilogue...

epilogue...


『はいはい……やってまいりました。まいりましたよ水ノ上君』

 全てのプログラムを終えたとき、榎本がそう言って。
『何が?』
 俺は詩姫と首を傾げる。
 チッチッチと指を動かして大きく手を開く動作を見せる。
『まったまた。恋人同士になったんだ。じゃあやってみるもんがあるだろ〜?』
 なんか、ヤな予感。
 冷や汗が背中に流れた。
『ちょっとま―――』

『それでは会場の皆さんご一緒に!!
 それキーースキーース!!

 なんだってーー!!!?

『あ……』
 ―――詩姫と、視線を合わせてしまう。
『え……?』
 目が合って―――
 カァァァァァッ―――
 詩姫が一気に真っ赤になる。
『はいはいもっともっとぉ! キーースキーース!!』

『―――えと……』
『……ッッ……ッッ!』
 言葉にならなくて、詩姫が顔を抑える。
 依然、キスコールは止まらない。
 むしろ、早くしろ感が漂ってくる。

『詩姫』
 このまま、いい雰囲気なんて望めない。
 きっと、こうするしかない。
 そう至って、強引に詩姫の顎を上げさせた。
『ふぇ!? ……ん―――』


『ひゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!』



 すると、詩姫はホント全身真っ赤になって倒れてしまった。
 まぁ抱きかかえて保健室に連れて行く羽目になる。
 それもまた俺の役目。
 だが当然だろう。手を握ってる間もずっと緊張していたのか震えてたしな。



「あははっお疲れ涼二っ」
「知ってるか? 水ノ上君って意外と強引なのね〜とかすげぇぞ」
「ああああああきこえないあああああ!」
 俺は耳をふさいで叫ぶ。
「ま、学校公認のバカップルだな」
「うっせぇ……」
 柊に力なくパンチを返す。
「うひゃひゃひゃっラブマシーン涼二と呼んでやろうぅ!」
 俺の拳に力が宿った。
 そのままチョップと目潰しを続けて顔面にぶち込んだ。
「へぶっ!? ふ、ふふふふ、今の俺には気持ちいい位だ!」
 気持ち悪い奴になった。
 俺はもうシカトを決め込むことにして窓際に寄った。
 ちなみに、ここは軽音部の部室。
 どこに居ても指をさされるので逃げてきた。
 もう、俺この学校じゃ生きていけねぇのかな……。
「ヒメは何処いったんだろうな?」
 保健室に運んで後片付けを手伝って戻ると、いなくなっていた。
 あそこも危険地帯になったんだろうな……。
 そういえば同じクラスの女の子が吸い込まれるように保健室に行っていたな……。
「つか、出番大丈夫なのか京?」
 演劇部でなんか舞台をやるはずなんだが。
「うん。もうちょっとしたら行くよ〜」
 いいのか一年がこんなに余裕で……。
「だって一年生は全員脇役だからっ。
 控え室もいっぱいだから後できなさいって。
 役は新人のコンテストみたいなのが夏にあるからそっちはもうちょっと期待できるかもねって」
 なるほどねぇ……。
 まぁヒロイン役蹴ったしな。規律に従えばそうなんだろう。
「……涼二」
 柊がニヤニヤと話しかけてくる。
「なに?」
「お前、知ってるだろ? ヒメっちの場所よ〜?」
「しらんっ実はその教卓の下とかじゃねぇの?」
 もうヤケになって適当に教卓を指差す。

 ゴンッと音が響く。

『いたーーーーー!!』

 その場にいた4人全員の声が重なる。
 ちなみに、詩姫の『いたーー』だけ痛いの意味だぞ?
「な、なんでっ」
 詩姫が涙目になりながら教卓の下から出てくる。
「俺に聞くなっ」
「なんでそんなところにいるのヒメちゃん……出てくればよかったのに」
「だ、だってっなんか出るタイミングなくしちゃってっ」
 頭をさすりながらしどろもどろ言い訳をする詩姫。
 柊がアゴに手を当ててフムフムなんて納得している。
「コレが愛のパワーか。熱いなお前等」
 シン……と場が静まる。
 詩姫は真っ赤になってパクパクと何かを言おうとしているが言葉が無いらしい。
 京と柊は目を合わせると頷いて、高速でバックする。
 無駄にガチャガチャとドアを開けると『ごゆっくり〜』と同時に言って消えていった。


 ……え?

 残された俺と詩姫。
 さっき壮絶に告白をし合って、恋人となりました。
 道行く人全員にオメデトウと冷やかされてたまったもんじゃない。
 なんとなく、気恥ずかしい雰囲気。
 実際、恋愛ってはじめてだし……俺。
「……ま、こっち来いって」
「うん……」
 なんだかカクカクとした動きで隣に座る。
「っっええぃっ意識するなっ俺まで恥ずかしいだろ〜っ」
「だだだだだって!」
 だ が多いですよ詩姫さん。
「……とりあえず、いつも通りでいきません?」
 俺なりの提案。
 あんまりベタベタするのも……まぁいつかは……。
「う、うんっ……」
 なんだかガチガチの詩姫。からかいたい衝動に駆られる。
「ベタベタする……?」
 そういってわざと近づく。
「だっえつっふぁえ!?」
 顔を真っ赤にして日本語じゃない言葉を発しながら後ずさる。
 当然後ろは無いわけで。
 ゴンッと響いた。
「あだっ……つぅ〜〜〜〜……」
 涙目で頭をさすっている。
「ぷっははははははっ大丈夫?」
「―――も〜〜っ知らないッ」
 膨れて、そっぽを向く。
 俺はクツクツと笑いながら謝る。
「悪い悪いっ」
「……涼二」
「ん? ―――ん!?」
 フワッと詩姫の唇が触れる。
 ゆっくりと離れると、柔らかく笑った。
 ―――多分、今、詩姫より顔が赤い。
「―――大好きだよ」
 詩姫がまたその言葉を口にする。
「……そんな何べんも言えない」
 恥ずかしい。
「あたしはいえるよ?」
「―――……俺も好きだよ」
 だから、目を合わせない。
「えへへ……あはっ」
 彼女はただ嬉しそうに笑って―――俺の太もも上に寝転ぶ。





「うぃーーっす!! いるかいお二人さ……」
「生きてるかー」
 榎本が勢い良く突入してくる。
 後に続いてナナがいるみたいだ。
「お邪魔しました〜〜〜っ」
 入ってこようとするナナを押し出して、瞬時に出て行った。
「何すんだよっ」
「バカッ今はストロベリーだ!!」
「何だってぇ!? 事後か!? 事後なのか!!?」
「ばっかあの空気はもう2,3発―――」
 良く分からないトークが遠ざかっていく。
 ……よく起きないな詩姫。
 太ももの上に頭を乗せ、幸せそうに寝る詩姫を見下ろす。
 保健室で寝れないから仕方なくここで寝るそうだ。
 動けないので俺も寝ることにする。

 ―――……きっと打ち上げはカラオケだろうし。


VOX Finished.
Thank you...


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