10.相性

*Asumi...
―――
……楽しそうに笑うあの二人。
それは周りをいつも巻き込むけど、嫌じゃない。
やることなすこと破格的て、いつ見ても飽きないふたり。
演劇部が立ち上がったのも実はあの二人のおかげだし、
私を誘ってくれたことにも素直に感謝もしている。

///PROTOTYPE///

理想を追って、何が悪い。
私は今の私になるまで様々な努力をしてきた。
容姿を磨いて、勉強もやって運動だって毎日欠かさない。
演技の勉強もしているし、自主的な稽古だってしている。
―――私は真夜のような天才じゃない。
もともと人を惹きつけるような目だった才能は持ってない。
でも、真夜は違う。
真夜の演技は、誰よりも、人の目を惹きつける。
その声は―――全て感情に変わる。
それは私の勘違いじゃない。
それは今の演劇部を見れば分かるように、皆が彼女に憧れて入ってきた。
当然だ。
 シナリオを知っている私ですら、彼女の演技に涙した―――。

そして、そんな彼女を支え続けた、織部の存在。
真夜は気づくと織部を頼っていた。
頼る、と言うのは語弊があるかもしれない。
癒されに行ってたって感じ。
……ストレス発散とも言うかもしれないけど。
文化祭前は織部は織部で軽音をやっていた。
ただの部活動のはずだったが、手が抜けないのか織部は練習し続けた。
―――あいつは、独りでずっとギターの音を響かせていた。
下校時間は私達と同じ。もしくはそれ以上。
クラブ活動の限界ギリギリまで学校にいて、ずっと練習を繰り返す。
一度だけ、真夜が練習に来なかった日があった。
それからだ。
急に真夜が毎日のように織部の所へと行き始めた。

ここまで自覚がないのは、私の誤算だけど。

真夜の家を出て私も帰途についた。
さっさと歩いて帰っているが、優雅さは忘れてはならない。
それなりに視線を集めているのは知っているが、大して気にもならない。
―――ちなみに、私は一般家庭の一般人。
実生活のお嬢様度を言えば美優が一番だろう。
友達になってすぐマックに行った事ないなんていう箱入りっぷりに真夜と私は驚いた。
そして、そのままダッシュでマックとカラオケに連行した。
……個人的に凄く面白かった。
で、それはいいとして。
私は今颯爽と歩いていた足を止めて、壁に張り付いている。
なんでって? 愚問ね。

「あーわりっお待たせミュー」
「ううん。丁度来た所だから大丈夫だよ」
織部とミューに遭遇してしまったからだ。
当然、私は気まずくて出て行けない。
「そか。じゃぁとりあえず約束のチケットを……お、あった。ほい」
ここからじゃ二人の姿は見えない。
と言うか、角を挟んですぐ横なので覗いた瞬間にばれる。
「あ、ありがとうっ」
チケットを受け取ったのだろうか、なんとなく嬉しそうなミューは想像できる。
おのれ…餌付けか織部。……やるわねっ!
「真夜、どうだった?」
お、あいつも一応気にしてんのね?
イイ傾向―――
「うん。色々奪われてた」
「うぇ?」
……奪ったけど。
「あ、一応メッセージをもらってるよ。ありがとう」
「お、そうか」
「ついでに死ねって」
「あのヤロウ!」
ま、真夜……情勢はどんどん傾いていくわ……。
いらないメッセージ預けなくても……。
「素直じゃないもんね真夜」
困った笑顔で私にそう言うミュー。
「いやそれは心の叫びだ」
呆れたように織部はそう言い足した。
「ごもっとも……ってああぁあんた達いつからっ」
不覚っ私としたことがっ
「うん。最初から?」
満面の笑顔で答えるミュー。
隠れてた意味無かったーーーー!


*Shiroyuki...

隠れていたのかどうかは分からないが、角の先に突っ立っていた山菜を捕まえて帰途に着く。
……ちなみに、山菜アスミと俺は微妙に仲が悪い。
何かしら因縁つけて睨んでくる山菜が俺も苦手だ。
「何で隠れてたんだ?」
「……別に」
思いっきり目を逸らされてしまった。
「そうかよ……ミュー、後をつけられてると思ったら構わず叫べ」
「私はそんなことしないわよっ……たぶん!」
「確信はないのかよ!」
「無いわよ!」
「威張るなよ!」
「ま、まぁ二人とも、落ち着いてっ一言断ってくれたらつけててもいいから」
『意味無いじゃん!』
ビシッと二人で見事なツッコミが決まる。
つ、疲れるぞこいつ等……!
普段このポジションは真夜が居るはずなんだが……。
あいつも苦労してるんだな……。
俺達は止まっていた足を再び動かし始める。
俺達を不思議そうに見ていたミューはポンと手をたたいて
「実は二人って仲悪い?」
「今気づいたの!?」
大抵こいつ等は3人で一緒に居るので、
いつも山菜と俺の会話を聞いていれば一目瞭然のはずなんだが。
「全然気づかなかったよ〜」
なんとなく鈍臭いなぁと思ってはいたが……。
「悪いが全く隠してなかったけどな」
「いつから付き合ってたの?」
ミューの満面の笑みはポンッと頭に花が咲きそうだ。
『なんでっ!?』
またしても不意を突かれた俺達は同時にツッコむ。
「え? 夫婦漫才は恋人同士にしか出来ない伝説の……」
「いや、そんな伝説はない!」
「ミューの頭の中はどこまで天然なのかしら……」
ため息を吐きながら、山菜が言う。
「そんなぁ……さすがに人工だよ〜」
作為的な可能性がでてきた。

何で山菜が入るだけで帰り道がこんなに煩くなるんだ?
いや、いいけどさ……。

「ねぇ……さっき言ってたチケットって?」
ふと思い立ったのか、山菜はそんなことを聞いてきた。
て、いうかやっぱ聞いてたのな。
「あぁ。このぐらいの長方形の紙の事だ」
俺は両手で長方形を作ってみせる。
「アンタ私をバカにしてんの?」
「してる」
当然だ。
「むかっ!?」
「お、押さえてアスミっ」
怒りがピークなのか俺に向かって来ようとする山菜。
「ミュー離してっあいつは一発蹴るッ」
もがく山菜を押さえるミュー。
さすが―――
「す、スカートなんだからやめようよ!」
問題はそっちか。
「そんなの見られてナンボでしょー!」
「そこは恥ずかしがれよ! 女として!」
色々間違った方向で度胸があるなっ。
「五月蝿いっ私が恥ずかしいと思うのは舞台の上だけよっ」
「役者じゃないのかよお前はっ」
「ほっといてっ思うだけよ!」
ふぅん。
俺は首を鳴らして先を歩く。
「無視しないでよっ!!」
叫びながら追いかけてきた。
相手はして欲しいのか。
「だって疲れるんだよ…そのノリは真夜だけで十分なんだよ……」
「ふ、あまいわ。私と真夜は生き別れた双子―――」
「え!?」
驚いて振り向くミュー。
「ってのも検討するわ……!」
「これから決まるの!?」
勢いは似ているが中身が全く別物だな……。
いや、双子の方向性としてはOKなのか?
「なぁ……」
とりあえず暴走気味の山菜に話しかける。
「何よっ」
態度は1年前から変わることなく一定。
手を出すと噛み付かれそうだ。

「お前の帰り道、とっくに過ぎてんぞ」
「ッ! 覚えてなさいッこの悪党!」
その捨て台詞は雑魚のものだぞ山菜。
そんな心の声が聞こえるわけも無く、奴は肩を張って歩き去っていった。

「―――疲れた……」
俺の正直な感想。
山菜……俺にとってはババ抜きのジョーカーでしかありえない。
「あはは……お疲れっアスミ織部君にはきついんだね……」
あれはスタンダードじゃないらしい。
はた迷惑な話だ。
「あ、やっぱり、そうでもないかも」
瞬時に訂正が入った。
他の奴にもこんなんなのか……そいつも苦労し
「真夜にもこんな感じ」
俺は肩を落として歩き出した。

俺は夕日を背に浴びながら、玄関の前に立つ。
「ただいま……」
「お、おかえり……? どうしたのやたら元気ないよお兄ちゃん」
「あぁ……全部魔性の女に吸い取られてな……」
ある意味な。
「彼女さん?」
「俺を殺す気かっ」
俺は家に上がると自分の部屋へと向う。
その後ろをポテポテついてくる詩姫。
「それは失礼だよお兄ちゃんっ女の人には優しくしたげないとっ」
「へーへー」
優しくねぇ……してるつもりなんだが……。
正直女にヘコヘコ頭を下げるような趣味は無い。
俺は部屋のドアを開けて部屋に入る。
続いて詩姫も部屋に入ってくる。

―――……
『あ!』
俺の土下座が炸裂した。

翌日、目覚ましを没収された俺は学校に遅刻。
反省文をたんまり書かされた……。

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